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レポート

2026.02.23

採用で重視される「ウェルビーイング」の本質とは?

ウェルビーイング

採用が難しくなるほど、企業は賃上げに目を向けます。もちろん給与は大事です。ただ、現場を見ていると、賃上げだけで採用が安定する会社は多くありません。むしろ、条件を上げても辞退される、入社しても早期離職するという相談は増えています。

この違和感を、感覚ではなくデータで確かめたいと思い、私たちは「仕事を通してのウェルビーイング」に関する調査を行いました。結論から言うと、年収と仕事を通しての精神的豊かさは、ほぼ関係がありませんでした。

採用難を解く鍵は賃上げ競争ではなく、共鳴の設計にある。この記事では、その示唆を採用と組織づくりの観点で解説します。

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年収を上げてもウェルビーイングは上がらない

調査の結果、年収と「仕事を通してのウェルビーイング(精神的豊かさ)」は関連が薄く、むしろ相関としてはマイナス方向に出る傾向が確認されました。

ここで誤解してほしくないのは、給与がどうでもいいという話ではないことです。給与は不満を抑える上で重要です。ただし、給与を上げることが「この会社で働きたい」「ここで頑張りたい」という気持ちを生むとは限らない。

今回の結果は、その現実を裏付けるものだったと捉えています

賃上げが効きにくい採用市場になっている

採用市場は、候補者が複数の選択肢を持つ前提で動いています。その中で、給与は比較項目の一つに過ぎません。

最終的に意思決定を動かすのは、そこで働く意味があるか、納得できるか、自分の人生と重なるかです。給与で差がつかない時代になったというより、給与だけでは決められない時代になった、という感覚に近いかもしれません。

ウェルビーイングは「共鳴」で決まる

調査全体を通して見えたのは、ウェルビーイングは年収ではなく、共鳴や重なり、仕事満足によって形づくられるという構造でした。

言い換えるなら、仕事を通して精神的に豊かだと感じる人は、会社に対して共鳴し、自分の方向性と会社の方向性が重なり、仕事自体にも満足している傾向が強いということです。

共鳴が高い人ほど行動が変わる

共鳴が高い人は「仕事における自分の強みや役割を周囲に伝える、会社の歴史やストーリーに愛着を持つ、会社のファンであると言える、理念への納得が深い」といった項目と結びついていました。

ここが重要で、共鳴は気分の問題ではなく、行動や関係性の変化として表れるという点です。共鳴が生まれると、本人の仕事の姿勢が変わり、組織内での伝え方が変わり、会社への推奨意向にもつながっていきます。

入社時の共鳴が、その後を大きく左右する

調査からは、入社時の共鳴と現在の共鳴には強い関係があることも確認されました。これは採用の現場でずっと感じていたことでもあります。

採用の時点で理念や考え方に共鳴して入社した人は、その後も共鳴しやすい。逆に、条件だけで入社した場合、何かあったときに踏ん張る理由を持ちにくいのです。

採用は「入口の設計」でほぼ決まる

入社後にどれだけ育成を頑張っても、入口の共鳴が薄いと限界があります。なぜなら、会社の価値観を吸収する姿勢が違うからです。

採用は人数を満たす作業ではなく、共鳴状態で働ける人との接点づくりです。入社時点で共鳴が生まれているかどうかが、その後の活躍、定着、推奨意向にまで影響する。この構造が、今回の調査でも改めて確認できたと考えています。

「推される職場」は偶然ではなく設計である

調査の中では、職場を友人や家族に勧めたい、商品やサービスを勧めたいといった推奨意向も扱いました。ここに関しても、年収が押し上げているというより、共鳴や会社への愛着、方向性の重なり、仕事満足が関係している傾向が見えました。

つまり、推される職場は、待遇のインパクトで作るものではなく、関係性の設計で作られるということです。

共鳴経済の入口は従業員にある

共鳴経済という言葉は顧客側の話として捉えられがちですが、私たちは従業員側こそが入口だと考えています。

従業員が会社に共鳴し、会社のストーリーに愛着を持ち、方向性が重なり、仕事に満足している。その状態が、職場推奨や商品推奨につながり、採用にも効いてくる。

企業がファンを増やす最短距離は、従業員との共鳴をつくることにあるということです。

採用ブランディングは「共鳴状態をつくる仕組み」

採用ブランディングの役割は、よく見せることではありません。共鳴状態をつくり、入社後もその状態が続くように、言葉と体験を設計することです。

理念を語る、ストーリーを伝える、現場の体験に接続する。これらは表面的な演出ではなく、候補者が自分の意思で選び、入社後に活躍するための土台になります。

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深澤 了 Ryo Fukasawa
むすび株式会社 代表取締役
ブランディング・ディレクター/クリエイティブ・ディレクター

早稲田大学商学部卒業後、山梨日日新聞社・山梨放送グループ入社。広告代理店アドブレーン社制作局配属。CMプランナー/コピーライターとしてテレビ・ラジオのCM制作を年間数百本行う。2006年パラドックス・クリエイティブ(現パラドックス)へ転職。企業、商品、採用領域のブランドの基礎固めから、VI、ネーミング、スローガン開発や広告制作まで一気通貫して行う。採用領域だけでこれまで1000社以上に関わる。早稲田大学ビジネススクール修了(MBA)。同年むすび設立。地域ブランディングプロジェクト「まちいく事業」を立ち上げ、山梨県富士川町で開発した「甲州富士川・本菱・純米大吟醸」はロンドン、フランス、ミラノで6度金賞受賞。制作者としての実績はFCC(福岡コピーライターズクラブ)賞、日本BtoB広告賞金賞、山梨広告賞協会賞など。学術論文7編(査読付き)。雑誌・書籍掲載、連載多数。著書は「無名✕中小企業でもほしい人材を獲得できる採用ブランディング」(幻冬舎)、「知名度が低くても“光る人材“が集まる 採用ブランディング完全版」(WAVE出版)。「どんな会社でもできるインナーブランディング」(セルバ出版)。「人が集まる中小企業の経営者が実践しているすごい戦略 採用ブランディング」(WAVE出版)。国立大学法人富山大学とウェルビーイングに関する共同研究「幸福を超える共鳴」。2025年、新理論「共鳴経済」を日本マーケティング学会にて発表。

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