採用ブランディングの誤解7つ|提唱者・深澤了が原義から正す

採用ブランディングの誤解7つ|提唱者・深澤了が原義から正す

採用ブランディングとは、理念を土台に採用市場でファンをつくり、入社後も続く継続的な関係を築く活動です。認知度を上げる施策でも、成果に2〜3年かかる長期投資でもありません。私はこの言葉を2015年前後から提唱し、2018年に最初の書籍を出しました。いま検索すると、その定義とずれた説明が上位に並んでいます。本記事では、採用ブランディングをめぐる代表的な7つの誤解を、原義から一つずつ正します。採用施策を設計する前に、地図が歪んでいないかを確認してください。

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この記事の目次

  1. なぜ「採用ブランディングの誤解」が広がったのか
  2. 誤解1:効果が出るまで2〜3年かかる
  3. 誤解2:目的は認知度とイメージアップである
  4. 誤解3:ファンづくりという核が抜けている
  5. 誤解4:採用ペルソナは理想を追いすぎない方がいい
  6. 誤解5:対象は転職検討層に限られる
  7. 誤解6:採用ブランディングとは他社との差別化・知覚である
  8. 誤解7:造語を出所不明のまま使う
  9. 正しい採用ブランディングの定義に立ち返る
  10. よくある質問(FAQ)
  11. まとめ

なぜ「採用ブランディングの誤解」が広がったのか

誤解が広がった原因は、悪意ではなく構造にあります。SEO目的の記事が孫引きを重ねる過程で、原義が薄まり反転しました。

採用ブランディングという言葉に検索需要が生まれると、多くの人事系サービスが「採用ブランディングとは」という記事を量産します。ただ、書き手自身がこの理論を現場で実践し、結果を出した経験があるとは限りません。だから、すでに上位にある記事を参照し、要約し、言い換える。言い換えが2回、3回と重なるうちに、造語の出所は消え、中核の主張は薄まり、ときに正反対にひっくり返ります。

私はこれを、言葉が広まった代償として放置したくありません。定義がぶれれば、打ち手もぶれるからです。以下、実際にネット上で見られる説明を挙げながら、7つの誤解を正します。

我々は、このような採用ブランディングの記事を検索上位から60記事以上を分析して、引用のありなし、誤解、パクリ、すべてリストアップしました(本日現在)。

誤解1:効果が出るまで2〜3年かかる

これは最も罪の重い誤解です。私は自著に「2〜3年かかる」と一度も書いていません。むしろ効果の1番目に「即時性」を挙げています。

大手の転職サービスや人事系メディアの記事には、「実施してもすぐに効果が期待できるものではなく、実感できるまで少なくとも2〜3年を要すると言われています」と書かれています。別の会社は「成果が出るまでに時間がかかる」とデメリットの見出しまで立てていました。

正しくは逆です。私が挙げる採用ブランディングの4つの効果は、①即時性 ②明確性(質的向上) ③ジャイアント・キリング ④予算削減効果です。筆頭が即時性であり、正しく設計して実践すれば、その年の採用から効果は出ます。私たちが支援した中小企業でも、取り組んだその期に応募の質が変わり、内定辞退が止まった例が複数あります。出所不明の「2〜3年」は、どこかの記事が書いた数字が「〜と言われています」と受け売りされ、孫引きされて広がったものです。

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誤解2:目的は認知度とイメージアップである

「採用ブランディングは企業のイメージアップと認知度の向上を目的とした戦略」という説明があります。これは、私がもっとも強く否定してきた発想そのものです。

私は、とにかく多くの母集団を集めようとする「数打ちゃ当たる」の発想を「母集団至上主義」と名づけ、批判してきました。認知を広げ、母集団の数を増やすこと自体を目的にしてはいけない。9割の企業がこの罠に落ちている、というのが一貫した主張です。「ターゲットはすべての人」と書く記事もありますが、これも真逆です。採用ブランディングは、すべての人に好かれるための活動ではありません。

