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2025.12.16

インナーブランディングにおける理念変更への「不安」と現場で起きるリアル

インナーブランディングにおける理念変更への「不安」と現場で起きるリアル

「会社の理念を変える」という決断は、多くの組織にとって大きなチャレンジです。何年も、あるいは創業から掲げてきた理念を手放すことに、不安や抵抗を感じるのは当然のこと。

しかし、事業環境や社員構成、働き方が大きく変化する現代において、理念を見直すことは決して裏切りではありません。むしろ「いまの会社・現場・社員のために、理念を生まれ変わらせる」ことは、インナーブランディングの本質そのものです。

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理念は“変えること”が目的ではない

組織の理念を見直すプロジェクトでは、「まずは現状の理念を変えましょう」という前提で進めることはありません。今ある理念が十分に機能している、経営者も社員も納得し、誇りを持ち、日常の仕事の中で使えているなら、それはすでに立派な資産です。

現場から見える“理念の課題”とは

実際には「理念が抽象的すぎて現場で使えない」「そもそも誰も覚えていない」「社長は納得しているが社員はピンときていない」といった、言葉と実態のズレが課題になるケースが多いものです。

このような状況では、「理念=お飾り」「額縁の中の言葉」になりやすく、日々の判断や行動を支える拠り所にはなりません。インナーブランディングの本来の目的は、「組織の全員が、理念を自分の言葉で語れるようになる」こと。そのために言葉のアップデートや再定義が必要となるのです。

「理念を変える」ことに対する現場の抵抗感

長く続いた理念に対して、「これまでの積み重ねが無駄になるのでは」「社長や創業者の想いを否定することにならないか」といった感情的な壁が生まれるのは自然なことです。

しかし、理念を変えることでの現場の変化も生じます。

既存の理念を“活かす”アプローチ

理念を見直す際に最も大切なのは、「いまの理念のどこが強みで、どこに課題があるのか」を丁寧に言語化することです。多くの場合、これまで大切にしてきた言葉や考え方を土台にしつつ、「もっと伝わる」「もっと覚えやすい」「もっと実践しやすい」形に翻訳するだけで十分です。

たとえば、抽象的だった理念を「現場の日常エピソード」や「具体的な行動指針」とセットで再定義したり、既存の理念文にその会社らしさを加えるだけで、ぐっと浸透しやすくなることも珍しくありません。

理念を変えることで生まれる効果

言葉が現場にフィットすると、社員の納得感や当事者意識が格段に高まります。自分の会社の理念を自分の言葉で語れるようになった瞬間から、社員の表情やコミュニケーションが変わっていく――これは数多くの現場で見られるリアルな変化です。

実践プロセス:理念のアップデートは“現場起点”で

実践プロセス:理念のアップデートは“現場起点”で

理念づくり・再定義のプロジェクトは、トップダウンで「社長が思い切って言葉を変える」ものでも、逆に「コンサルがすべて決める」ものでもありません。

現場の声や実際の行動、日々起きている会社らしさのエピソードを丁寧に拾い上げ、それを新しい理念の素材にしていく。このプロセスがもっとも浸透性の高い理念を生みます。

“変えたい”と“残したい”のバランスをとる

理念の変更には、全員の納得と合意が必要です。

  • 「いまの理念のどこに愛着があるのか」
  • 「どの言葉やエピソードが“自分たちらしさ”として誇れるのか」
  • 「時代や組織の変化にあわせて、どこをどう具体化・翻訳すべきなのか」

をプロジェクトチームでじっくりと話し合います。こうして生まれた現場発の理念は、形だけのスローガンではなく、本当の意味で社員が誇れる会社の軸になります。

プロジェクトの失敗パターン

逆に、経営層だけ・コンサルだけで理念を一方的に決めてしまうと、「また新しい言葉だけ変えさせられた」と現場に白けた空気が流れ、結局形骸化してしまいます。理念の変更は現場の声を必ず取り入れ、「みんなで決めた」と実感できるプロセスを重視しましょう。

理念変更の「目的」と「必要性」

理念を変えること自体を目的にしない。これが、弊社むすび株式会社としての考え方です。あくまで課題があるから変える組織をもっと良くしたいから変えるという姿勢が大前提。

社長やリーダーが「本当に今、何を変えたいのか」を現場の声と一緒に言語化し、その上で「理念を変える/変えない」の判断をしていきます。

ですから「インナーブランディング=理念を変える」ではありません。

理念は「今」と「これから」のために磨き続ける

会社の理念は、過去の功績や歴史を大切にしつつも、今の組織にフィットし、これからの成長を後押しするために、磨き続けていくものです。

現場や社員が納得し、覚えやすく実践しやすい理念にアップデートすることで、インナーブランディングの力は最大化されます。

弊社のインナーブランディング事例はこちらをご確認ください。】

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深澤 了 Ryo Fukasawa
むすび株式会社 代表取締役
ブランディング・ディレクター/クリエイティブ・ディレクター

2002年早稲田大学商学部卒業後、山梨日日新聞社・山梨放送グループ入社。広告代理店アドブレーン社制作局配属。CMプランナー/コピーライターとしてテレビ・ラジオのCM制作を年間数百本行う。2006年パラドックス・クリエイティブ(現パラドックス)へ転職。企業、商品、採用領域のブランドの基礎固めから、VI、ネーミング、スローガン開発や広告制作まで一気通貫して行う。採用領域だけでこれまで1000社以上に関わる。2015年早稲田大学ビジネススクール修了(MBA)。同年むすび設立。地域ブランディングプロジェクト「まちいく事業」を立ち上げ、山梨県富士川町で開発した「甲州富士川・本菱・純米大吟醸」はロンドン、フランス、ミラノで6度金賞受賞。制作者としての実績はFCC(福岡コピーライターズクラブ)賞、日本BtoB広告賞金賞、山梨広告賞協会賞など。雑誌・書籍掲載、連載多数。著書は「無名✕中小企業でもほしい人材を獲得できる採用ブランディング」(幻冬舎)、「知名度が低くても“光る人材“が集まる 採用ブランディング完全版」(WAVE出版)。「どんな会社でもできるインナーブランディング」(セルバ出版)。「人が集まる中小企業の経営者が実践しているすごい戦略 採用ブランディング」(WAVE出版)

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