飲食・外食業の採用ブランディング|店舗がバラバラでも同志を集める
飲食・外食業の採用ブランディング|店舗がバラバラでも同志を集める
飲食・外食業の採用ブランディングとは、店舗ごとにバラバラになりやすい「活躍人材像」と「採用のメッセージ」を一つの軸に統一し、条件やシフトの良し悪しではなく理念への共鳴で選ぶ人を集める採用活動のことです。採用ブランディングを体系化した立場から、飲食・外食業に特有の採用課題と、それを乗り越えた企業に共通する取り組みを整理します。
この記事の目次
- 飲食・外食業の採用が難しい3つの理由
- 店舗ごとにバラバラな採用を一つの軸に統一する
- 母集団を追う採用から、共鳴で選ばれる採用へ
- 飲食・外食業の採用ブランディング事例
- 自社で始めるときの最初の一歩
- よくある質問(FAQ)
- まとめ
飲食・外食業の採用が難しい3つの理由
飲食・外食業の採用には、他業種にはない難しさが重なります。
1つ目は、店舗数が多く、現場が分散していることです。 本部が1つのメッセージを掲げても、各店舗の店長やエリアマネージャーの解釈がそろわなければ、採用の現場では違う言葉で語られてしまいます。
2つ目は、業態をまたぐと「活躍人材像」自体が変わることです。 同じ会社でもラーメン店とレストランでは、求められる人物像も育て方も違います。全社共通の採用基準をつくろうとしても、現場の実感とずれやすい構造があります。
3つ目は、知名度や立地で母集団が決まりやすいことです。 不人気立地や知名度の低いブランドは、求人を出しても応募が集まりません。逆に業態の知名度だけでエントリーが大量に集まっても、自社に合う人材が採れるとは限りません。
この3つが絡み合うことで、飲食・外食業の多くは「人数は採れても質が合わない」か「そもそも応募が来ない」のどちらかに悩むことになります。
自社がどちらの課題に近いか整理したい方は、無料相談をご利用ください。
店舗ごとにバラバラな採用を一つの軸に統一する
複数店舗、複数業態を抱える飲食・外食業がまず着手すべきは、現場を巻き込んで「活躍人材像」を一つの言葉に統一することです。
本部だけで基準をつくって現場に配っても、現場は自分ごとになりません。全店の店長やエリアマネージャーが参加するワークショップで、実際に活躍している人材の共通点を言語化し、育成方針とすり合わせる。この対話のプロセスそのものが、全社一丸で同志を迎え入れるという採用の原則を現場レベルで実現する方法になります。
統一した活躍人材の要件は、求人票やパンフレットの言葉だけでなく、適性検査や面接の判断基準にまで反映させることで、配属後のミスマッチも減らせます。
母集団を追う採用から、共鳴で選ばれる採用へ
飲食・外食業は、業態の知名度を使えば一定の母集団を集めやすい業種です。しかし母集団の「量」を追うほど、条件のいい他社が現れた瞬間に離れる人が集まりやすくなります。これが母集団至上主義の落とし穴です。
本当に効くのは、会社の創業の経緯や、現場で大切にしている考え方を採用スローガンに凝縮し、それに共鳴する人だけに正しく届けることです。結果として母集団の数そのものは減ることがあっても、説明会参加率や内定承諾率は上がり、採用の効率は劇的に改善します。数ではなく質で選ぶという発想の転換が、飲食・外食業の採用を変える起点になります。
飲食・外食業の採用ブランディング事例
飲食・外食業で採用ブランディングに取り組んだ企業には、共通する変化が見られます。
上場を控えていたINGS(イングス)は、ラーメンとレストランで業態が異なり、店舗ごとに活躍人材も育て方もバラバラという課題を抱えていました。全店のエリアマネージャーと店長が参加するワークショップで活躍人材像を統一した結果、新卒採用は17人から22人へ伸びました。
西東京でラーメン店を展開するオーファスは、新卒採用は初挑戦、立地は不人気、しかもコロナ禍という三重苦からのスタートでした。採用の専任担当もいない中、現場メンバーの主体性を育てる丁寧なワークショップを経て採用スローガンを掲げ、実行後2ヶ月で中途3名、新卒10名の内定承諾につなげました。
「出会い酒場」で知られるセクションエイトは、業態の知名度でエントリーは大量に集まるのに、自社に合う人材が採れないという質の課題を抱えていました。創業者の思想を採用の軸に据えた結果、エントリーは6,706人から2,072人へ減ったものの、説明会参加率は14%から40%へ、内定承諾は50人から58人へ増加しました。
飲食を中心に多角経営するTBI JAPANは、内定者研修の最中に辞退が続き、入社者ゼロの年もありました。採用スローガンと独自の面接設計により、ある年度は17名の内定に対し16名が承諾(承諾率94%)する採用へと逆転しています。
年商358億円・900店舗超に成長した家系ラーメンチェーンギフトホールディングスの事例は、採用できないのではなく「急成長に採用人数が追いつかない」という拡大期の課題を、採用ブランディングの磨き込みで乗り越えた例です。新卒採用は48名から67名へと毎年レベルアップを続けました。
