
「共感で入社したのに早期離職してしまう」
その背景には、向き合い不足が潜んでいます。企業理念やトップの想いだけでなく、日常の会話や面談を通じて、社員一人ひとりの希望や成長意欲を把握し続けることが定着率向上のカギです。
本記事では、現場でできるコミュニケーション習慣づくりと、組織に定着するための具体策を多面的に解説します。
向き合いを増やすことがなぜ重要か
どれだけ共感をもって入社しても、その後の関わりや会話が少なければ、やりがいや成長の実感は薄れていきます。従業員の今を把握し、定期的に声をかける仕組みが定着には不可欠です。
「やりたいこと」を知る努力
多忙な現場ほど「やるべきこと」が優先されがちですが、個々の「やりたいこと」や「目標」を知るには、意図的な面談や質問が必要です。
入社面談や定期的な1on1、雑談のなかでも「どんな仕事をやってみたい?」「今後どうなりたい?」と問いかけることで、本人の本音や成長意欲に気づきやすくなります。本人も「見てくれている」と感じることでエンゲージメントが高まります。
チャンスや役割の提示でモチベーションを維持
想いや目標を把握できたら、実際に「じゃあこれやってみる?」「こういう業務を任せてみよう」と具体的なチャンスや新しい役割を与えることが大切です。
正社員としての働き方だけでなく、本人の希望に応じて業務委託やプロジェクト単位での関わりなど柔軟な選択肢を提示するのも有効です。これにより、やりがいと成長の実感を同時に得ることができます。
量を重ねるコミュニケーション文化のつくり方
組織の定着率を高めるには、質を追い求めるより「会話や面談の量」を意識的に増やすことが有効です。継続的な接点づくりが離職予防とエンゲージメント維持に直結します。
毎週10分の短時間面談
形式ばった評価面談よりも、毎週10分だけでも良いので「今週の振り返り」「今の課題」「やりたいことの変化」などを気軽に話せる時間を設けると、従業員の「今」に寄り添いやすくなります。
たとえば「最近気になっていることある?」と問いかけるだけでも、本人の変化や成長意欲を把握できます。
シェアと情報共有で今を全員で支える
一対一の面談だけでなく、日報やチームチャット、ミニミーティングで進捗や気持ちをシェアする習慣も有効です。「今週の悩み」「最近の挑戦」をチーム全体で共有することで、他部署や上司もサポートしやすくなり、孤立やモヤモヤを感じにくくなります。
チームで変化に気づき、支え合う文化が根付くことで組織全体の活性化にもつながります。
会話量を増やす現場の工夫

「向き合い」の仕組みは、トップダウンでも現場発信でも始められます。現場ごとに続けやすい工夫を積み重ねることで、無理なくコミュニケーションの質と量を高めていくことができます
日常会話の入り口を増やす
会議前後やランチ、雑談タイムなど、あえて短い会話の場を作ることで、現場の「今」が共有されやすくなります。管理職が「最近どう?」と一言声をかけるだけで、小さな変化や悩みに早期に気づけます。
「会話のきっかけ」を意識的に仕込むことが大切です。
やりたいをカタチにできる環境
実際に、週次面談や1on1の頻度を上げた会社では、従業員から「自分の話を聞いてくれる」「チャレンジしたいことを任せてもらえる」という実感が増え、定着率や満足度が向上した例もあります。
日常的な会話や面談の量が多いほど、働く人の本音や成長サインをキャッチでき、組織全体の強さにつながります。
会話と向き合いの習慣が長期定着のカギ
共感や理念だけでなく、日々の会話や面談を重ね、従業員一人ひとりの想いや成長に寄り添うことが離職防止の最短ルートです。質を気にせず、まずは会話量と観察量を増やす習慣を組織全体で作ることで、長期定着・組織活性化が実現します。
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深澤 了 Ryo Fukasawa
むすび株式会社 代表取締役
ブランディング・ディレクター/クリエイティブ・ディレクター
2002年早稲田大学商学部卒業後、山梨日日新聞社・山梨放送グループ入社。広告代理店アドブレーン社制作局配属。CMプランナー/コピーライターとしてテレビ・ラジオのCM制作を年間数百本行う。2006年パラドックス・クリエイティブ(現パラドックス)へ転職。企業、商品、採用領域のブランドの基礎固めから、VI、ネーミング、スローガン開発や広告制作まで一気通貫して行う。採用領域だけでこれまで1000社以上に関わる。2015年早稲田大学ビジネススクール修了(MBA)。同年むすび設立。地域ブランディングプロジェクト「まちいく事業」を立ち上げ、山梨県富士川町で開発した「甲州富士川・本菱・純米大吟醸」はロンドン、フランス、ミラノで6度金賞受賞。制作者としての実績はFCC(福岡コピーライターズクラブ)賞、日本BtoB広告賞金賞、山梨広告賞協会賞など。雑誌・書籍掲載、連載多数。著書は「無名✕中小企業でもほしい人材を獲得できる採用ブランディング」(幻冬舎)、「知名度が低くても“光る人材“が集まる 採用ブランディング完全版」(WAVE出版)。「どんな会社でもできるインナーブランディング」(セルバ出版)。「人が集まる中小企業の経営者が実践しているすごい戦略 採用ブランディング」(WAVE出版)