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レポート

2025.06.19

インナーブランディングは最も効率の良い経営施策である

企業文化を醸成し、社員一人ひとりが理念に基づいた行動を取れるようにする「インナーブランディング」は、単なる社内広報活動ではありません。経営に直結する「効率的な組織づくり」の手段であり、人材育成、売上拡大、採用力向上のすべてに波及する強力な経営戦略です。

この記事では、リッカートの連結ピン理論やMUSUBIの考え方を交えながら、理念を現場に浸透させる方法と、その意義について解説します。

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理念を浸透させる前に必要な“土壌”とは?

企業理念を製造設計や業務フローに落とし込むことは確かに大切です。しかし、その前段階として最も重要なのは「信頼・尊敬・共感」の土壌づくりです。この土壌がないまま理念を押し付けたところで、現場では形骸化し、言葉だけが浮つく結果となります。

この背景には、リーダーと現場社員の間にある「感情的な連結」の欠如があります。信頼関係がなければ、どんなに立派な理念や方針も現場で実践されることはありません。だからこそ、理念の浸透よりも先に「相互理解と尊重のある職場環境」をつくることが、インナーブランディングの第一歩なのです。

リッカートの連結ピン理論から考える社内の伝達構造

社会心理学者リッカートが提唱した「連結ピン理論」では、組織はリーダー層によって上下につながる構造を持ちます。すなわち、社長から幹部、幹部から現場へと価値観やメッセージが連結ピンのように伝達されていくという構造です。

この理論を踏まえると、インナーブランディングの中心的推進者はやはり社長であり、トップから価値観を落とし込まなければなりません。下から上には自然には流れません。だからこそ、社長自らが理念を言語化し、その理念を体現することが求められます。

さらに、現場と経営層の間に立つミドルマネジメントが「連結ピン」としての自覚を持つことが重要です。理念を現場に正しく伝えるだけでなく、現場の声を経営に届けるパイプ役としての機能を果たす必要があります。そのためのトレーニングや制度設計も、インナーブランディングの中で整備していく必要があります。

インナーブランディングは“一石なん鳥”にもなる

ングは“一石なん鳥”にもなる

よくある研修では、外部講師が一般論を語り、その場で終わることも少なくありません。しかし、インナーブランディングを通じて理念に基づいた人材育成に取り組めば、研修そのものが意味を持ち、行動の基準を共有する場となります。

例えば、理念に沿った行動が評価される仕組みが整えば、それは研修、人事評価、マネジメント方針すべてに波及します。むしろ、そうでなければ組織として理念を実践しているとは言えません。インナーブランディングを軸にすれば、教育・制度・行動基準が一本の線でつながり、あらゆる取り組みが有機的に機能するようになります。

このような連動性は、単に“効率のよい経営”という観点を超え、社員のモチベーションやエンゲージメントにも直接的に影響します。理念が社内に浸透するほど、社員の行動に一貫性が生まれ、自律的に組織に貢献する意識が芽生えるのです。

自分の強みが活きる場をつくることがインナーの本質

究極的に、インナーブランディングの目的は「一人ひとりの強みが組織の中で最大限に活かされ、社会への貢献につながる」状態を実現することです。そのためには、自分がどのように世の中に貢献できるかという“使命”を見出し、それを支える企業の土壌と接続する必要があります。

企業側は、自社の理念や文化を明確にし、それを丁寧に言語化して伝える必要があります。一方で、求職者や社員は自分の価値観や使命と照らし合わせて、企業との接点を見出す。このマッチング構造が整ったとき、初めて本質的なエンゲージメントが生まれるのです。

インナーブランディングはこの“価値観の接続装置”として機能します。個人の内面と組織の価値観が一致したとき、人は最大限の力を発揮し、企業の成長にも貢献するようになります。

むすびが考える“インナーから変わる経営の姿”

むすびでは、インナーブランディングを単なる組織文化醸成の枠を超えた「経営効率の鍵」として位置づけています。社員が理念に沿った行動を取るようになれば、意思決定が早くなり、組織内の無駄な調整コストも減ります。

また、企業文化が明確になれば採用活動にも強みを発揮します。「自分の価値観に合った会社かどうか」が明確になり、ミスマッチのない採用が実現できるのです。結果として定着率も向上し、人材が戦力化するスピードも早まります。これは売上・利益にも直結します。

実際に、むすびのクライアントの中でも、インナーに注力することでエンゲージメントが向上し、売上が前年対比120%を超えたという事例もあります。企業理念を「絵に描いた餅」にせず、日々の業務に落とし込むことで、組織全体のベクトルが揃いはじめるのです。

インナーブランディングは単なる施策ではなく、経営そのものを効率化するための考え方です。理念を言語化し、それを行動に落とし込み、文化として根づかせていく。そのプロセスこそが、強い組織をつくり、長期的な成長へと導きます。

「理念はあるけど、行動に落とせていない」「人事制度や研修がバラバラで一貫性がない」と感じている企業にこそ、いま必要なのがインナーブランディングです。

弊社のインナーブランディング事例はこちらをご確認ください。】

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深澤 了 Ryo Fukasawa
むすび株式会社 代表取締役
ブランディング・ディレクター/クリエイティブ・ディレクター

2002年早稲田大学商学部卒業後、山梨日日新聞社・山梨放送グループ入社。広告代理店アドブレーン社制作局配属。CMプランナー/コピーライターとしてテレビ・ラジオのCM制作を年間数百本行う。2006年パラドックス・クリエイティブ(現パラドックス)へ転職。企業、商品、採用領域のブランドの基礎固めから、VI、ネーミング、スローガン開発や広告制作まで一気通貫して行う。採用領域だけでこれまで1000社以上に関わる。2015年早稲田大学ビジネススクール修了(MBA)。同年むすび設立。地域ブランディングプロジェクト「まちいく事業」を立ち上げ、山梨県富士川町で開発した「甲州富士川・本菱・純米大吟醸」はロンドン、フランス、ミラノで6度金賞受賞。制作者としての実績はFCC(福岡コピーライターズクラブ)賞、日本BtoB広告賞金賞、山梨広告賞協会賞など。雑誌・書籍掲載、連載多数。著書は「無名✕中小企業でもほしい人材を獲得できる採用ブランディング」(幻冬舎)、「知名度が低くても“光る人材“が集まる 採用ブランディング完全版」(WAVE出版)。「どんな会社でもできるインナーブランディング」(セルバ出版)。「人が集まる中小企業の経営者が実践しているすごい戦略 採用ブランディング」(WAVE出版)

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