
インナーブランディングの「やりやすさ」を人数で決めることはできません。人数が少なければ浸透しやすい傾向はありますが、必ずしもスムーズに進むとは限りません。
本記事では、組織規模ごとに現れる特徴やリスク、経営層の役割を整理し、規模によらず効果的に進める視点を解説します。
人数が少ない組織の特徴と注意点
人数が少ない組織は、社内のコミュニケーションが密になりやすく、現場の状況を把握しやすいのが特徴です。しかし、規模が小さいからといって必ずしも一体感が生まれるとは限らず、リーダーの本気度や姿勢次第で成否が大きく左右されます。
浸透が楽になる理由と進まない場合のリスク
少人数の組織は、情報共有や意思決定が早く、全員で議論しやすいメリットがあります。ただし、リーダーや社長に本気がなければ、少人数でも反対意見や温度差が生じて足踏みするケースが出てきます。
実際、10~30名規模でも進まないことは珍しくなく、人数よりも組織の温度感が結果を左右します。
多人数組織に特有の課題と工夫
人数が多くなると、情報の伝達・価値観の共有に時間とコストがかかります。一方で、組織全体に一貫したブランドや理念を浸透させることで、企業の成長や安定に大きく貢献できます。
部署や拠点ごとの温度差と巻き込み策
数百人から数万人規模では、部署や拠点ごとに雰囲気や意識にばらつきが生じやすくなります。「自分の部署だけでいい」「全体でやる意味がない」という声も上がりがちです。
成功している大企業では、他部署の取り組み発表や意見交換の機会を意図的につくり、全体の気づきや成長に結びつけています。
大規模でも成功できる理由
JALや京セラなどの大企業でも、時間やコストをかけてインナーブランディングを進めた実例があります。人数が多いから難しいのではなく、数に比例して段取りや工数が増えるだけです。
戦略的に部署ごとに巻き込む仕組みを作ることで、大規模でも全体にブランドや理念を浸透させることができます。
社長(トップ)の本気度が最重要

人数に関係なく、社長や経営層の姿勢がインナーブランディングの成否を大きく左右します。社長が本気で旗を振り続けることで、現場にも一体感が生まれ、組織全体の空気が変わります。
社長の温度感がプロジェクトの結果を決める
少人数でも、社長が「やればいい」という姿勢なら、プロジェクトは進みません。反対に、何千人・何万人規模でもトップ自らが旗を振る姿勢を貫けば、現場の動きや組織風土も変わります。
MUSUBIでも数百人規模まで支援した実績があり、社長の本気度が最重要であることがわかっています。
インナーブランディングを効果的に進めるポイント
人数の多寡に関わらず、組織を巻き込むためには現場参加や部門を越えた発表・コミュニケーションの場づくりが欠かせません。また、現場の変化や成長を加速させる工夫についても説明します。
座談会・意見交換・横断的な対話の重要性
大きな組織ほど、他部署の発表や異なる立場の意見交換を通じて、新たな気づきや価値観のすり合わせが必要です。現場参加型の座談会や社内ワークショップを定期的に行うことで、組織内の一体感と主体性を高めることができます。
新卒採用や若手の活躍が組織に与える効果
新卒や若手が入社すると、既存社員の自覚やプライド、成長意欲が一気に高まることがあります。「今の基準で自分が受かるだろうか」と考えることで、組織全体の基準や雰囲気が上がります。
インナーブランディングを継続しながら、採用ブランディングや若手の成長も組織変革を後押しします。
規模より本気と仕組みが成否を決める
インナーブランディングは「人数」そのものではなく、トップの本気度や全体を巻き込む仕組みづくりで成果が決まります。人数が多いほど時間はかかりますが、工夫と仕掛けで浸透させることは可能です。
できるだけ早い段階から継続的に取り組み、現場の声を反映し続けることで、どの規模でも組織の強化や成長につながります。
【弊社のインナーブランディング事例はこちらをご確認ください。】

深澤 了 Ryo Fukasawa
むすび株式会社 代表取締役
ブランディング・ディレクター/クリエイティブ・ディレクター
2002年早稲田大学商学部卒業後、山梨日日新聞社・山梨放送グループ入社。広告代理店アドブレーン社制作局配属。CMプランナー/コピーライターとしてテレビ・ラジオのCM制作を年間数百本行う。2006年パラドックス・クリエイティブ(現パラドックス)へ転職。企業、商品、採用領域のブランドの基礎固めから、VI、ネーミング、スローガン開発や広告制作まで一気通貫して行う。採用領域だけでこれまで1000社以上に関わる。2015年早稲田大学ビジネススクール修了(MBA)。同年むすび設立。地域ブランディングプロジェクト「まちいく事業」を立ち上げ、山梨県富士川町で開発した「甲州富士川・本菱・純米大吟醸」はロンドン、フランス、ミラノで6度金賞受賞。制作者としての実績はFCC(福岡コピーライターズクラブ)賞、日本BtoB広告賞金賞、山梨広告賞協会賞など。雑誌・書籍掲載、連載多数。著書は「無名✕中小企業でもほしい人材を獲得できる採用ブランディング」(幻冬舎)、「知名度が低くても“光る人材“が集まる 採用ブランディング完全版」(WAVE出版)。「どんな会社でもできるインナーブランディング」(セルバ出版)。「人が集まる中小企業の経営者が実践しているすごい戦略 採用ブランディング」(WAVE出版)