採用戦略の立て方|5つの手順とフレームワーク、中小企業の成功事例

採用戦略の立て方|5つの手順とフレームワーク、中小企業の成功事例

採用戦略とは、個々の採用施策を並べることではなく、「どんな人材を、なぜ、どうやって迎え入れるか」を経営戦略から一貫して設計する全体方針のことです。母集団を増やす発想から、共鳴する同志を選ぶ発想へ。この転換ができた会社だけが、採用を運任せから再現性のある経営活動に変えられます。

この記事の目次

  1. 採用戦略とは何か(採用計画・採用戦術との違い)
  2. 採用戦略と採用ブランディングの違い(結論:意味は同じ)
  3. なぜ今、中小企業に採用戦略が必要なのか
  4. 採用戦略の立て方5つの手順
  5. 実務で使う採用戦略フレームワーク3選
  6. 採用戦略でよくある3つの失敗
  7. 採用戦略のKPIと効果測定
  8. 中小企業の採用戦略 成功事例
  9. よくある質問(FAQ)
  10. まとめ|採用戦略は経営の最も効率的な入口

自社の採用戦略を一から設計したい方は、無料相談をご利用ください。

採用戦略とは何か(採用計画・採用戦術との違い)

採用戦略とは、求める人材像と自社の強みを結び、すべての採用活動を一つの思想で貫く設計図です。採用計画や採用戦術とは階層が違います。

3つの言葉はしばしば混同されますが、役割は明確に分かれます。採用戦略は「なぜ、どんな人材を迎えるか」という方針です。採用計画は「いつ、何人、どの部署に」という数量とスケジュールです。採用戦術は「求人広告、採用サイト、面接」といった個々の手段です。

多くの会社が戦術から始めます。求人媒体に出稿し、採用サイトを作り、説明会を開く。しかし方針という背骨がないまま手段を並べると、候補者が受け取るメッセージが接点ごとにバラバラになり、記憶に残りません。私の哲学では、一貫性こそがブランドの信頼を生みます。採用戦略とは、その一貫性を採用のすべての場面に通すための設計図です。

採用戦略と採用ブランディングの違い(結論:意味は同じ)

採用戦略と採用ブランディングは、言葉は違っても、目指すものは同じです。違いを探すより、両者をどう重ねるかを考えるほうが、はるかに実りがあります。

私の結論を先に言います。採用戦略と採用ブランディングの意味は、本質的に同じです。どちらも「自社に本当に必要な人材を、再現性を持って迎え入れるための設計」を指しています。両者を分けて論じ、どちらが上位かを議論するのは、あまり生産的ではありません。

では、なぜ私が採用戦略をあえて「採用ブランディング」という言葉で語るのか。理由は1つです。採用戦略を、採用ブランディングの方法で考えると、圧倒的に効率がよく、成功確率が上がるからです。

この記事で紹介している手順を思い出してください。強みを20から30個も量で洗い出し、そこから絞り込む。候補者のインサイトと交差するビクトリーゾーンを発見する。すべての接点を1行のコンセプトで貫く。これらはすべて、ブランディングの考え方そのものです。この方法で採用戦略を組み立てると、出てくるアウトプットが研ぎ澄まされます。ありきたりな「うちは風通しがいい」「アットホーム」といった言葉では終わらず、その会社にしか言えない独自の言葉が立ち上がってきます。

独自性が増せば、それはそのまま差別化になります。採用市場で他社と同じことを言っている限り、候補者の記憶には残りません。採用ブランディングの方法で戦略を研ぐと、独自性が高まり、結果として差別化が生まれ、本当に共鳴する同志だけが深く反応する。だから成功確率が上がるのです。採用戦略という設計図を、最も精度高く描くための道具が採用ブランディングだと考えてください。