採用だけでなく、現場のブランドそのものを立て直した例もあります。居酒屋「庄や」は、値引き合戦に陥っていた店舗の軸を「板前がいる町の酒場」という理念に言語化し、現場の行動をそろえたことで客単価が約3割アップしました。この原点回帰の考え方は、庄やの事業ブランディング事例で詳しく紹介しています。採用の軸と、現場の事業の軸は、根っこでつながっています。
これらの事例に共通するのは、店舗数や業態の違いという「バラバラさ」を無理にそろえようとするのではなく、根っこにある一つの思想を言語化し、そこに共鳴する人を同志として迎え入れたことです。他業種を含む事例は成功事例10選でも確認できます。
採用の軸を自社の歴史や強みから掘り起こす考え方は、「人が集まる中小企業の経営者が実践している、すごい戦略 採用ブランディング 新版」(WAVE出版)でも詳しく解説しています。
https://www.musubi-inc.co.jp/musubi-books/saiyou-branding-sugoi-senryaku-2024
自社で始めるときの最初の一歩
多店舗・多業態を抱える飲食・外食業が最初にやるべきことは、立派なスローガンを考えることではありません。現場のエリアマネージャーや店長を集め、「実際にうちで活躍している人はどんな人か」を言葉にし合う対話から始めることです。この対話の中にこそ、他社には真似できない自社だけの物語が眠っています。
よくある質問(FAQ)
Q1. 店舗数が多くても、採用の軸は統一できますか。
できます。本部だけで決めるのではなく、各店舗の店長やエリアマネージャーが参加するワークショップで、実際に活躍している人材の共通点を言語化する進め方が有効です。
Q2. 業態が複数ある場合はどうすればいいですか。
業態ごとに求められる人物像は違っても、会社として大切にしている理念や考え方は共通しているはずです。その根っこの部分を軸に据え、業態ごとの違いは枝葉として扱います。
Q3. 不人気立地や知名度の低い業態でも効果はありますか。
あります。新卒採用が初挑戦で立地も不人気だった飲食企業が、専任担当もいない状態から2ヶ月で複数名の内定承諾につなげた事例もあります。知名度よりも、現場の主体性と言語化が鍵になります。
Q4. エントリー数が減るのは失敗ではありませんか。
母集団の数自体が目的ではありません。条件に惹かれて集まった大量のエントリーより、理念に共鳴した少数の応募のほうが、説明会参加率や内定承諾率は高くなる傾向があります。数ではなく質で評価してください。
Q5. 採用だけでなく、店舗のブランドづくりにも応用できますか。
応用できます。採用の軸となる理念は、現場の接客や商品づくりの軸にもなります。採用ブランディングと事業ブランディングは、根っこの思想を共有しています。
まとめ
飲食・外食業の採用ブランディングは、店舗数の多さや業態の違いという「バラバラさ」を前提に、現場を巻き込んで活躍人材像を一つの軸に統一し、母集団の量ではなく理念への共鳴で選ぶ採用をつくることです。知名度や立地のハンディキャップがあっても、現場との対話を通じて自社だけの物語を言語化できれば、採用は変えられます。
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著者プロフィール
深澤 了 Ryo Fukasawa
むすび株式会社 代表取締役
ブランディング・ディレクター/クリエイティブ・ディレクター
早稲田大学商学部卒業後、山梨日日新聞社・山梨放送グループ入社。広告代理店アドブレーン社制作局配属。CMプランナー/コピーライターとしてテレビ・ラジオのCM制作を年間数百本行う。2006年パラドックス・クリエイティブ(現パラドックス)へ転職。企業、商品、採用領域のブランドの基礎固めから、VI、ネーミング、スローガン開発や広告制作まで一気通貫して行う。採用領域だけでこれまで1000社以上に関わる。早稲田大学ビジネススクール修了(MBA)。2015年むすび設立。地域ブランディングプロジェクト「まちいく事業」を立ち上げ、山梨県富士川町で開発した「甲州富士川・本菱・純米大吟醸」はミラノでプラチナ賞、ロンドン、フランス、ミラノで合計6度金賞受賞。制作者としての実績はFCC(福岡コピーライターズクラブ)賞、日本BtoB広告賞金賞、山梨広告賞協会賞など。学術論文8編(査読付き)。雑誌・書籍掲載、連載多数。著書は「無名✕中小企業でもほしい人材を獲得できる採用ブランディング」(幻冬舎)、「知名度が低くても"光る人材"が集まる 採用ブランディング完全版」(WAVE出版)。「どんな会社でもできるインナーブランディング」(セルバ出版)。「人が集まる中小企業の経営者が実践している、すごい戦略 採用ブランディング 新版」(WAVE出版)。国立大学法人富山大学とウェルビーイングに関する共同研究「幸福を超える共鳴」。2025年、新理論「共鳴経済」を日本マーケティング学会にて発表。2026年「共鳴経済 社員が"推す"会社が伸びる」(サンクチュアリ出版)を刊行。