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レポート

2025.11.07

インナーブランディングのKPI設定はどこにおくべきか?

インナーブランディングの効果を高めるには、何を基準に進捗や成果を測るかを事前に決めておくことが欠かせません。理念やビジョンを「どれだけ現場に根付かせるか」を明確にするため、KPI(重要業績評価指標)の設計が必要になります。

KPIをしっかり設定すれば、取り組みが形だけで終わることを防ぎ、組織全体の動きや成果に結びつけやすくなります。

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KPI設定の流れ

まず最初に行うべきは、「社内・社外で何をするか」を具体的にリストアップすることです。たとえば、社内向けには「全社員向けの理念ワークショップ開催」「部署別でVMV(ビジョン・ミッション・バリュー)共有ミーティング実施」など、社外向けには「理念を発信するコンテンツ公開」などが考えられます。

こうしたタスクごとに「誰が・いつまでに・何をどこまでやるか」を細かく設定し、進捗管理をKPI化します。タスクが計画どおり実行されているか、期日通りに進んでいるかを定期的にチェックすることで、やりっぱなしや後回しを防げます。

タスクKPIの運用と現場の巻き込み

タスクレベルのKPIは、プロジェクトメンバーや現場のキーパーソンを早期から巻き込んで進めることが重要です。「誰が担当か」「どの部署が関わるか」を明確にし、社長や幹部からも全社的な優先事項であることをメッセージとして伝えてもらうと、現場の温度感が大きく変わります。

プロジェクト会議や進捗共有のミーティングでは、進んでいる箇所・遅れている箇所をオープンにし、部署横断で課題や成功事例を共有できる場を作ると、KPIが現場に根付きやすくなります。

浸透度・行動変化を“数値”で追うKPI

インナーブランディングの本質は、理念や価値観が「どれだけ覚えられ、語られ、現場の行動として根付いているか」にあります。

  • 「理念やVMVを正確に覚えている社員の割合を、〇月までに〇%にする」
  • 「自分の言葉で説明できる社員を〇%に増やす」

といったように、「いつまでに、どれだけの人ができるか」を具体的な数値目標で設定します。これを浸透度調査やアンケート、ヒアリングを通じて定期的に確認することで、現場でどれだけ言葉が使われているか、行動変化が出ているかを把握できます。

調査KPIで見えてくるギャップ

アンケートの結果、「覚えている」と答えた割合が高くても、「実際に現場で使っている」「自分の言葉で語れる」といった項目でスコアが低い場合は、形骸化や表面だけになっているリスクが見えてきます。

そうしたギャップが出た場合は、追加ワークショップや現場対話の場を増やす、管理職研修で実践の促進策を練るなど、現場の実態に合わせた施策変更が重要です。

KPI進捗と調査のポイント

数値目標を設定したら、それを「本当に現場で達成できているか?」を継続してチェックします。単に「覚えたか」だけでなく、「実際に現場で使えているか」「自分の言葉で語れているか」など、行動面も追うようにします。達成度にギャップがある場合は、原因をヒアリングして、内容や進め方の改善に繋げます。

また、「調査KPI」自体が形骸化しないよう、現場の声やエピソードを拾いながら、定性的な成果もあわせて確認します。

行動と利益につながるKPI

インナーブランディングのKPIは、単に「理念を覚える」だけで終わりません。最終的な目的は、社員の意識や行動が変化し、それが売上や利益の向上につながることです。たとえば、「お客様志向」という理念がしっかり現場で実践されることで、顧客満足度やリピート率が上がり、プラスアルファの成果が出やすくなります。

逆に、表面だけ理念を唱えていても、現場でお客様に不満をぶつけるような風土では、成果は伴いません。KPIは「行動が理念に即しているか」「具体的な成果や変化が見えるか」まで追うことで、本当に意味のあるインナーブランディングが実現します。

理念と業績をつなぐ運用の工夫

現場で「理念を行動に落とし込むと、なぜ業績や働きやすさが上がるのか」を、事例や数値で可視化することも大切です。たとえば、「理念に沿った対応を増やした結果、クレームが減り、リピート注文が増えた」「現場の小さな気づきを理念と結びつけて業務改善が進んだ」など、数値とストーリーの両面で成果を見せることが、現場の納得感と次のアクションに直結します。

KPIで現場の変化を見える化

インナーブランディングのKPIは、「やること」「できたこと」「現場での行動変化と成果」をセットで設計し、数字と現場感の両面で振り返るのがポイントです。定期的な進捗確認と改善を重ねることで、組織全体の理念浸透とパフォーマンス向上に直結します。

KPIを活かして、形だけで終わらない意味のあるインナーブランディングを目指しましょう。

弊社のインナーブランディング事例はこちらをご確認ください。】

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深澤 了 Ryo Fukasawa
むすび株式会社 代表取締役
ブランディング・ディレクター/クリエイティブ・ディレクター

2002年早稲田大学商学部卒業後、山梨日日新聞社・山梨放送グループ入社。広告代理店アドブレーン社制作局配属。CMプランナー/コピーライターとしてテレビ・ラジオのCM制作を年間数百本行う。2006年パラドックス・クリエイティブ(現パラドックス)へ転職。企業、商品、採用領域のブランドの基礎固めから、VI、ネーミング、スローガン開発や広告制作まで一気通貫して行う。採用領域だけでこれまで1000社以上に関わる。2015年早稲田大学ビジネススクール修了(MBA)。同年むすび設立。地域ブランディングプロジェクト「まちいく事業」を立ち上げ、山梨県富士川町で開発した「甲州富士川・本菱・純米大吟醸」はロンドン、フランス、ミラノで6度金賞受賞。制作者としての実績はFCC(福岡コピーライターズクラブ)賞、日本BtoB広告賞金賞、山梨広告賞協会賞など。雑誌・書籍掲載、連載多数。著書は「無名✕中小企業でもほしい人材を獲得できる採用ブランディング」(幻冬舎)、「知名度が低くても“光る人材“が集まる 採用ブランディング完全版」(WAVE出版)。「どんな会社でもできるインナーブランディング」(セルバ出版)。「人が集まる中小企業の経営者が実践しているすごい戦略 採用ブランディング」(WAVE出版)

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