なぜ今、中小企業に採用戦略が必要なのか

採用戦略が中小企業にこそ必要な理由は、限られた予算と知名度で大手と同じ土俵に立たないためです。

労働人口が縮小し、1人を採用するコストは上がり続けています。ここで多くの企業がやりがちなのが、応募を1件でも多く集める「母集団至上主義」です。広く薄く露出を増やし、母集団の大きさを競う。しかしこの戦い方は、知名度と予算がある大手が構造的に有利です。中小企業が同じルールで戦えば、消耗するだけです。

必要なのは、自社の強みが絶対的な価値になる独自の土俵を自ら創ることです。私はこれをビクトリーゾーンと呼んでいます。自社の強みと、求める人材のインサイトが交差する領域。そこに戦いを絞り込めば、少数でも深く共鳴する同志にメッセージが届きます。採用戦略とは、この絞り込みを言語化する作業にほかなりません。

「うちには語れる強みがない」と感じる経営者ほど、戦略設計の価値が大きい。強みは作るものではなく、発見するものです。無料相談で一緒に掘り起こします。

採用戦略の立て方5つの手順

私が1000社以上の支援現場で体系化した、採用戦略設計の標準手順です。この順番を守ることが重要です。

手順1|経営戦略と人材要件を紐付ける。 採用は経営の下位機能ではありません。3年後、5年後にどんな会社になりたいか。その未来を実現するために、どんな役割の人材が何人必要か。経営戦略から逆算して人材要件を定義します。ここが曖昧なまま採用を始めると、採れた人と会社の向かう先がずれます。

手順2|現状を3視点で分析する。 自社(Company)、競合(Competitor)、候補者(Candidate)の3つの視点で現状を把握します。特に自社の強みは、最初から3つに絞ろうとせず、20から30個を量で書き出してから選びます。量を出さずに質は選べません。

手順3|ターゲット人材像を価値観で設計する。 学歴やスキルではなく、価値観と行動特性で人物像を定義します。「自社の理念という根っこに共鳴し、かつ現場で力を発揮できる」人物を、具体的な言葉にします。スキルは後から身につきますが、価値観は変わりません。

手順4|コンセプトを1行に落とす。 自社の強みと候補者のインサイトが交差するビクトリーゾーンを、採用活動全体を貫く1行のコンセプトに言語化します。この1行が、求人票から面接官の言葉まで、すべての接点の判断基準になります。

手順5|接点を設計し、KPIを決める。 候補者が自社を知り、心が動き、選考に進み、入社し、やがて人に薦めるまで。その心理変容の各段階で、どの接点が何を担うかを設計します。そして測る指標を、応募数から「理念・仕事内容への魅力度」へ切り替えます。

戦略設計と戦術実装のより細かい手順は、採用ブランディング戦略の立て方で7ステップに分解して解説しています。

実務で使う採用戦略フレームワーク3選

採用戦略を机上の空論にしないために、現場で実際に使っているフレームワークを3つ紹介します。

1. 3C分析(自社・競合・候補者)。 候補者視点で「他社ではなく、なぜうちを選ぶのか」を言語化します。競合は同業他社だけではありません。候補者があなたの会社と天秤にかけている、大手も、異業種も、フリーランスという選択肢も、すべて競合です。

2. SWOTを採用に応用する。 自社の強み(S)弱み(W)、採用市場の機会(O)脅威(T)を一枚に整理します。単なる箇条書きで終わらせず、強み(S)と機会(O)を掛け合わせたときに立ち上がる「戦うべき土俵」まで具体化するのがコツです。

3. 採用ペルソナとジャーニーマップ。 迎えたい人物を1人の実在人物のように描き、その人が自社を認知してから入社1年後までに通る全接点を時系列で並べます。各接点で候補者が何を感じるかを可視化すると、どこに予算を投じるべきかが一目でわかります。

強みを3つに絞り込む作業は、ほとんどの経営者が最初につまずくところです。「人が集まる中小企業の経営者が実践している、すごい戦略 採用ブランディング 新版」(WAVE出版)でも詳しく解説していますが、絞り込めない理由は情報が足りないからではありません。何を捨てるかの基準を持っていないからです。
https://www.musubi-inc.co.jp/musubi-books/saiyou-branding-sugoi-senryaku-2024