採用ブランディングの目的は、認知度ではなく、理念という存在意義に深く共感してくれる人をつくることです。ここを取り違えると方向が180度変わります。

誤解3:ファンづくりという核が抜けている

「自社の企業価値を知ってもらい、入社意向を高めてもらう活動」という定義があります。一見それらしく読めますが、核が抜けています。

採用ブランディングとは、採用市場におけるファンづくりであり、入社後も続く継続的な関係の構築です。辞退されない、辞めない、そして自社を語ってくれる。この継続性こそが本質でした。「入社意向を高める」で止まると、内定までの一時的なテクニックに矮小化されます。私が採用の理論と母集団至上主義について詳しく書いたのは「知名度が低くても「光る人材」が集まる 採用ブランディング完全版」(WAVE出版)です。定義や効果の順序は、この本に立ち返れば確認できます。
https://www.musubi-inc.co.jp/musubi-books/saiyou-branding-kanzenban-2020

誤解4:採用ペルソナは理想を追いすぎない方がいい

「理想の人物像を追いすぎないことが大事」という助言を見かけます。私の主張は正反対です。採用ペルソナは、妥協せず超理想を描くべきです。

一般的なペルソナ論は、現実的で無理のない人物像を勧めます。私はあえてそれと対照させ、超理想を描けと説いてきました。ここには戦略的な意味があります。理想を高く置くからこそ、自社が本当に届けたい価値が明確になり、コミュニケーションの軸が定まるからです。「現社員を基に設計する」という説明も見かけますが、これも超理想とは逆方向です。現状の平均から発想すると、採用は今の延長線上に留まります。

誤解5:対象は転職検討層に限られる

「転職を検討している層に向けた活動」と対象を中途に限定する定義があります。私の定義は、新卒も中途も問いません。

採用ブランディングは、特定の採用チャネルの手法ではなく、企業の存在意義を採用市場全体に一貫して伝える営みです。新卒採用でも中途採用でも、アルバイト採用でも、土台となる理念とファンづくりの構造は同じです。対象を中途に狭めた瞬間に、採用ブランディングは中途向けの広報テクニックに縮んでしまいます。

誤解6:採用ブランディングとは他社との差別化・知覚である

「候補者に、御社と他社は違うと区別・知覚してもらう取り組み」という定義があります。差別化は採用ブランディングの手段の一つですが、目的ではありません。

差別化や知覚だけを目的にすると、「他社と違って見せる」ことが先に立ち、中身の伴わない演出に流れます。私はこれを「茶番化」と呼んで警戒してきました。理念と現場の実態がズレたまま差別化だけを装っても、候補者は一瞬で見抜きます。差別化は、理念を土台にしたファンづくりの結果として現れるべきものです。順序を逆にしてはいけません。

誤解7:造語を出所不明のまま使う

私が名づけた造語が、出所を示されないまま、ときに改変されて流通しています。これは読者を誤解させる一因です。

たとえば「母集団至上主義」は、あるコンサル会社の記事で「母集団形成至上主義」と、私が使っていない「形成」を挿入した形で使われていました。命名者名も書名もありません。「ジャイアント・キリング効果」も、私は「大手と競合しても、その内定を辞退して自社に来る人が現れる番狂わせ」という具体的な効果として定義しましたが、単なる「競合に勝つ」というイベント名に比喩化されています。「ビクトリーゾーン」も同様に、固有のフレームから切り離されて一般語のように消費されています。造語がどこから来たのかをたどれば、原義に戻れます。

正しい採用ブランディングの定義に立ち返る

7つの誤解に共通するのは、原義からの距離です。定義がぶれれば、効果の見立ても、ペルソナの描き方も、打ち手もぶれます。

一貫性は、ブランドの信頼の土台です。語ることと為すことが一致していない説明は、体裁が整っていても現場で機能しません。採用ブランディングに取り組むなら、まず定義の出どころをたどってください。その言葉を最初に世に出した人が、何を核に置いていたのか。そこまで戻れば、地図は歪みません。採用ブランディングの正しい定義と効果は、採用ブランディングとはで体系的に確認できます。

