REPORTS

レポート

2025.06.27

無名企業のオウンドメディア戦略とは?文化を“順序立てて”伝える意味

オウンドメディア戦略

「オウンドメディアを立ち上げれば、採用もうまくいくはず」

そう考えている中小企業や無名企業は少なくありません。しかし、現実はそう簡単ではありません。どれだけ魅力的な取り組みを行っていても、ただ発信するだけでは応募者の心に響かないのです。

なぜなら、多くの無名企業には「発信を受け止める土壌」がまだ整っていないからです。本記事では、無名企業が文化や魅力を伝えるために必要な“順序”と“軸”について解説します。

採用ブランディングについて相談したい方はこちらから

発信しても届かないのは、順序と土壌がないから

「社員で田植えをしました」「スノーボード旅行に行きました」

企業のオウンドメディアやSNSで、こうした日常の取り組みを発信している会社もあります。確かに、社員同士の関係性や企業の雰囲気を感じてもらうには効果的な方法です。

しかし、それを見た求職者が「この会社に入りたい」と思うかというと、必ずしもそうではありません。

なぜなら、その“レクリエーションの投稿”が、どのような理念や考え方に基づいて行われているのかが見えないからです。企業としての価値観や文化の「軸」が示されていないと、「なんとなく楽しそう」で終わってしまい、再現性ある採用にはつながりません。

無名企業だからこそ、「順番」が命になる

大手企業や有名ブランドであれば、ちょっとした取り組みでも注目されます。それは、すでに“信頼”や“期待”という文脈があるからです。一方、無名企業にはその土壌がありません。だからこそ、順序立てて発信する必要があります。

まず最初にすべきは、「コンセプト」の明文化です。自社は何を大切にしているのか、どんな志を持って事業に取り組んでいるのか。それを明文化することで、発信の“核”ができます。

次に、それを体現する「採用スローガン」や「社員インタビュー」「社長のビジョン」などを用意します。この段階で初めて、社内で行われている活動や取り組みが“意味を持って”紹介できるようになるのです。

<発信の順序例>

  1. コンセプト設計(自社の理念・価値観)
  2. 採用スローガン/メッセージの策定
  3. 社員や経営層のインタビュー記事
  4. 取り組みやレクリエーションの紹介

この流れであれば、「田植え」も「スノボ」も単なるイベントではなく、文化の一部として伝わるようになります。

一貫性のない発信は、逆効果になることも

SNSやオウンドメディアは、気軽に情報を発信できる分、「誰に、何を、どう伝えるか」の設計が甘くなりがちです。とくに、理念や方針が曖昧な状態で取り組みを紹介すると、「楽しそうな会社だけど、なんかよくわからないな」で終わってしまいます。

さらに、一貫性のない発信は、企業への不信感や疑念を生むこともあります。投稿ごとに軸がブレていると、「この会社って結局どんな組織なの?」という疑問を持たれてしまうのです。

逆に、明確なコンセプトと一貫した価値観に基づく発信は、受け手に安心感を与え、ファンを生みます。

ファンを生むためには“文脈”をつくること

無名企業が採用市場で存在感を出すためには、単発の取り組みを発信するだけでは足りません。「この会社は何を大切にしていて、なぜこの活動をしているのか?」という文脈をつくることが必要です。

たとえば「芋ほりをしました」という発信も、会社のコンセプトが「自然との共生」「地域とのつながり」であれば、立派なブランド発信になります。その文脈がなければ、ただのイベント紹介で終わってしまうのです。

来てくれた人を“確実にファンにしたい”なら、受け取る側がその活動の意味を自分事として理解できるように、ストーリーをもって伝えていく必要があります。

「社風」を押し出す前に必要なこと

「うちは社風がいいんです」とアピールする会社もあります。しかし、“社風”とは結果であり、表面的な魅力ではありません。たとえば、「風通しがいい」「仲が良い」という言葉だけでは、具体性や背景が見えず、他社との違いも伝わりません。

大切なのは、「どのような価値観に基づいて、そうした社風が形成されているのか」をセットで伝えることです。

社員が自由に発言できるのはなぜなのか?意見を尊重する文化があるのはなぜなのか?それが理念と結びついていれば、求職者の理解と共感は格段に深まります。

「楽しそう」だけでは伝わらない

オウンドメディアでの文化発信は、無名企業にとってこそ大きな武器になります。しかし、その効果を得るためには、順序を守り、理念や価値観といった“軸”を明確にしたうえで発信することが不可欠です。

「楽しそうな会社ですね」と言われるよりも、「共感できる会社ですね」「その考え方に惹かれました」と言われる方が、採用としては圧倒的に質が高い。その違いは、文脈の有無、軸の有無、一貫性の有無に集約されます。

無名だからこそ、語れる物語がある。理念から始まるオウンドメディアの活用で、“伝える”だけでなく“惹きつける”発信を目指しましょう。

弊社のインナーブランディング事例はこちらをご確認ください。】

sai2

深澤 了 Ryo Fukasawa
むすび株式会社 代表取締役
ブランディング・ディレクター/クリエイティブ・ディレクター

2002年早稲田大学商学部卒業後、山梨日日新聞社・山梨放送グループ入社。広告代理店アドブレーン社制作局配属。CMプランナー/コピーライターとしてテレビ・ラジオのCM制作を年間数百本行う。2006年パラドックス・クリエイティブ(現パラドックス)へ転職。企業、商品、採用領域のブランドの基礎固めから、VI、ネーミング、スローガン開発や広告制作まで一気通貫して行う。採用領域だけでこれまで1000社以上に関わる。2015年早稲田大学ビジネススクール修了(MBA)。同年むすび設立。地域ブランディングプロジェクト「まちいく事業」を立ち上げ、山梨県富士川町で開発した「甲州富士川・本菱・純米大吟醸」はロンドン、フランス、ミラノで6度金賞受賞。制作者としての実績はFCC(福岡コピーライターズクラブ)賞、日本BtoB広告賞金賞、山梨広告賞協会賞など。雑誌・書籍掲載、連載多数。著書は「無名✕中小企業でもほしい人材を獲得できる採用ブランディング」(幻冬舎)、「知名度が低くても“光る人材“が集まる 採用ブランディング完全版」(WAVE出版)。「どんな会社でもできるインナーブランディング」(セルバ出版)。「人が集まる中小企業の経営者が実践しているすごい戦略 採用ブランディング」(WAVE出版)

  • PAGE-TOP