
これまで多くの企業は、お客様との関係やブランド力ばかりに注目してきました。しかし、現場で実際にお客様と接し、会社の価値を届けているのは従業員です。加えて、今は人手不足や採用難も深刻な課題になっています。
単に「良いサービスを作る」だけでは人もお客様も集まらない時代、企業が成長するためには「従業員」を中心に据え、会社・従業員・お客様・求職者の三方向のつながりを意識した経営が求められています。本記事では、その考え方と実践のポイントを解説します。
会社の成長を支える「三つのつながり」
企業が持続的に成長するためには、「お客様と会社」「会社と従業員」「従業員と求職者」の三つのつながりが不可欠です。単にサービスや商品を良くするだけでなく、実際に働く人=従業員を中心に据え、全体の関係性を見直すことがブランド力や採用力の土台となります。
「会社と従業員」の関係がすべての土台
どれほど素晴らしい理念や戦略を掲げても、現場で働く従業員が納得できずにいたら、企業の成長もブランドの向上も難しいです。会社と従業員がしっかりと向き合い、信頼ややりがいを共有することがすべてのスタート地点です。
以下では、従業員との関係がなぜ重要か、具体的な理由を整理します
帰属意識と主体性を生み出す
従業員が「この会社で働く価値がある」と納得し、安心して業務に向き合える環境が整うと、自分の仕事に責任とやりがいを持てるようになります。
会社の方針やビジョンが一方通行ではなく、現場の声も尊重されることで、従業員が積極的に提案・改善へと動き出します。こうした主体性こそが、会社全体の推進力となります。
「従業員とお客様」のつながりがブランドをつくる

ブランドやサービスの価値を実際に体現し、お客様と接するのは従業員です。従業員の働きが、企業の評価やお客様の満足度を左右します。単なるマニュアル対応ではなく、従業員が自信や誇りを持って働くことで、お客様にとっても「また利用したい」と思える企業になります。
働く人の熱量がお客様に伝わる
従業員が自社の理念や商品を理解し、誇りや楽しさを持って業務に取り組むことで、その熱意が接客やサービスを通じてお客様に伝わります。
小さな声掛けや提案、細やかな気配りがブランド体験として評価され、「この会社のサービスは安心できる」といった信頼やファンづくりにつながります。
「従業員と求職者」のつながりが採用の力になる
人手不足や採用難が深刻な今、企業の中で働く従業員の様子や雰囲気が、求職者にとっての「ここで働きたい」という動機になります。
従業員が生き生きとしているか、職場に納得感や成長の実感があるかが、採用活動の勝敗を左右しています。
求職者も“ファン”になれる企業へ
求職者は条件や待遇だけでなく、実際の現場がどのような雰囲気か、先輩社員がどう働いているかを気にしています。社内のリアルな情報や従業員の生の声を積極的に発信し、入社前から「ここなら頑張れそう」と思える納得感を提供することが重要です。
三つのつながりが会社を成長させる
従来はお客様だけに目を向けがちでしたが、現場でサービスを支える従業員、将来の仲間となる求職者まで一体で考えることが、会社全体の強さにつながります。三者のつながりが生まれると、従業員の主体性が高まり、お客様や求職者にも「選ばれる会社」になれます
バラバラではなく一体で考える
お客様、従業員、求職者という三方向の関係をバラバラに扱うのではなく、一体として管理・育成していくことが持続的成長の基盤です。現場主導の改善や、全員で会社を良くしていく風土が生まれることで、企業全体が力強く前進していきます。
働く人を中心に企業の仕組みを見直す
企業の成長戦略には、従業員・お客様・求職者の三者を軸にした関係性づくりが不可欠です。従業員のやりがいと主体性がブランドの信頼につながり、求職者にも「ここで働きたい」と思ってもらえる企業に変わります。
働く人を大切にすることで、結果として会社もお客様も成長できる循環が生まれます。
【弊社のインナーブランディング事例はこちらをご確認ください。】

深澤 了 Ryo Fukasawa
むすび株式会社 代表取締役
ブランディング・ディレクター/クリエイティブ・ディレクター
2002年早稲田大学商学部卒業後、山梨日日新聞社・山梨放送グループ入社。広告代理店アドブレーン社制作局配属。CMプランナー/コピーライターとしてテレビ・ラジオのCM制作を年間数百本行う。2006年パラドックス・クリエイティブ(現パラドックス)へ転職。企業、商品、採用領域のブランドの基礎固めから、VI、ネーミング、スローガン開発や広告制作まで一気通貫して行う。採用領域だけでこれまで1000社以上に関わる。2015年早稲田大学ビジネススクール修了(MBA)。同年むすび設立。地域ブランディングプロジェクト「まちいく事業」を立ち上げ、山梨県富士川町で開発した「甲州富士川・本菱・純米大吟醸」はロンドン、フランス、ミラノで6度金賞受賞。制作者としての実績はFCC(福岡コピーライターズクラブ)賞、日本BtoB広告賞金賞、山梨広告賞協会賞など。雑誌・書籍掲載、連載多数。著書は「無名✕中小企業でもほしい人材を獲得できる採用ブランディング」(幻冬舎)、「知名度が低くても“光る人材“が集まる 採用ブランディング完全版」(WAVE出版)。「どんな会社でもできるインナーブランディング」(セルバ出版)。「人が集まる中小企業の経営者が実践しているすごい戦略 採用ブランディング」(WAVE出版)