
現代の働き方を考えるうえで、「ライスワークからライフワークへ」という価値観の転換は重要だと考えます。かつての資本主義社会、特に産業革命以降の経済モデルでは、働くことは「食べていくための手段」と位置づけられ、労働者は歯車の一部と見なされてきました。
しかし今、人口減少や価値観の多様化、人生100年時代といった社会背景の中で、単なる「労働」ではなく「自己実現」「やりがい」「人生の一部」として仕事を捉える動きが強まっています。
今回は、現代の働き方から考えられる組織力向上のヒントをお伝えします。
なお、共鳴経済については、以下の記事をお読みください。
産業革命後の社会構造と現代の課題
18世紀後半、ヨーロッパで始まった産業革命によって、労働の多くは機械化・工業化されていきました。経営者は資本と工場を持ち、労働者は与えられた作業をこなす存在として、効率と大量生産を追い求める社会が生まれました。人口増加と市場拡大のなか、企業は人を使う側として圧倒的な力を持っていました。
しかし、現代の日本をはじめとする先進国では状況が一変しています。人口は減り、市場の拡大も望めなくなり、人手不足が深刻化しています。「人がいなければ生産できない」「せっかく育ててもすぐ辞めてしまう」といった企業側の苦悩が表面化しています。
この構造変化は、企業が一方的に使う時代の終わりを意味しています。
「ライスワーク」から「ライフワーク」への転換
今、問われているのは「なぜ働くのか?」という根本的な動機です。ただ生活のために働くライスワークでは、長期的にモチベーションを保つことは困難です。月曜日が憂鬱で、仕事は義務でしかない。そんな状況を脱し、「自分の人生に意味を与える仕事=ライフワーク」へとシフトする人が増えています。
この転換には、会社と従業員の双方が「好きになる努力」をすることが不可欠です。たとえば、会社は社員の意欲や挑戦を後押しする文化をつくり、個人は自分のやりたいことや得意なことに目を向けて挑戦を続ける。この両輪が回って初めて、組織も個人も持続的に成長できる環境が生まれます。
共鳴によって生まれるウェルビーイング
「共鳴」とは、会社の理念や価値観と、従業員一人ひとりの想いや生き方が響き合う状態を指します。この共鳴が起きると、働く人は「自分はこの会社に必要とされている」「会社の目指す方向と自分の価値観が重なっている」と実感しやすくなります。
実際、理念やビジョンに共感して入社した人は、会社への愛着や誇りを持ちやすく、日々の業務でも主体性や創造性を発揮しやすい傾向にあります。
このようなウェルビーイングは、年収や休みといった衛生要因とは異なり、「働きがい」という動機付け要因によってもたらされるものです。年収や休日は、足りないと不満の原因になりますが、それ自体が“やる気”や“幸福”に直結するわけではありません。
一方で、やりがいや自己成長の実感、職場での共鳴体験は、心から「この会社で働いてよかった」と思える幸福感を育みます。
共鳴経営がつくる「辞めない・育つ組織」

現場で“共鳴”が起きると、離職率は大幅に下がります。なぜなら、人は「自分が役立っている」「ここにいて意味がある」と思える環境では、自然とやる気や挑戦意欲が高まり、多少の困難も乗り越えようとするからです。
また、こうした職場では、社員同士が互いの成長や成果を認め合う文化が育ち、チームワークや創造性も向上します。
たとえば、理念を共有するミーティングや、日々の小さな成功体験・感動体験を全員で分かち合う「感動共有会」を設けることで、組織の一体感は格段に高まります。これは単なる“働きやすさ”だけでなく、“働きがい”を実感できる仕掛けとして、今後の組織運営に不可欠な要素となっていくでしょう。
ライフワーク化がもたらす好循環
仕事がライフワーク化すると、社員は自分の成長や達成感を追い求めるようになり、会社のビジョン実現に主体的に関わるようになります。この流れは個人のウェルビーイングを支えるだけでなく、結果的に会社の生産性向上やイノベーション創出、ブランド価値の向上にも直結します。
さらに、好きな仕事を通じて得た経験やノウハウを社内外で発信することで、会社の魅力やファンも自然に増えていきます。
共鳴経済圏には、積極的な人が集まる
もはや、働く理由は「生活のため」だけではありません。会社も働く人も「好きになる努力」を重ね、やりがいや幸福感のある職場づくりを目指すことが、これからの企業と従業員の持続的成長を支える最大の条件となるのです。
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深澤 了 Ryo Fukasawa
むすび株式会社 代表取締役
ブランディング・ディレクター/クリエイティブ・ディレクター
2002年早稲田大学商学部卒業後、山梨日日新聞社・山梨放送グループ入社。広告代理店アドブレーン社制作局配属。CMプランナー/コピーライターとしてテレビ・ラジオのCM制作を年間数百本行う。2006年パラドックス・クリエイティブ(現パラドックス)へ転職。企業、商品、採用領域のブランドの基礎固めから、VI、ネーミング、スローガン開発や広告制作まで一気通貫して行う。採用領域だけでこれまで1000社以上に関わる。2015年早稲田大学ビジネススクール修了(MBA)。同年むすび設立。地域ブランディングプロジェクト「まちいく事業」を立ち上げ、山梨県富士川町で開発した「甲州富士川・本菱・純米大吟醸」はロンドン、フランス、ミラノで6度金賞受賞。制作者としての実績はFCC(福岡コピーライターズクラブ)賞、日本BtoB広告賞金賞、山梨広告賞協会賞など。雑誌・書籍掲載、連載多数。著書は「無名✕中小企業でもほしい人材を獲得できる採用ブランディング」(幻冬舎)、「知名度が低くても“光る人材“が集まる 採用ブランディング完全版」(WAVE出版)。「どんな会社でもできるインナーブランディング」(セルバ出版)。「人が集まる中小企業の経営者が実践しているすごい戦略 採用ブランディング」(WAVE出版)