採用戦略でよくある3つの失敗

戦略を立てても、実行の途中でつまずく原因は、多くの場合この3つに集約されます。

第1は、経営者のコミットメント低下です。立ち上げ時は熱心だった経営者が、半年後には別の優先事項に意識が移り、採用が人事任せに戻ります。採用は経営の最優先事項であり、社長が自らの言葉で理念を語り続ける旅です。

第2は、短期成果への焦りです。応募数が一時的に減ると動揺し、絞り込んだコンセプトを捨てて広く薄い訴求に逆戻りしてしまう。ここで踏みとどまれるかが、母集団至上主義から抜け出せるかの分岐点です。

第3は、社内の合意形成不足です。経営者と人事が合意した内容が現場に浸透しておらず、面接で候補者が触れる言葉が人によってバラバラになる。戦略段階で「誰が、いつ、どの場で、何を語り続けるか」を明文化しておけば防げます。

採用戦略の失敗パターンとその回避策は、採用ブランディングの失敗事例7選でさらに詳しく扱っています。

採用戦略のKPIと効果測定

採用戦略のKPIは、量の指標だけを追わず、4階層で設計します。

認知KPI|指名検索数、採用サイト流入数、SNS露出量

応募KPI|応募数(量)と、理念・仕事内容への魅力度(質)

選考KPI|選考中の離脱率、内定承諾率

定着KPI|1年後定着率、3年後定着率、エンゲージメントスコア

応募数だけを見ていると、いつのまにか母集団至上主義に逆戻りします。四半期ごとに「質」の指標を定点観測し、採用の中身が変わっているかを経営会議で可視化してください。承諾率と定着率は、この質の指標に遅れて動く結果指標です。

中小企業の採用戦略 成功事例

採用戦略の効果は、規模の小さい会社ほど劇的に表れます。私たちが実際に伴走した2社の事例を紹介します。

田村製作所(新潟の鉄骨製造業)。 そもそもどう採用していいのかが分からず、求人媒体に出しても誰も応募してこない状態でした。知名度がなく、自社が何をしている会社なのかが一目で伝わらないことが根っこの課題です。そこで採用スローガンを「鉄骨をつくろう、鉄骨になろう。」に定めました。前半で事業内容を一目でわかるようにし、後半に「将来の田村製作所を背負って立つ人間になってほしい」という願いを込めた言葉です。結果、採用ゼロの状態から半年で15名を採用しました。しかも使ったチャネルはハローワークとポリテクセンターのみ。求人媒体に大金を投じなくても、戦略を研げば人は集まるという証明です。

株式会社ギフトホールディングス(飲食)。 採用スローガンは「世界中の舌を虜にする。」。このスローガンを掲げるだけでなく、採用フローの中でも一貫して体現しました。結果、新卒採用は3年で48名(24卒)、51名(25卒)、67名(26卒)と伸び続けています。ただ人数が増えただけではありません。理念への共感度が高い学生の採用に成功している点が本質です。数と質を両立させた事例です。

この2社に共通するのは、母集団の大きさで勝負しなかったことです。自社にしか言えない1行のコンセプトを研ぎ澄まし、それをすべての接点で凡事徹底した。派手な奇策ではなく、当たり前の設計をやり切った会社が勝っています。業種別のさらに多くの変化は採用ブランディング成功事例10選にまとめています。

自社に合う戦略の型を知りたい方は、無料相談で事例をもとにご説明します。

よくある質問(FAQ)

Q1. 採用戦略と採用計画はどう違いますか。
採用戦略は「なぜ、どんな人材を迎えるか」という方針、採用計画は「いつ、何人、どこに」という数量とスケジュールです。戦略が上位概念で、計画はその実行の一部です。戦略なき計画は、数合わせに終わります。

Q2. 採用戦略の設計にはどれくらい期間がかかりますか。
3ヶ月が標準です。経営ヒアリング、社員インタビュー、競合分析、コンセプト開発、社内合意形成まで含めての期間です。ここを短縮すると、1年後に作り直しになります。

