
インナーブランディングや理念プロジェクトを進めるとき、最も現場が悩むのは「一部の社員や役員が納得していない」「行動が変わらない」というリアルな壁です。どれだけ社長や中心メンバーが前向きでも、キーパーソンが動かない、あるいは摩擦が起きることはどの組織でも避けられません。
では、こうした課題をどう乗り越え、理念浸透を実現していくべきか。現実的な視点から解説します。
納得しない役員・社員が現れる理由と向き合い方
インナーブランディングや理念の刷新を進める過程で、最初に直面するのが納得しない役員や社員の存在です。
特に長く会社を支えてきた幹部や現場リーダーは、これまでのやり方にこだわりや自負があり、新しいビジョンや方針を素直に受け入れられないことも多くあります。しかし、こうした抵抗が現れたからといって即座に排除したり、諦めたりする必要はありません。
まずは徹底的に「対話」を重ねる
納得していない人とのコミュニケーションを避けては、組織変革は進みません。まずはなぜ納得できないのか、何に不安や疑問があるのかを丁寧に聴き、会社の未来像やプロジェクトの意義を繰り返し共有することが出発点です。
この地道な対話の中で、思い込みが溶けたり、徐々に歩み寄りが生まれることも多いものです。
合意できなければ“個別対応”と現実的な判断
どうしても価値観や方向性が合わない場合、最終的には「その人を外す」決断や配置転換が話題になります。ただし、役員やキーパーソンを外せば現場が回らなくなることもあり、現実的には簡単に決断できません。
この場合は個別に事情を聴き、一人ひとりに合わせて時間をかけて納得を得る努力を続けるしかありません。現場と経営層のバランスや、業務への影響を踏まえた慎重な対応が必要です。
理念の浸透と評価制度の連動
インナーブランディングが本当に機能するかどうかは、「現場の行動が変わるかどうか」にかかっています。
理念や価値観はただ語るだけでなく、日々の評価や行動と直結させて初めて意味を持ちます。
行動と評価をリンクさせることで“本気度”が伝わる
新しい理念や価値観を打ち出したなら、評価制度にもその要素を明記し、日々の仕事ぶりや成果に反映させていくことが重要です。
「理念を体現しているかどうか」で昇格や表彰に差がつく仕組みがあると、現場も納得感を持ちやすくなります。反対に、理念に反した行動が許容され続けると、プロジェクト自体が形骸化しやすくなります。
経営層・上層部の率先が現場を動かす
現場のリーダーや役員が自ら理念を体現し、手本となって行動することは、プロジェクト成功の必須条件です。上層部の本気度や行動が現場に伝播しない限り、いくら制度や仕組みを整えても、実態は変わりません。
経営陣が理念を日常の言葉や行動で示し続けることが、現場の温度差や抵抗感を少しずつ解消していきます。
どうしても“離脱”が起きた場合の向き合い方
対話を重ねてもなお、どうしても新しい理念や価値観に納得できず会社を去る人が出ることもあります。これはどんなに工夫をしてもゼロにはできません。
しかし、こうした離脱は一時的な混乱を生み出しながらも、最終的には「理念でつながった仲間だけが残る」組織をつくるためのプロセスと捉えることもできます。
一時の混乱は理念浸透のチャンスでもある
インナーブランディングや理念の浸透には「納得しない人」の存在がつきものです。近道はなく、地道な対話、個別対応、評価制度の運用、経営層の率先…さまざまな努力を積み重ねていくことで、少しずつ組織の軸が磨かれていきます。
摩擦や一時的な離脱も乗り越えながら、最終的には理念でつながった本当の仲間が残る。それが、しなやかで強い組織を作る唯一の道です。
【弊社のインナーブランディング事例はこちらをご確認ください。】

深澤 了 Ryo Fukasawa
むすび株式会社 代表取締役
ブランディング・ディレクター/クリエイティブ・ディレクター
2002年早稲田大学商学部卒業後、山梨日日新聞社・山梨放送グループ入社。広告代理店アドブレーン社制作局配属。CMプランナー/コピーライターとしてテレビ・ラジオのCM制作を年間数百本行う。2006年パラドックス・クリエイティブ(現パラドックス)へ転職。企業、商品、採用領域のブランドの基礎固めから、VI、ネーミング、スローガン開発や広告制作まで一気通貫して行う。採用領域だけでこれまで1000社以上に関わる。2015年早稲田大学ビジネススクール修了(MBA)。同年むすび設立。地域ブランディングプロジェクト「まちいく事業」を立ち上げ、山梨県富士川町で開発した「甲州富士川・本菱・純米大吟醸」はロンドン、フランス、ミラノで6度金賞受賞。制作者としての実績はFCC(福岡コピーライターズクラブ)賞、日本BtoB広告賞金賞、山梨広告賞協会賞など。雑誌・書籍掲載、連載多数。著書は「無名✕中小企業でもほしい人材を獲得できる採用ブランディング」(幻冬舎)、「知名度が低くても“光る人材“が集まる 採用ブランディング完全版」(WAVE出版)。「どんな会社でもできるインナーブランディング」(セルバ出版)。「人が集まる中小企業の経営者が実践しているすごい戦略 採用ブランディング」(WAVE出版)

