「『なぜなぜ分析』をブランディングに使ってみたら、業界の常識が覆った話」

ある日のこと

先日、AIにブランディング業界の課題について質問してみました。「なぜ、どのブランディング会社も同じに見えるのか?」

返ってきた答えは、私が日々感じていた違和感を見事に言語化したものでした。特に、私のもとに相談に来られる経営者からよく聞く話と重なっていました。

「実は以前、ブランディングを他の会社さんにお願いしたことがあるんです。でも、それがうまくいかなくて...」

何をしたのかお聞きすると、メインキャッチコピーとボディコピーが書かれた資料を見せてくれました。

「これがコンセプトだと言われました」

「ブランディング会社に高いお金を払ったのに、何も変わらなかった」

「結局、ロゴとパンフレットなどのデザインができただけで終わった」

製造業出身の私には疑問が湧きます。

「そもそもこれは目的は何だったんですか?戦術論だけのプロジェクトですか?それとも表現の部分を依頼したんですか?」なぜこうなったのか経緯が理解できませんでした。

1. AIが指摘した5つの要因

AIの回答によると、ブランディング会社が同じに見える背景には、以下の5つの複合的な要因があるとのことでした:

1. 提案内容・提供サービスの同質化

多くのブランディング会社が、市場調査、ブランド理念策定、ブランド戦略立案、ネーミング開発、ロゴデザイン、クリエイティブ制作、社内浸透といった同じようなサービスメニューを掲げている。これらはブランディングに必要な要素だが、「どこも同じことをやっている」という印象を与えてしまう。

2. 専門用語・バズワードの多用

「パーパス」「DX」「SX」「CX」といった業界トレンドの言葉を、各社が独自の定義や文脈を十分に説明しないまま使用している。結果として、「どこも同じような流行りの言葉を並べている」と見え、違いが不鮮明になっている。

3. アウトプット(実績)の見た目の類似性

近年のデザイントレンド(ミニマル、シンプル、クリーンな書体など)の影響で、表層的なデザインのテイストが似通っている。実績ページを見ても、「なぜこのデザインに至ったのか」という戦略的な思考プロセスまで読み解くのは困難。

4. プロセスのブラックボックス化

多くの会社が「調査→戦略→アウトプット」という大まかな流れは提示するが、「独自のノウハウ」や「思考の深さ」を具体的に伝えるのが非常に難しい。各社が最も差別化を図っているはずの「プロセス」の部分が、顧客からは見えにくくなっている。

5. 業界構造と成り立ちの多様化

デザイン事務所、広告代理店、経営コンサルティングファーム、Web制作会社など、異なる出自の会社が「ブランディング」という一つの看板を掲げるため、それぞれの得意領域の違いが見えにくくなっている。

この分析を読んで、私は製造業時代のことを思い出していました。

2. 製造業で叩き込まれた「現地現物現実」

私が製造業で学んだ最も重要なことは、「現地現物現実」—三現主義と呼ばれる考え方でした。問題が起きたら現地に行き、現物を確認し、現実を直視する。当たり前のようですが、これが徹底されていない組織では、本質的な問題解決は不可能です。

印象深いのは、ある不具合の原因を突き止めるのに1年かかった経験です。お客様は外資系の世界的企業。稀にしか発生しない不具合でしたが、「なぜ起きるのか」を徹底的に追求しました。

現地で現物を確認し、現実の条件を一つずつ検証していく。その現象がなぜ起きたのか、どうしたら再現できるのか、ひたすら実験を繰り返しました。その結果、ある特定の気温・特定湿度条件などによって引き起こされる現象だということが判明しました。この発見は、その後世界中の同社拠点でナレッジとして共有されることになります。

なぜ1年もかけたのか?それは「なぜなぜ分析」—「なぜそうなるのか」を5回以上繰り返すことで、真の原因にたどり着く手法—が製造業では当たり前だからです。

3. ブランディング業界での違和感

この業界に来て最初に感じたのは、「表面的なコミュニケーション戦略」で終わっているケースの多さでした。コミュニケーション戦略ですらないと感じことも多々。

「コンセプトは何ですか?」と質問すると、多くの方がキャッチコピーとボディコピーを見せてくれます。でも私の中では、コンセプトには3種類あります:

