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レポート

2025.11.03

インナーブランディングを実施する際に準備しておくべきこと

インナーブランディング

インナーブランディングを形だけで終わらせず、本当に現場に根づかせたいなら、どのような体制で取り組むかがすべての出発点です。多くの企業でよくあるのが、経営者や人事だけが中心となり、現場の声や多様な価値観が取り入れられないまま施策を進めてしまう失敗例です。

結果として「せっかくの取り組みが一部の人しか知らない」「現場の納得感や共感がない」といった状況に陥りがちです。全社横断のプロジェクト体制づくりは、その防止策であり、実効性のあるインナーブランディングの必須条件です。

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社長の「意思表明」と全社への根回しが最優先

プロジェクトの出発点は、社長自身による「本気の意思表明」です。「今回のインナーブランディングは一時的な取り組みではなく、会社の未来を本気で変えるための最優先課題である」と、具体的な言葉で全社・全幹部に伝える必要があります。この一言があるかないかで、各部署や現場の温度感がまったく変わります。

たとえば現場の営業部長やベテラン社員も、トップから「このプロジェクトは特別で、君たちの協力が会社の将来を左右する」と伝えられれば、協力や送り出しを渋る心理が大きく軽減します。社長が背景・目的・優先順位まで明確に話すことで、「なぜこのタイミングでやるのか」「なぜうちの部署も関わる必要があるのか」が腹落ちしやすくなります。

プロジェクト体制の立ち上げで押さえるべきポイント

インナーブランディングプロジェクトを立ち上げる際、現場で必ずぶつかるのが「誰をメンバーにするか」「どこまでリソースを割けるか」という現実的な調整です。

たとえば、営業で結果を出しているキーパーソンをプロジェクトに招くと、「現場が回らなくなるのでは」「営業成績が落ちないか」と部署から反発が出ることも少なくありません。しかし、その調整の難しさこそがプロジェクト型インナーブランディングの本質です。

社長や幹部が「このプロジェクト経験は必ず現場の業務やキャリアにも還元される」「部署としても必ず意味がある」としっかり説明し、送り出しを納得感あるものにすることが、成功の分岐点となります。

また、プロジェクトの目標や予算、活動期間、役割分担も事前にすり合わせておくことが不可欠です。「なんとなくやる」のではなく、「何のためにやるのか」「どこまでやるのか」「誰がリーダーでどこが現場担当か」まで、社長・幹部・メンバー間で認識をそろえておきましょう。

なぜプロジェクト体制でやるのか?

プロジェクト型の最大のメリットは、「会社全体の本音や現場の知恵が戦略・施策に反映される」点にあります。

たとえば従来型のコンサル導入では、経営層だけで「ヒアリング→戦略を決定→現場で実行して終わり」となりがちです。その場合、「誰の言葉で語られている施策なのか分からない」「やらされ感が強くなり、結局続かない」という問題が起こりやすくなります。

一方、プロジェクト体制であれば「営業・総務・生産・現場」など異なる部署のメンバーが、それぞれの課題や現実を持ち寄り、「うちの会社らしさ」を踏まえたインナーブランディング施策が作られます。各現場のリアルな問題点や、働く人ならではの具体的なアイデアが盛り込まれるため、計画倒れになりにくく、現場の納得感も高まります。

さらにプロジェクトの現場経験は、参加したメンバーにとっても大きな学びやキャリアアップの機会になります。普段関わらない部署と意見交換をすることで、自分の視野や社内ネットワークが広がり、結果として「次のリーダー候補」として成長する社員を生み出せます。

インナーブランディングプロジェクト推進を妨げるつまずきポイント

実際の現場では、「普段の業務が忙しく、プロジェクトどころじゃない」「プロジェクトに参加する意義が分からない」という声が必ず上がります。ここで大切なのは、形だけのプロジェクトにしない工夫です。

たとえば、プロジェクトの活動を通常業務の評価やキャリアパスに明確に位置づけること、活動に必要なリソース(時間・予算)をきちんと確保すること、成果や学びを全社・全員に還元する仕組みをつくることが求められます。加えて、途中経過や苦労も含めてプロジェクトのストーリーを全社員に発信し続けることも重要です。「あのプロジェクトは大変だったけど、自分たちの会社に合ったやり方が見つかった」「前よりみんなの顔が見えるようになった」など、実際の変化や成長を共有することで、社内の共感や応援も広がります。

インナーブランディングプロジェクト体制で「会社全体を巻き込む」

インナーブランディングは、理念や施策を現場の自分ごとに変えるプロセスです。そのためには、プロジェクト体制で各部署を横断し、社長から現場まで納得して進められる仕掛けが不可欠です。

「調整が面倒・人選が難しい」と感じるポイントこそが、現場の意識変革や人材育成のチャンスです。手間をかけて全社を巻き込むほど、実行力・定着力の高いインナーブランディングが実現します

弊社のインナーブランディング事例はこちらをご確認ください。】

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深澤 了 Ryo Fukasawa
むすび株式会社 代表取締役
ブランディング・ディレクター/クリエイティブ・ディレクター

2002年早稲田大学商学部卒業後、山梨日日新聞社・山梨放送グループ入社。広告代理店アドブレーン社制作局配属。CMプランナー/コピーライターとしてテレビ・ラジオのCM制作を年間数百本行う。2006年パラドックス・クリエイティブ(現パラドックス)へ転職。企業、商品、採用領域のブランドの基礎固めから、VI、ネーミング、スローガン開発や広告制作まで一気通貫して行う。採用領域だけでこれまで1000社以上に関わる。2015年早稲田大学ビジネススクール修了(MBA)。同年むすび設立。地域ブランディングプロジェクト「まちいく事業」を立ち上げ、山梨県富士川町で開発した「甲州富士川・本菱・純米大吟醸」はロンドン、フランス、ミラノで6度金賞受賞。制作者としての実績はFCC(福岡コピーライターズクラブ)賞、日本BtoB広告賞金賞、山梨広告賞協会賞など。雑誌・書籍掲載、連載多数。著書は「無名✕中小企業でもほしい人材を獲得できる採用ブランディング」(幻冬舎)、「知名度が低くても“光る人材“が集まる 採用ブランディング完全版」(WAVE出版)。「どんな会社でもできるインナーブランディング」(セルバ出版)。「人が集まる中小企業の経営者が実践しているすごい戦略 採用ブランディング」(WAVE出版)

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