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レポート

2026.03.02

社員のウェルビーイングは「共鳴」にある

企業がインナーブランディングや組織づくりを考えるとき、多くの場合「理念を作る」「制度を整える」「給与を上げる」といった施策に目が向きがちです。しかし、本当に社員の働きがいや精神的な豊かさにつながる要素はどこにあるのでしょうか。

当社では、仕事におけるウェルビーイング(精神的豊かさ)を生み出す要因について分析を行いました。その結果、企業がこれまで重視してきたものとは少し異なる要素が、従業員の働きがいに大きく関係していることが見えてきました。

本記事では、その調査結果をもとに、企業が組織づくりやインナーブランディングを考える上で重要になるポイントを整理します。

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ウェルビーイングは「共鳴」「重なり」「仕事満足」で生まれる

調査の分析から見えてきたのは、ウェルビーイングは単一の要素で生まれるものではないということです。

従業員の精神的な豊かさは

・現在所属している組織への共鳴
・人生の目的と会社の方向性の重なり
・仕事そのものへの満足

といった要素が組み合わさることで生まれやすくなることが分かりました。つまり、給与や制度といった条件面だけでは、従業員のウェルビーイングは十分に高まらないということです。

企業と従業員の関係性の中で、「共鳴」や「重なり」が生まれているかどうかが重要になります。

年収とウェルビーイングは必ずしも比例しない

今回の分析では、年収とウェルビーイングの関係についても調査を行いました。その結果、年収と精神的豊かさの間には明確な相関は見られず、むしろ逆の傾向が見える部分もありました。

これは、給与が重要ではないという意味ではありません。給与は不満を減らす要素ではありますが、それだけで働きがいや精神的な満足を高めることは難しいということです。

企業が「賃上げ」を中心に人材確保を考える傾向は強まっていますが、それだけでは採用難や人材定着の問題を根本的に解決することはできません。

人生の使命を見つける鍵は「内省時間」

調査の中で特に興味深かったのは、「人生で成し遂げたい役割や使命」と仕事の関係です。分析の結果、従業員が自分の人生の使命を見つけやすくなる要因として、次の三つが重要であることが分かりました。

・現在所属している組織への共鳴
・自分自身と向き合う内省の時間
・人生の目的と会社の方向性の重なり

この三つが重なったとき、人は自分の役割や使命を見出しやすくなります。

特に見落とされがちなのが「内省時間」です。忙しい業務の中では、自分の仕事や人生を振り返る時間を持つことは簡単ではありません。しかし、企業がこの時間を意図的に生み出すことは、従業員の働きがいに大きく影響します。

企業の歴史やストーリーが共鳴を生む

人生の目的と会社の方向性が重なるためには、何が必要なのでしょうか。分析結果から見えてきたのは、「企業の歴史やストーリーへの愛着」が大きな要素であるということです。また、理念に納得しているかどうかも重要な要素でした。

つまり、企業の歴史や成り立ち、価値観といったストーリーが共有されているほど、従業員は会社との重なりを感じやすくなります。これはインナーブランディングの本質とも言えます。理念やビジョンを作ること自体よりも、それが社員の中で「意味を持つ物語」として理解されているかどうかが重要になります。

採用難を乗り越える鍵は賃上げではなく共鳴

現在、多くの企業が採用難に直面しています。その中で、給与水準を引き上げる競争も激しくなっています。

しかし今回の調査結果を見ると、企業が本当に向き合うべき課題は別のところにあります。ブランド論では、顧客とブランドの間に強い結びつきが生まれている状態を「共鳴」と呼びます。この考え方は、従業員と企業の関係にも当てはまります。

企業に対して共鳴している状態の従業員は、単に働いているだけではなく、主体的に関わり、組織の一員として行動します。採用難を乗り越えるために必要なのは、賃上げ競争ではなく、こうした共鳴状態をいかにつくるかという視点です。

企業が取り組むべき組織づくりとは

今回の調査から見えてきたのは、企業が従業員のウェルビーイングを高めるためには、次のような視点が重要だということです。

・企業への共鳴を生む組織づくり
・人生の目的と会社の方向性の重なりをつくる
・仕事そのものへの満足度を高める
・内省する時間をつくる
・企業の歴史やストーリーへの愛着を育てる

これらは単独の施策では実現できません。理念、ストーリー、組織文化、仕事の意味づけといった要素を組み合わせて設計していく必要があります。

当社では、採用ブランディングやインナーブランディングの支援を行う中で、この「共鳴」を中心とした組織づくりの重要性を強く感じています。

企業の理念やストーリーが社員に伝わり、社員自身の人生の目的と重なり、仕事に意味を見出せるようになる。その状態をつくることこそが、企業の持続的な成長につながると私たちは考えています。

なお、年収とウェルビーイングに関する調査報告書2026については、以下のページからダウンロードできます。

年収とウェルビーイングに関する調査報告書2026

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深澤 了 Ryo Fukasawa
むすび株式会社 代表取締役
ブランディング・ディレクター/クリエイティブ・ディレクター

早稲田大学商学部卒業後、山梨日日新聞社・山梨放送グループ入社。広告代理店アドブレーン社制作局配属。CMプランナー/コピーライターとしてテレビ・ラジオのCM制作を年間数百本行う。2006年パラドックス・クリエイティブ(現パラドックス)へ転職。企業、商品、採用領域のブランドの基礎固めから、VI、ネーミング、スローガン開発や広告制作まで一気通貫して行う。採用領域だけでこれまで1000社以上に関わる。早稲田大学ビジネススクール修了(MBA)。同年むすび設立。地域ブランディングプロジェクト「まちいく事業」を立ち上げ、山梨県富士川町で開発した「甲州富士川・本菱・純米大吟醸」はロンドン、フランス、ミラノで6度金賞受賞。制作者としての実績はFCC(福岡コピーライターズクラブ)賞、日本BtoB広告賞金賞、山梨広告賞協会賞など。学術論文7編(査読付き)。雑誌・書籍掲載、連載多数。著書は「無名✕中小企業でもほしい人材を獲得できる採用ブランディング」(幻冬舎)、「知名度が低くても“光る人材“が集まる 採用ブランディング完全版」(WAVE出版)。「どんな会社でもできるインナーブランディング」(セルバ出版)。「人が集まる中小企業の経営者が実践しているすごい戦略 採用ブランディング」(WAVE出版)。国立大学法人富山大学とウェルビーイングに関する共同研究「幸福を超える共鳴」。2025年、新理論「共鳴経済」を日本マーケティング学会にて発

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