ブランドコンセプト(目的):自分たちの価値は何なのか、顧客にとってどんな存在でありたいのか、企業理念や価値観などの要素を整理して組み立てる

マーケティングコンセプト(手段):その価値をどう市場地位として築いていくのか、ターゲットの詳細な設定、使用媒体の選定、情緒的なニュアンスなど、様々な戦略要素を整理して構築する

コミュニケーションコンセプト(表現):それをどう伝えるのか、言葉選び、ビジュアル、トーンなどの表現要素を整理してまとめる

上記は一部抜粋したものです。その中のキャッチコピーは、コミュニケーションコンセプトを具体化したものの一つに過ぎません。それを「コンセプト」と思っている時点で、戦略の組み立て構造が共有されていないのです。つまり、何の説明も受けず疑問が残るままに進めてしまったことが見て取れます。

4. 製造業思考をブランディングに応用する

製造業の「なぜなぜ分析」をブランディングに適用してみると、こうなります:

なぜブランディングが必要なのか?

→売上が思うように伸びないから

なぜ売上が伸びないのか?

→顧客に価値が伝わっていないから

なぜ価値が伝わらないのか?

→そもそも自分たちの価値が明確でないから

なぜ価値が明確でないのか?

→顧客の本当のニーズを理解していないから

なぜ顧客のニーズを理解していないのか?

→表面的な調査で満足し、本能的な部分まで掘り下げていないから

ところが多くのケースでは、この最初の「なぜ」を飛ばして、いきなり「ブランディングをやる」ことが目的になってしまいます。気がつくと「一体何のためのブランディングなんだっけ?」という状態に陥っているのです。

この分析から導き出されたのが、私の3つの思考モードです。philosophyページに詳しく記載しています。

発見モード:現実を直視する(三現主義の応用)

構築モード:一点を探す(なぜなぜ分析の応用)

解放モード:本能を肯定する(人間理解の深化)

5. 「見えないプロセス」を可視化する

AIが指摘した「プロセスのブラックボックス化」。これは製造業では絶対に許されません。品質管理において、プロセスが見えなければ改善も再現もできないからです。

私がクライアントに提供するのは、「パズルのピースが見える状態」です:

製造業系のクライアントからは、「頭の中の整理ができる」「何をしているプロジェクトなのかが分かる安心感がある」という感想をいただいています。

6. 業界の「情報格差」への疑問

最も違和感を感じるのは、専門用語で「情報格差」を作り、それで優位性を保とうとする傾向です。製造業では、問題解決のために全員が同じ情報を共有することが当たり前でした。

ブランディングも本来は、企業の本質的な価値を顧客に届けるための「問題解決」です。そこに情報格差があっては、真の解決には至りません。

私が手の内を公開することにためらいがないのは、料理のレシピと同じだと考えているからです。同じレシピでも、作る人によって全く違う料理になる。真の価値は、フレームワークそのものではなく、それを使いこなす実践力にあるのです。

偉そうに言ってすみませんw 自分への戒めも含めてですw

おわりに

「なぜブランディング会社はみんな同じに見えるのか?」

その答えは、多くの会社が「なぜブランディングが必要なのか?」という根本的な問いを飛ばして、表面的な手法論に飛びついているからかもしれません。

そしていつの間にか「ブランディングをやること」が目的になり、本来解決したかった課題を見失ってしまう。これでは、どんなに美しいロゴができても、どんなに洗練されたコピーができても、ビジネスは変わりません。

もしあなたが今、ブランディングプロジェクトを進めているなら、まずこう自問してください:

「一体何のためのブランディングなんだっけ?」

そして、パートナーにこう質問してみてください:

「今、私たちは一体何をしているプロジェクトなのですか?」

「なぜこのプロセスが必要なのですか?」

「これをやることが、何につながるのですか?」

しつこく聞いてください。なんとなく分かったつもりで進めることほど、時間とお金の無駄はありません。

製造業で学んだ「現地現物現実」と「なぜなぜ分析」。この古典的な手法が、実はブランディングにおいても最も重要なのではないでしょうか。