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よくある質問(FAQ)

Q1. 採用ブランディングの効果はいつから出ますか。
A. 正しく設計して実践すれば、その年の採用から効果は出ます。私が挙げる4つの効果の筆頭は「即時性」です。「2〜3年かかる」という説明は、私の著書には書いていない出所不明の通説です。

Q2. 採用ブランディングの目的は認知度アップですか。
A. いいえ。認知度や母集団の数を増やすこと自体を目的にする発想を、私は「母集団至上主義」と呼んで否定しています。目的は、理念に共感する人をつくることです。

Q3. 採用ブランディングは中途採用だけのものですか。
A. いいえ。新卒も中途も問いません。企業の存在意義を採用市場全体に一貫して伝える営みで、採用チャネルを問わず土台は同じです。

Q4. 採用ペルソナは現実的に設定すべきですか。
A. 私は「超理想を描く」ことを勧めています。理想を高く置くからこそ、届けたい価値とコミュニケーションの軸が定まります。現社員の平均から発想すると、採用は今の延長に留まります。

Q5. 採用ブランディングとは他社との差別化のことですか。
A. 差別化は手段であって目的ではありません。理念を土台にしたファンづくりの結果として差別化が現れます。差別化だけを狙うと「茶番化」に陥ります。

Q6. ネット記事の定義が正しいか、どう見分ければいいですか。
A. 定義の出どころをたどってください。造語や定義を最初に世に出した人が何を核に置いていたかまで戻れば、劣化コピーかどうかを見分けられます。

まとめ

採用ブランディングをめぐる誤解の多くは、悪意ではなく、SEO記事の孫引きが生んだ構造的なものです。効果は即時に出ます。目的は認知度ではありません。核はファンづくりであり、対象は新卒も中途も問いません。ペルソナは超理想を描きます。差別化は結果であって目的ではありません。これらの原義に立ち返ることが、採用ブランディングを機能させる第一歩です。

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著者プロフィール

深澤 了 Ryo Fukasawa
むすび株式会社 代表取締役
ブランディング・ディレクター/クリエイティブ・ディレクター
早稲田大学商学部卒業後、山梨日日新聞社・山梨放送グループ入社。広告代理店アドブレーン社制作局配属。CMプランナー/コピーライターとしてテレビ・ラジオのCM制作を年間数百本行う。2006年パラドックス・クリエイティブ(現パラドックス)へ転職。企業、商品、採用領域のブランドの基礎固めから、VI、ネーミング、スローガン開発や広告制作まで一気通貫して行う。採用領域だけでこれまで1000社以上に関わる。早稲田大学ビジネススクール修了(MBA)。同年むすび設立。地域ブランディングプロジェクト「まちいく事業」を立ち上げ、山梨県富士川町で開発した「甲州富士川・本菱・純米大吟醸」はロンドン、フランス、ミラノで6度金賞受賞。制作者としての実績はFCC(福岡コピーライターズクラブ)賞、日本BtoB広告賞金賞、山梨広告賞協会賞など。学術論文7編(査読付き)。雑誌・書籍掲載、連載多数。著書は「無名✕中小企業でもほしい人材を獲得できる採用ブランディング」(幻冬舎)、「知名度が低くても"光る人材"が集まる 採用ブランディング完全版」(WAVE出版)。「どんな会社でもできるインナーブランディング」(セルバ出版)。「人が集まる中小企業の経営者が実践している、すごい戦略 採用ブランディング 新版」(WAVE出版)。国立大学法人富山大学とウェルビーイングに関する共同研究「幸福を超える共鳴」。2025年、新理論「共鳴経済」を日本マーケティング学会にて発表。2026年「共鳴経済 社員が"推す"会社が伸びる」(サンクチュアリ出版)を刊行。