
近年、採用市場で苦戦している企業の多くが「条件で勝負」だけでは人が集まらないと感じます。特に中小企業やベンチャーでは、大手と同じ待遇や福利厚生を用意するのが難しい場合もあります。
そんなとき、応募者を惹きつけ、会社のファンを増やす武器となるのが「会社の物語」です。物語は、給与や休日といった条件以上に、人の心を動かす強力な要素となります。
採用で人が集まる会社の共通点は「物語力」
「どんな人が集まる会社か」という問いに対し、答えの一つが「物語を発信できる会社」です。採用で応募者を集めるには、ただ条件を伝えるだけでなく、会社が大切にしている考え方や、どんな歴史・未来があるかを物語として発信することが大切です。
会社の価値観や文化、目指す未来を具体的なエピソードやストーリーで伝えることで、共感や応募動機を強く生み出せます。
条件だけでは心は動かない
多くの求人票や募集広告は、給与・休日・福利厚生などの条件を中心に作られています。これらは応募のきっかけにはなりますが、それだけでは本気で「ここで働きたい」と思わせる決め手にはなりません。
人が本当に心を動かされるのは、会社や経営者の持つ物語や、未来へのストーリーに共感したときです。
人は本能的に「物語」に惹かれる
古代の神話や伝承、映画や小説と同じように、人は物語を通じて共感し、行動する生き物です。採用の場面でも、「どんな背景でこの会社が生まれたのか」「どんな未来を描いているのか」といったストーリーに触れたとき、応募者の心が動きやすくなります。
経営者の物語は最強の採用コンテンツ
採用活動において、経営者自身の物語ほど強いコンテンツはありません。創業時のエピソードや苦労、乗り越えた壁、これから目指す未来について、経営者の生の声で語ることが、応募者にとっては唯一無二の会社として印象に残ります。
経営者が自身の言葉で話すことが、条件やスペック以上に共感を生むポイントです。
経営者自身の想いを言葉で伝える
「なぜこの会社を立ち上げたのか」「どんな困難を乗り越えてきたのか」「どんな未来を一緒に実現したいのか」。経営者が自らの経験や想いを自分の言葉で語ることで、応募者は会社の本質に触れることができます。
数字や条件より、経営者自身のストーリーは強い説得力を持ちます。
実体験から生まれる共感の力
採用面接や会社説明会で経営者が自身の物語を語ると、候補者の表情や態度が大きく変わる場面がよくあります。理念や経営戦略の説明よりも、リアルな体験や苦労話のほうが応募者の共感を呼びやすいからです。物語は人の心を直接動かす力があります。
社員のストーリーが企業文化を伝える

経営者だけでなく、社員一人ひとりの物語もまた、応募者に響く大きな要素です。現場で働く社員がどのように成長し、どんな経験を積んでいるか、実際の体験談を通じて伝えることで、企業の文化や働き方のリアルを伝えられます。
公式な会社紹介だけでは伝わらない雰囲気や価値観が、社員のストーリーを通じて応募者に届きます。
社員のリアルな声が働く未来を見せる
経営者だけでなく、社員一人ひとりのストーリーも強い採用メッセージになります。
たとえば「未経験から成長できた」「理念に共感して入社した」「困難を仲間と乗り越えた」などの体験談は、応募者に「自分もこうなれるかも」というイメージを与えます。
組織文化を物語で伝えるメリット
社員のリアルな声や体験を伝えることで、組織文化や働き方の現実を候補者に届けることができます。公式な説明だけでなく、現場でのリアルなストーリーがあることで、応募者の不安や疑問を解消し、「ここで働きたい」という気持ちを後押しします。
物語で勝負する会社が選ばれる理由
ストーリーを伝える採用活動には、「条件競争に巻き込まれず、ファン化した人材を集めやすい」という明確なメリットがあります。物語によって他社との差別化ができ、数字では語れない共感ややりがいで応募者の心をつかめるようになります。
採用だけでなく、入社後の定着や活躍にも好影響をもたらします。
条件競争から脱却し、ファンを増やす
条件だけで人を集めようとすると、他社との比較や条件変更で応募者が簡単に離れてしまいます。しかし、物語で応募者の心を動かした会社は、模倣されにくく、強いファンを生みやすくなります。
「この会社で働きたい」「この仲間と一緒に未来をつくりたい」と思わせる力が、物語にはあります。
採用は条件より物語で決まる
これからの採用では、条件だけでなく「物語」にどれだけ力を入れられるかが勝負の分かれ目になります。経営者や社員のリアルなストーリーが、応募者の共感を呼び、会社のファンを生み出します。
「ここで働きたい」と感じてもらえる企業づくりには、物語を軸にした採用ブランディングが不可欠です。自社の強みや価値観を、物語として丁寧に伝えていきましょう。
【弊社のインナーブランディング事例はこちらをご確認ください。】

深澤 了 Ryo Fukasawa
むすび株式会社 代表取締役
ブランディング・ディレクター/クリエイティブ・ディレクター
2002年早稲田大学商学部卒業後、山梨日日新聞社・山梨放送グループ入社。広告代理店アドブレーン社制作局配属。CMプランナー/コピーライターとしてテレビ・ラジオのCM制作を年間数百本行う。2006年パラドックス・クリエイティブ(現パラドックス)へ転職。企業、商品、採用領域のブランドの基礎固めから、VI、ネーミング、スローガン開発や広告制作まで一気通貫して行う。採用領域だけでこれまで1000社以上に関わる。2015年早稲田大学ビジネススクール修了(MBA)。同年むすび設立。地域ブランディングプロジェクト「まちいく事業」を立ち上げ、山梨県富士川町で開発した「甲州富士川・本菱・純米大吟醸」はロンドン、フランス、ミラノで6度金賞受賞。制作者としての実績はFCC(福岡コピーライターズクラブ)賞、日本BtoB広告賞金賞、山梨広告賞協会賞など。雑誌・書籍掲載、連載多数。著書は「無名✕中小企業でもほしい人材を獲得できる採用ブランディング」(幻冬舎)、「知名度が低くても“光る人材“が集まる 採用ブランディング完全版」(WAVE出版)。「どんな会社でもできるインナーブランディング」(セルバ出版)。「人が集まる中小企業の経営者が実践しているすごい戦略 採用ブランディング」(WAVE出版)

