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2025.11.17

企業の「ファン化」で組織が伸びる

企業の「ファン化」で組織が伸びる

従来の採用や経営では、条件や待遇をアピールすることが中心でした。しかし今、単なる条件ではなく「会社に惚れる」「共感できる」と感じた人材や顧客こそが、組織の成長を支える時代になっています。

本記事では、なぜ「推し」の仕組みを社内外に広げることが会社の成果に直結するのか、その理論と実践ポイントを解説します。

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推しが生まれる会社設計

近年は人材の獲得競争が激しく、ただ条件を提示するだけでは人も顧客も集まりません。そこで、理念や歴史、デザイン、品質、体験価値を総合的に設計し、推しが生まれる「共鳴経済圏」を社内外に築くことが重要です。

三者モデルで設計する「ファン化」の構造

会社(A)は物語・理念・歴史を持ち、従業員(B)はその価値を体現し顧客(C)へ日々接点を持ちます。この三者がそれぞれに共鳴し合うことで、会社には有形(売上・利益)と無形(信頼・働きがい)の両方の成果が生まれます。

単なる売上追求でなく、従業員や顧客の「共感」や「推される体験」を設計することが差別化のポイントとなります。

推される理由を生み出す「5つの要素」

「なぜこの会社が推されるのか?」その理由は一つではありません。人が会社を推す背景には、以下の5つの要素が重なっています。

史・背景

会社が歩んできた物語や転機、創業時の思いが“推される”土台となります。創業ストーリーや困難を乗り越えた体験など、歴史の語りは共感や愛着を生みます。

理念・価値観

どんな理念・価値観を持っているか、どんな未来を目指しているか。採用時点で理念に共感できるかどうかが、入社後の定着や活躍に強く影響します。

デザイン

見た目やデザイン性も無視できません。サービスや商品・職場環境・店舗のデザインまで、「ここが好き」「かっこいい」と思えるポイントが推しの感情を強く後押しします。

品質

提供するサービスや商品自体の品質は、推され続けるための基礎です。高い品質基準が信頼につながります。

体験価値

実際にサービスを体験した時の感動や気分の高まりなど、リアルな体験価値がファンを増やします。体験会やお試し施策は「推したくなる」きっかけになります。

ファン化(共鳴経済)を実践するためのアクション

経済)を実践するためのアクション

共鳴経済の考え方を組織に定着させるには、日々の行動や社内外への工夫が欠かせません。採用現場、従業員育成、顧客との関係、それぞれの場面で「推される理由」を意識的につくっていくことがポイントです。ここでは、社内で実際に取り組める具体的なアクションを紹介します。

採用段階で“推される仕組み”を作る

採用では、条件面だけでなく、会社の理念や価値観を応募者にどう伝えるかが重要です。たとえば、募集要項には必ず企業理念を明記し、「この会社のどこに惹かれたか」を面接で言語化してもらう質問を加えます。

さらに、オンボーディング(入社後の研修)では、実際の仕事と理念が結びつく具体的なシーンを体験できるよう設計します。これにより、最初から共感度の高い採用活動が可能になります。

従業員の“推し度”を高める取り組み

社内では、創業ストーリーや会社の転機となったエピソードを定期的に共有し、全員が自社の歴史を知っている状態を目指します。

また、商品やサービスのデザインや品質、体験価値など、こだわりポイントをまとめて「自社ならではの強み」として再認識することも大切です。

月に一度は、従業員同士で感動体験を共有する場を設け、小さな成功体験やお客様との心温まるエピソードを交換することで、“推される理由”を増やします。

顧客がファンになるための工夫

顧客向けには、商品やサービスの“見た目”やデザインに一層のこだわりを持ち、「思わず応援したくなる瞬間」をつくることが大事です。

体験イベントや短時間のお試しサービスを提供し、品質や価値を実感できる仕掛けを増やしましょう。また、日々の努力や改善のプロセスも積極的に開示し、企業の“裏側”やスタッフの姿勢を見せることで親しみやすさや信頼感が高まります。

全体最適を目指す

組織全体としては、「歴史」「理念」「デザイン」「品質」「体験価値」の5つの要素ごとに現状を見直し、どこが弱いか・どこを補強するべきかを月次で確認することが大切です。

レビュー会議を設け、現場からの意見や改善提案を集めながら、組織全体で“推し回路”を強化していきます。こうしたPDCAサイクルが回ることで、共鳴経済の仕組みが実際の成果につながります。

推される会社づくりが、会社の成長を支える

人が集まり、やりがいを持ち、顧客にも愛される会社には、必ず“推される理由”が設計されています。歴史や理念・デザイン・品質・体験価値が重なった時、「この会社で働きたい」「応援したい」と思う人が増えます。

採用から組織、顧客までを一本の回路でつなぐ共鳴経済の視点は、これからの時代に必要な新しい経営スタイルです。

弊社のインナーブランディング事例はこちらをご確認ください。】

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深澤 了 Ryo Fukasawa
むすび株式会社 代表取締役
ブランディング・ディレクター/クリエイティブ・ディレクター

2002年早稲田大学商学部卒業後、山梨日日新聞社・山梨放送グループ入社。広告代理店アドブレーン社制作局配属。CMプランナー/コピーライターとしてテレビ・ラジオのCM制作を年間数百本行う。2006年パラドックス・クリエイティブ(現パラドックス)へ転職。企業、商品、採用領域のブランドの基礎固めから、VI、ネーミング、スローガン開発や広告制作まで一気通貫して行う。採用領域だけでこれまで1000社以上に関わる。2015年早稲田大学ビジネススクール修了(MBA)。同年むすび設立。地域ブランディングプロジェクト「まちいく事業」を立ち上げ、山梨県富士川町で開発した「甲州富士川・本菱・純米大吟醸」はロンドン、フランス、ミラノで6度金賞受賞。制作者としての実績はFCC(福岡コピーライターズクラブ)賞、日本BtoB広告賞金賞、山梨広告賞協会賞など。雑誌・書籍掲載、連載多数。著書は「無名✕中小企業でもほしい人材を獲得できる採用ブランディング」(幻冬舎)、「知名度が低くても“光る人材“が集まる 採用ブランディング完全版」(WAVE出版)。「どんな会社でもできるインナーブランディング」(セルバ出版)。「人が集まる中小企業の経営者が実践しているすごい戦略 採用ブランディング」(WAVE出版)

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