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レポート

2025.08.26

インナーブランディングにおける外部人材の関与は是か非か

インナーブランディングを推進する際、「関わるのは正社員であるべきか?」「外部パートナーでは本質的な浸透は難しいのではないか?」といった疑問を抱く企業も少なくありません。しかし、雇用形態だけで適否を判断してしまうと、本質を見失う可能性があります。

本記事では、業務委託や人事代行といった外部人材がインナーブランディングに関与する際の考え方や留意点を整理しながら、最も重要な「共鳴度」について考察します。

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雇用形態ではなく「共鳴の深さ」が鍵を握る

インナーブランディングの推進にあたって、必ずしも正社員でなければならないというわけではありません。むしろ、重要なのは“どれだけ会社と理念に共鳴しているか”という姿勢や関わり方にあります。

外部人材でも理念に共鳴していれば問題はない

実際に、業務委託契約であっても、クライアント企業の理念や事業に深く共感し、実質的に8割以上の業務時間をその企業に費やしている人材も存在します。彼らが自社の社員と変わらぬ熱量で関与し、プロジェクトを推進しているケースは珍しくありません。

こうした“熱量”や“共鳴度”は、雇用形態では測れないというのが実情です。むしろ、正社員であっても理念への共感が薄く、受け身の姿勢のままタスク処理にとどまるケースもあります。

インナーブランディングの要は「自社化された行動者」の存在

単なる外注先として関わるのではなく、「自社の一員としての意識」を持って関わるかどうかが重要です。そのために必要なのは、形式ではなく意識の“入り方”です。

自社の採用担当としての“顔”を持てるか

たとえば、人事代行という立場であっても、「この会社の採用を担っているのは私です」と胸を張って言えるかどうかが分水嶺となります。

  • 自社の一員として候補者に対応しているか?
  • 自社の理念・文化を理解し、体現しているか?
  • 自社の成長と自らの役割を結びつけて考えているか?

こうした姿勢を持つ外部人材であれば、組織の一部としてインナーブランディング施策を担っても問題はありません。

組織としての“任せ方”も問われている

外部人材がインナーブランディングに深く関与するには、企業側の“任せ方”や“巻き込み方”も重要になります。関係性が一過性にとどまらず、長期的な視点で構築されているかどうかが問われます。

企業側の問いかけ:「その人と、どこまで関わるつもりか?」

企業としては次のような観点で判断する必要があります。

  • その人材にどこまで任せるのか?
  • 継続的に関与してもらう意思があるのか?
  • 短期成果ではなく、文化醸成まで任せる腹があるのか?

一部の業務を切り出すだけでなく、「その人に任せることが自社の文化をつくる」ぐらいの位置づけがあるならば、外部か内部かという議論は不要になります。

抵抗感があるのは「熱が読めない」から

雇用形態に対する抵抗感は、実際には「その人がどこまで本気で関わってくれるのかわからない」という不安感から生まれています。これは雇用形態の問題ではなく、“温度感の不透明さ”が原因です。

正社員にも“熱のない人”は存在する

しばしば、「正社員なら安心だ」とされる背景には、雇用関係によってコミットメントが担保されているという思い込みがあります。しかし現実には、正社員であっても理念に共鳴しておらず、淡々と業務をこなすだけの人材も少なくありません。

一方で、業務委託でも高い意識を持ち、実質的にチームの中核を担う人材も存在します。つまり「誰が熱を持っているか」は、雇用契約書には書かれていないということです。

会社として「どうしたいか」が最も重要

結局のところ、企業としてどのような体制でインナーブランディングを推進していきたいか、という戦略が明確でなければ、どのような人材が適切かも判断できません。

外部人材を主担当に据えるなら、それに見合う環境を

「その人が主担当として旗を振っていくならば、その人が入りやすいように組織を設計する」という柔軟性が求められます。

  • 雇用形態にとらわれず、実質的に中にいるような関わり方を支援する
  • 情報共有の仕組みを内外問わず整える
  • 重要な会議や意思決定の場にも外部人材を招く

こうした配慮を行うことで、外部人材も「自分がこの会社の一部である」と自然に感じることができ、インナーブランディングの担い手としての役割を果たしやすくなります。

形式よりも共鳴。熱をもった外部人材はインナーの核にもなれる

インナーブランディングを推進する際に、正社員か業務委託かという「形式」にこだわる必要はありません。大切なのは、その人が企業理念やビジョンにどれだけ共鳴しているか、そして企業としてその人をどれだけ巻き込もうとしているかです。

雇用形態にかかわらず、「共鳴して動ける人材」が中に入っていることで、ブランドは内部から育ちます。組織の一員としての誇りを持てるような関係性を築ければ、外部人材であってもインナーブランディングの核となることは十分に可能です。

弊社のインナーブランディング事例はこちらをご確認ください。】

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深澤 了 Ryo Fukasawa
むすび株式会社 代表取締役
ブランディング・ディレクター/クリエイティブ・ディレクター

2002年早稲田大学商学部卒業後、山梨日日新聞社・山梨放送グループ入社。広告代理店アドブレーン社制作局配属。CMプランナー/コピーライターとしてテレビ・ラジオのCM制作を年間数百本行う。2006年パラドックス・クリエイティブ(現パラドックス)へ転職。企業、商品、採用領域のブランドの基礎固めから、VI、ネーミング、スローガン開発や広告制作まで一気通貫して行う。採用領域だけでこれまで1000社以上に関わる。2015年早稲田大学ビジネススクール修了(MBA)。同年むすび設立。地域ブランディングプロジェクト「まちいく事業」を立ち上げ、山梨県富士川町で開発した「甲州富士川・本菱・純米大吟醸」はロンドン、フランス、ミラノで6度金賞受賞。制作者としての実績はFCC(福岡コピーライターズクラブ)賞、日本BtoB広告賞金賞、山梨広告賞協会賞など。雑誌・書籍掲載、連載多数。著書は「無名✕中小企業でもほしい人材を獲得できる採用ブランディング」(幻冬舎)、「知名度が低くても“光る人材“が集まる 採用ブランディング完全版」(WAVE出版)。「どんな会社でもできるインナーブランディング」(セルバ出版)。「人が集まる中小企業の経営者が実践しているすごい戦略 採用ブランディング」(WAVE出版)

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