
熱心なファンや応援者が自然と増える企業には、必ず明確な理由があります。ただ商品やサービスが良いだけでは長く愛されるブランドにはなりません。
本記事では、どんな業界や業種でも熱烈なファンを生みやすい共通の「5つの要素」に注目し、それぞれがなぜ重要なのか、現場や採用の工夫にどう活かせるのかを解説します。
ファンづくりのために欠かせない5つの要素
どんなに商品やサービスがよくても、ファンが自然と集まる会社やブランドには共通した理由があります。以下の5つの要素を満たすことで、「推される存在」になる確率が高まります。
考え方(理念やスタンス)
ファンは、その会社や人が持つ「考え方」「理念」「スタンス」に共感します。単なるスローガンではなく、どんな価値観で行動し、何を大切にしているのか。考え方に一貫性があると、共感が生まれやすくなります。
例えば、企業が社会課題にどう向き合っているか、環境問題へのスタンスをどう表明しているかといった点は、今や消費者・求職者双方に強く問われています。現場でも理念が具体的な行動基準として活かされているかどうかが、「口だけ」だと見抜かれやすい時代です。
歴史・ストーリー
これまでの歩みやストーリーも大きな魅力です。どんな苦労や挑戦があり、どんな道のりを経て今があるのか。企業なら創業ストーリーや商品開発の裏話、個人なら生い立ちや活動の歴史など、具体的なエピソードが親近感につながります。
例えば「創業家の想い」「倒産危機からの再生」「社員と共につくった新商品」などは、多くの人の心に残ります。ストーリーが曖昧だったり、過去を美化しすぎて現実感がないと、逆に距離を感じさせてしまうので注意が必要です。
品質・パフォーマンス
商品やサービスそのものの品質、パフォーマンス、接客や技術の高さも大切です。ファンは「ここの製品なら間違いない」「あの人の歌は本当に上手い」と感じるポイントに引き寄せられます。中身のクオリティが信頼の基礎です。
たとえば飲食店なら「食材の産地や調理法」、メーカーなら「検品やアフターサービス」、教育サービスなら「講師の経験やサポート体制」といった本質的な強みが問われます。ここを手抜きすると、ファンはすぐに離れてしまうことも現実です。
体験価値
実際に使ってみたり、イベントやライブ、店舗に行って感じた体験もファン化に直結します。企業なら現地見学やインターンシップ、製品体験など。リアルな場でのポジティブな経験が「もっと応援したい」という気持ちを強くします。
採用活動でも「説明会だけ」ではなく、職場体験や社員座談会などリアルな接点をつくることが重要です。体験の質が高ければ、SNSや口コミでも好意的に広がりやすくなります。逆に期待値と実体験にギャップがあると、企業やブランドの信頼失墜にもつながります。
デザイン・見た目
デザインや見た目の良さも、ファンを惹きつける要素です。商品や店舗のデザイン、Webサイトの見やすさ、従業員のユニフォームやパンフレットの雰囲気など、見た目の印象が良いと応援したくなります。
5つを「企業活動」や「採用活動」に応用する
5つの要素は、企業がお客様や従業員、求職者にファンになってもらうためのヒントになります。単なる売上アップや人集めのためだけでなく、「長く応援される」「本気で働きたくなる」会社づくりの基本となります。
従業員・求職者にとっての体験価値
従業員には働きやすさ、求職者にはインターンや体験会が「体験価値」にあたります。実際の職場環境や現場を知ることで納得しやすくなり、定着やエンゲージメントの向上につながります。
例えば入社前に現場の雰囲気を体感できる工夫や、内定者懇親会、現場社員と直接話せる機会があると、安心して新しい一歩を踏み出せます。現場の「リアルな声」を伝えることで、会社の本気度も伝わります。
企業が5つの要素を届ける方法
理念や考え方は社内外へ発信し、歴史やストーリーは採用ページやオウンドメディアで伝える。品質は商品やサービスそのもの、体験価値はお客様・従業員・求職者全てに向けて工夫でき、デザイン面も随所で見直し可能です。
たとえばリニューアルしたパンフレットやWebサイト、現場のストーリー動画、職場体験プログラムなど、5つの視点を全体に意識することで、自然とファンが増えやすくなります。
5つの要素が応援される会社をつくる
ファンが生まれる会社・ブランドには、「考え方」「歴史」「品質」「体験」「デザイン」の5つが共通して備わっています。これはBtoCでもBtoBでも、人材採用でも同じです。5つを実践することで、お客様にも働く人にも選ばれやすくなり、企業としての成長や安定にもつながります。
会社がこれらを意識して活動を続ければ、自然と応援者や仲間が増えていきます。
【弊社のインナーブランディング事例はこちらをご確認ください。】

深澤 了 Ryo Fukasawa
むすび株式会社 代表取締役
ブランディング・ディレクター/クリエイティブ・ディレクター
2002年早稲田大学商学部卒業後、山梨日日新聞社・山梨放送グループ入社。広告代理店アドブレーン社制作局配属。CMプランナー/コピーライターとしてテレビ・ラジオのCM制作を年間数百本行う。2006年パラドックス・クリエイティブ(現パラドックス)へ転職。企業、商品、採用領域のブランドの基礎固めから、VI、ネーミング、スローガン開発や広告制作まで一気通貫して行う。採用領域だけでこれまで1000社以上に関わる。2015年早稲田大学ビジネススクール修了(MBA)。同年むすび設立。地域ブランディングプロジェクト「まちいく事業」を立ち上げ、山梨県富士川町で開発した「甲州富士川・本菱・純米大吟醸」はロンドン、フランス、ミラノで6度金賞受賞。制作者としての実績はFCC(福岡コピーライターズクラブ)賞、日本BtoB広告賞金賞、山梨広告賞協会賞など。雑誌・書籍掲載、連載多数。著書は「無名✕中小企業でもほしい人材を獲得できる採用ブランディング」(幻冬舎)、「知名度が低くても“光る人材“が集まる 採用ブランディング完全版」(WAVE出版)。「どんな会社でもできるインナーブランディング」(セルバ出版)。「人が集まる中小企業の経営者が実践しているすごい戦略 採用ブランディング」(WAVE出版)