REPORTS

レポート

2025.09.15

採用ブランディングにおける「従業員」の役割

企業の人材採用や定着は、昨今難しくなっています。「従業員を大事にしている」と口では言っても、実際に人が集まらない、採用ができない状態なら、それは理論と現実が合っていないということです。

企業活動の中心には顧客・従業員・求職者の三者が存在しており、どれか一つでも偏ればうまくいきません。

今回は、従業員を軸とした関係性や、現場でバランスを取るための考え方について整理します。

採用ブランディングについて相談したい方はこちらから

「従業員を大切にする」とは何か

企業が「従業員を大切にする」とアピールするケースは増えています。しかし実際には、採用活動がうまくいかず、人手不足や離職に悩む企業が多く見られます。

「従業員を大切にする」ことと「実際に人が集まる・定着する」ことは一致していない場合がほとんどです。

形だけの従業員重視になっていないか?

制度や仕組みだけ整えても、現場の従業員が納得し、本当に満足できていなければ意味がありません。採用活動で「うちは従業員を大事にしている」と説明しても、内情が伴っていない場合はすぐに見抜かれます。

従業員が自分の仕事に納得し、意欲を持てる環境がなければ、長期的な定着や成果は期待できません。

採用ができていないなら見直しが必要

従業員を大切にしているつもりでも、採用が進まず人が集まらない場合は、企業の現場や発信のバランスに問題があると考えられます。

制度や理念のアピールだけでなく、実際の職場環境や働く人の声、現場の納得感など「外から見ても内から見ても納得できる仕組み」をつくることが重要です。

三者のバランスが企業成長のカギ

企業と顧客、企業と従業員、従業員と求職者。これら三者の関係性がバランスよく保たれているかどうかが、企業の持続的成長に大きく影響します。

どれか一つに偏ると、採用やサービスの質、ブランド力にまでマイナスの影響が出ます。

顧客・従業員・求職者の三角構造

従来は「顧客第一」「従業員重視」「人材確保」と個別に議論されてきましたが、実際にはこの三者の関係が密接に絡み合っています。顧客の満足だけ追い求めると現場が疲弊し、従業員の負担や離職につながります。逆に従業員だけを見ているとサービス品質が下がり、顧客の不満が増えます。

採用だけ強化しても、現場がうまくまわっていなければ人はすぐ辞めてしまいます

バランスを意識した現場づくり

三者のバランスを保つためには、経営層と現場が協力して「現実的な目線」で仕組みや制度を運用することが必要です。

たとえば働き方の見直し、業務の見える化、現場の声の吸い上げ、採用活動の情報開示など、個々の施策を連動させていくことが求められます。

従業員の役割は多層化している

従業員の役割は多層化している

昨今では、従業員が企業と顧客をつなぐ存在だけでなく、企業と求職者の間をつなぐ役割も担っています。従業員自身がブランドアンバサダーやリクルーターとして働くことが、採用やサービス向上にも直結する時代です。

推しの構造と従業員の立場

アイドルやタレント業界でいう「推し」の構造に近いものが、企業や従業員にも見られるようになっています。企業自体が「ブランド」や「憧れ」として機能することもあれば、従業員個人が「応援される存在」としてお客様や求職者に注目されることもあります。

実際のサービス現場や採用活動でも「どんな人が働いているか」「どんな雰囲気か」が重視される傾向が強まっています。

従業員は二つの顔を持つ

従業員は一方で「顧客から見て推される存在」となり、もう一方で「求職者にとってのモデルや憧れ」として企業を代表する立場を担います。

現場でイキイキ働く従業員の姿や、実際の声がSNSや採用サイトを通じて発信されることが、新たなファンや応募者の獲得につながります。

バランスの悪い組織が直面する問題

どこか一つの関係性に偏ると、組織全体の歯車が狂い始めます。たとえば顧客サービスばかりを強化して従業員の負荷が高まれば、離職や人材流出が増えます。

逆に従業員ファーストを謳いながら、実際は採用や現場の声が反映されていなければ、すぐに人が集まらなくなります。

バランス崩壊がもたらす悪循環

一時的な制度強化や待遇改善だけでは、現場の空気や業務の実情が改善されません。顧客・従業員・求職者、それぞれが納得しない状態が続くと、採用力もブランド力も落ち込み、企業の成長は止まります。

現場や採用現場、サービス提供の現場での声を地道に吸い上げて施策を見直すことが大切です。

仕組みや発信の「リアルさ」が重要

企業がどれだけ理念や仕組みを強調しても、現場での運用や従業員のリアルな声がともなわなければ、採用にも顧客にも響きません。

表面的な施策よりも、実態に基づいた「働きやすさ」「やりがい」「現場での声の共有」が重視されています。

現場の従業員の本音が人も集める

採用やブランド発信において、現場の従業員がどんな思いで働いているか、何に満足し、どんな課題があるか。こうした本音が求職者や顧客にも伝わることで、信頼や共感が生まれます。

従業員の生の声を発信することで、会社の魅力や改善点も明確になり、結果として採用・定着・サービス向上の循環が生まれます。

従業員を軸に三者のバランスを取る組織へ

従業員を軸に三者のバランスを取る組織へ

企業が持続的に成長するためには、顧客・従業員・求職者の三者のバランスを意識した運営が不可欠です。従業員が二つの顔を持ち、現場と外部をつなぐ存在であることを踏まえ、制度や現場改善、情報発信を一体で進めていくことが、これからの組織づくりの基本となります。

弊社のインナーブランディング事例はこちらをご確認ください。】

sai2

深澤 了 Ryo Fukasawa
むすび株式会社 代表取締役
ブランディング・ディレクター/クリエイティブ・ディレクター

2002年早稲田大学商学部卒業後、山梨日日新聞社・山梨放送グループ入社。広告代理店アドブレーン社制作局配属。CMプランナー/コピーライターとしてテレビ・ラジオのCM制作を年間数百本行う。2006年パラドックス・クリエイティブ(現パラドックス)へ転職。企業、商品、採用領域のブランドの基礎固めから、VI、ネーミング、スローガン開発や広告制作まで一気通貫して行う。採用領域だけでこれまで1000社以上に関わる。2015年早稲田大学ビジネススクール修了(MBA)。同年むすび設立。地域ブランディングプロジェクト「まちいく事業」を立ち上げ、山梨県富士川町で開発した「甲州富士川・本菱・純米大吟醸」はロンドン、フランス、ミラノで6度金賞受賞。制作者としての実績はFCC(福岡コピーライターズクラブ)賞、日本BtoB広告賞金賞、山梨広告賞協会賞など。雑誌・書籍掲載、連載多数。著書は「無名✕中小企業でもほしい人材を獲得できる採用ブランディング」(幻冬舎)、「知名度が低くても“光る人材“が集まる 採用ブランディング完全版」(WAVE出版)。「どんな会社でもできるインナーブランディング」(セルバ出版)。「人が集まる中小企業の経営者が実践しているすごい戦略 採用ブランディング」(WAVE出版)

  • PAGE-TOP