Q3. 予算の少ない中小企業でも採用戦略は立てられますか。
むしろ中小企業にこそ必要です。予算が限られているからこそ、投下先を1点に絞る戦略が効きます。強みを発見して独自の土俵で戦えば、知名度や予算の差は覆せます。

Q4. 社内に戦略設計の経験者がいません。外部に頼むべきですか。
外部からの問い立てがない限り、自社を客観視するのは困難です。伴走型の専門会社を入れると、コンセプト開発の質が大きく変わります。社内と外部の役割分担を明確にすることが成功の条件です。

Q5. 採用戦略のKPIはいつから測り始めますか。
戦略実行の開始日からです。過去と比較できるよう、着手前の現状値(ベースライン)も必ず記録してください。数字の変化を語れることが、経営会議で採用を守る武器になります。

Q6. 採用戦略と採用ブランディングは何が違いますか。
本質的な意味は同じです。どちらも自社に必要な人材を再現性を持って迎えるための設計を指します。ただし採用戦略を採用ブランディングの方法で組み立てると、アウトプットが研ぎ澄まされて独自性が増し、結果的に差別化と高い成功確率につながります。採用戦略という設計図を最も精度高く描く道具が採用ブランディングだと捉えてください。

まとめ|採用戦略は経営の最も効率的な入口

採用戦略とは、施策の寄せ集めではなく、経営戦略から一貫して人材の迎え方を設計する背骨です。経営と紐付け、現状を分析し、価値観でターゲットを描き、1行のコンセプトに絞り、接点とKPIを設計する。この5手順を凡事徹底でやり切ることで、採用は運任せから再現性のある経営活動に変わります。

理念に共鳴した同志が集えば、組織文化は強くなり、商品やサービスの質が上がり、会社の評判が高まって、さらに良い仲間が集まる。採用戦略は、この好循環を生む経営の最も効率的な入口です。

自社の採用戦略を一から設計したい方、既存の採用を見直したい方は、無料相談ください。書籍著者の深澤了をはじめとする専門チームが、御社の5手順を一緒に組み立てます。

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著者プロフィール

深澤 了 Ryo Fukasawa
むすび株式会社 代表取締役
ブランディング・ディレクター/クリエイティブ・ディレクター
早稲田大学商学部卒業後、山梨日日新聞社・山梨放送グループ入社。広告代理店アドブレーン社制作局配属。CMプランナー/コピーライターとしてテレビ・ラジオのCM制作を年間数百本行う。2006年パラドックス・クリエイティブ(現パラドックス)へ転職。企業、商品、採用領域のブランドの基礎固めから、VI、ネーミング、スローガン開発や広告制作まで一気通貫して行う。採用領域だけでこれまで1000社以上に関わる。早稲田大学ビジネススクール修了(MBA)。同年むすび設立。地域ブランディングプロジェクト「まちいく事業」を立ち上げ、山梨県富士川町で開発した「甲州富士川・本菱・純米大吟醸」はロンドン、フランス、ミラノで6度金賞受賞。制作者としての実績はFCC(福岡コピーライターズクラブ)賞、日本BtoB広告賞金賞、山梨広告賞協会賞など。学術論文7編(査読付き)。雑誌・書籍掲載、連載多数。著書は「無名✕中小企業でもほしい人材を獲得できる採用ブランディング」(幻冬舎)、「知名度が低くても"光る人材"が集まる 採用ブランディング完全版」(WAVE出版)。「どんな会社でもできるインナーブランディング」(セルバ出版)。「人が集まる中小企業の経営者が実践している、すごい戦略 採用ブランディング 新版」(WAVE出版)。国立大学法人富山大学とウェルビーイングに関する共同研究「幸福を超える共鳴」。2025年、新理論「共鳴経済」を日本マーケティング学会にて発表。2026年「共鳴経済 社員が"推す"会社が伸びる」(サンクチュアリ出版)を刊行。