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2025.07.11

想いこそがブランドの核になる|ブランディングは価値ではなく共感を生む力

想いこそがブランドの核になる|ブランディングは価値ではなく共感を生む力

「USPがない」
「強みが曖昧」
「差別化できない」

こうした言葉を耳にするたびに、企業は自社のブランディングに課題を感じています。しかし、実際には“想い”がきちんと表現されていないだけで、既にブランドの核は存在しているケースも多いのです。

想いとは、理念・価値観・志といった抽象的な言葉で語られるものであり、企業ごとに固有のものです。

この記事では、想いがなぜブランドにとって不可欠なのか、また想いを中心にしたブランディングがいかに採用や成長に影響するかを、丁寧に紐解いていきます。

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「想い」は論理ではない

多くの企業が「正しいブランディング」や「他社より優れたUSP」を模索する一方で、本質的なブランディングの起点となる“想い”が抜け落ちていることがあります。ここでは、ブランディングにおける想いの意義を詳しく掘り下げていきます。

想いは「好きか嫌いか」の価値判断である

「正しいか、間違っているか」で企業の価値を測る時代は終わりつつあります。ブランディングにおける想いとは、「好きか嫌いか」という感覚的な価値判断の軸であり、企業が信じる理念に共鳴する人を引き寄せる力になります。

これは、特に採用やファンづくりにおいて効果を発揮します。共感を起点にした接点は、信頼や継続的な関係性を生み出すからです。自社の世界観や考え方に「好き」と感じてくれる人との接点こそが、ブランディングの原点だといえるでしょう。

USP中心のブランディングは限界がある

マーケティングにおけるUSP(Unique Selling Proposition)は、他社との違いを打ち出す手法として有効です。しかし、「強み」を相対的に考えることで、正解・不正解の議論に陥りやすくなります。

このとき、自社が苦手なことも「やらねばならない」と感じてしまい、提供価値と実態のギャップが生まれます。それが顧客の期待値との不一致を生み、結果的にブランディングを毀損する可能性があります。

コアファンを育てるために“尖り”が必要

中小企業やスタートアップにとって、はじめから「誰にでも好かれる」ブランドを目指すことは逆効果です。むしろ、最初は“尖った想い”に共感するコアファンの存在が重要です。

イノベーター理論でも言われているように、まず少数の熱量あるファンが生まれ、そこから徐々に広がっていくのが自然な流れです。尖ることを恐れず、自社の「想い」を明確に表現することで、熱狂的な支持を集める土台が生まれます。

大企業にもあった「想い」の出発点

中小企業だけでなく、大企業も初期段階では想いを中心にしたブランディングを行ってきました。ここでは、その代表的な事例を取り上げ、想いがいかに事業成長と結びついたかを考察します。

ホンダに見る「夢の力」が引き寄せた共感

ホンダがまだ無名だった時代、本田宗一郎氏が「耐久レースで優勝するぞ」と言い放ち、実際に出場・優勝を果たしたエピソードは有名です。ここには“成功するかどうか”ではなく、“信じてやる”という想いが詰まっています。

この夢に共感した人々がファンとなり、社員となり、ホンダの成長を支えました。ブランドの起点は、経済的合理性ではなく、強い「想い」に他なりません。

想いが先にあるから行動が伴う

「想いが先、手段は後」。これはブランドの原則とも言えます。想いが明確であれば、多少の困難があってもブレずに突き進める。社員や取引先も、そうした信念に共鳴して動きます。

逆に、手段から入ると「これで正しいのか?」「他社はこうしている」という不安が先行し、判断軸が揺らぎやすくなります。ホンダのように、「やるべきだからやる」ではなく、「やりたいからやる」という姿勢が、ブランドの強さを生むのです。

コアな熱狂が市場を動かす

ブランドとは、ただの認知や知名度ではありません。強い想いによって生まれた熱狂が、企業の周囲にコミュニティを形成し、市場に影響を与える存在となっていきます。

これは今の時代においても同じです。情報が溢れる中で、本当に人の心を動かすのは「強い信念を持った言葉」や「一貫性ある行動」なのです。

正しさより「好きか嫌いか」で設計する

正しさより「好きか嫌いか」で設計する

想いを軸にブランドを構築するとき、最も大切なのは「正しいか」ではなく「好きかどうか」という視点です。ここから得られるメリットについて掘り下げます。

好き嫌いを表現することの効能

「好き嫌い」を明確にすることは、対象とする人を限定する一方で、強烈な共感を生みます。これは間口を狭めるのではなく、“選ばれる理由”を強くするという効果があります。

たとえば、「合理的な働き方より、泥臭い挑戦が好きな人を歓迎します」というように、好きな世界観をあえて出すことで、社風や価値観が伝わりやすくなります。

提供する価値に一貫性が生まれる

好きか嫌いかでブランディングを設計すると、提供するサービスやプロダクトにも一貫性が生まれます。これは長期的に見ると「信頼」につながります。

自分たちの不得意な分野を無理に背負わず、得意な領域に絞って磨いていく。結果として、期待とのギャップも少なくなり、顧客満足度やリピート率が高まります。

選ばれるためには、まず選ぶ覚悟を

「誰からも選ばれたい」と思うより先に、「誰を選びたいか」を明確にする。これが想いを軸にしたブランディングの基本姿勢です。

結果として、自社の価値観に共感してくれる人だけが集まり、関係性の質も向上します。採用においても、価値観の合う人材を引き寄せ、定着率の向上に寄与します。

想いの言語化がブランディングになる

ブランディングにおいて“想い”は核となる要素です。それは理屈ではなく、好悪によって判断される感情の領域であり、企業の信念や姿勢を映し出す鏡です。

USPのように「相対的な強み」を追いかけるよりも、まず「自分たちは何を信じるのか」を言語化することから始めましょう。小さな会社でも、大企業と同じように、想いを核にしたブランディングで着実に共感を広げていくことができます。

弊社のインナーブランディング事例はこちらをご確認ください。】

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深澤 了 Ryo Fukasawa
むすび株式会社 代表取締役
ブランディング・ディレクター/クリエイティブ・ディレクター

2002年早稲田大学商学部卒業後、山梨日日新聞社・山梨放送グループ入社。広告代理店アドブレーン社制作局配属。CMプランナー/コピーライターとしてテレビ・ラジオのCM制作を年間数百本行う。2006年パラドックス・クリエイティブ(現パラドックス)へ転職。企業、商品、採用領域のブランドの基礎固めから、VI、ネーミング、スローガン開発や広告制作まで一気通貫して行う。採用領域だけでこれまで1000社以上に関わる。2015年早稲田大学ビジネススクール修了(MBA)。同年むすび設立。地域ブランディングプロジェクト「まちいく事業」を立ち上げ、山梨県富士川町で開発した「甲州富士川・本菱・純米大吟醸」はロンドン、フランス、ミラノで6度金賞受賞。制作者としての実績はFCC(福岡コピーライターズクラブ)賞、日本BtoB広告賞金賞、山梨広告賞協会賞など。雑誌・書籍掲載、連載多数。著書は「無名✕中小企業でもほしい人材を獲得できる採用ブランディング」(幻冬舎)、「知名度が低くても“光る人材“が集まる 採用ブランディング完全版」(WAVE出版)。「どんな会社でもできるインナーブランディング」(セルバ出版)。「人が集まる中小企業の経営者が実践しているすごい戦略 採用ブランディング」(WAVE出版)

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