経営理念の作り方5ステップ|「誰も反対しない理念」の罠
経営理念の作り方を調べると、たいてい似たような手順が出てきます。他社の理念例を集めて、自分の考えを書き出して、案を出して、磨き上げる。ところが、この手順どおりに作った理念は、なぜかどこかで見た文章になります。
この記事で紹介する作り方は、先に全体を見せるとこの5ステップです。
- 過去の決断を棚卸しする
- 「うちらしい」と言われた行動を集める
- 譲れないものを一文に書き出す
- 削って磨く
- 他社例と見比べて検証する(※他社例は最初ではなく最後に使います)
それぞれの詳しいやり方と、今日から使える問いのリストを順に説明します。その前に、なぜ普通に作ると失敗するのか——理念が凡庸になっていく仕組みを3分だけ。ここが分かると、5ステップの意味が変わって見えます。
対象は、創業から数年〜10年ほどの中小企業の社長、会社を継いだ後継社長、そして社長から「理念をまとめておいて」と任された担当者の方です。なお、経営理念とは何か、企業理念やミッション・ビジョンとの違いといった定義の話は、経営理念とは?企業理念との違いと、「額縁の飾り」にしない考え方でくわしく整理しているので、ここでは深入りしません。この記事で扱う「経営理念」は、「この会社は何を大事にして、何をやらないのか」を示す、会社の背骨になる言葉のことです。
なぜステップどおりに作っても、どこかで見た理念になるのか
先に結論を言います。理念が凡庸になるのは、社長に想いがないからではありません。作る過程そのものに、言葉を丸くする力が3つ働いているからです。
力学1:他社の理念例から始めるから、似る
理念の作り方を解説する記事の多くは、「まず他社の理念例を見てみましょう」を最初のステップに置いています。実際、この記事を書くにあたって上位の解説記事8本のステップ構成を確かめたところ、6本が「他社の理念例を見る」を最初に置いていました。参考にすること自体は悪くありません。問題は、順番です。
お手本から出発した言葉は、お手本に寄ります。有名企業の立派な理念を10社ぶん読んでから自社の言葉を書くと、頭の中にはもう「理念っぽい文章の型」ができあがっています。「私たちは〜を通じて、社会に〜します」。その型に自社の事業を流し込めば、それらしい一文はすぐできます。ただし、それは自社の言葉ではなく、型の言葉です。
現場でもよく起きます。担当者が他社例をきれいにまとめた資料を作り、それを見ながら会議で案を出す。出てくる案は、資料に載っていた理念の言い換えばかり。誰も手を抜いていないのに、そうなります。
力学2:複数案を合議で選ぶから、角が取れる
案がいくつか出そろうと、多くの会社は多数決や合議で選ぼうとします。役員全員が「これならいい」と言える案を探すわけです。
ここに罠があります。全員が賛成できる案とは、誰にとっても引っかかりのない案です。とがった案、好き嫌いの分かれる案は、この過程でまず落ちます。「ちょっと言い過ぎでは」「お客様によっては誤解されるかも」。一つひとつはもっともな指摘ですが、それを全部反映した文章は、もう誰の顔も浮かばない文章になっています。
力学3:立派で否定されにくい文章を、目指してしまう
理念は会社の顔だから、恥ずかしくないものにしたい。銀行にもお客様にも見せられるものにしたい。その気持ちが、言葉を「立派で、否定されにくい方向」へ引っぱります。
「誠実」「挑戦」「貢献」「感謝」。どれも間違っていません。誰も反対しません。だからこそ危ないのです。誰も反対しない理念は、誰の心にも残りません。これがタイトルに掲げた「罠」の正体です。反対されない言葉を目指した時点で、理念は記憶に残る力を失います。
作る前に決めておく3つのこと
ステップに入る前に、決めておきたいことが3つあります。ここを飛ばすと、途中で迷子になりがちです。
1. 誰と作るか。 核になる言葉を出すのは経営者です。ただし、最初から最後まで一人で作るのか、幹部や社員に途中から入ってもらうのかは、先に決めておきましょう。途中で「やっぱりみんなの意見も」と広げると、力学2がそのまま発動します。この論点は後半でくわしく扱います。
2. 何に使うか。 採用で語るのか。日々の意思決定の基準にするのか。銀行や取引先への説明資料に載せるのか。用途によって、言葉の硬さが変わります。全部の用途を一文で兼ねようとすると、いちばん硬い用途に引きずられます。迷ったら、毎日口にする用途(朝礼や日々の意思決定)に合わせて作ってください。対外向けには、補足の説明文を添えれば足ります。
3. 完成の判定基準。 「なんとなく良さそう」で決めると、立派で否定されにくい案が勝ちます。この記事では、完成を判定する3つのテスト(社名差し替えテスト・反対する人がいるかテスト・毎日口にして嘘がないかテスト)を後ほど紹介します。作り始める前に、「最後はこのテストで判定する」と決めておいてください。
経営理念の作り方5ステップ
ここからが本体です。各ステップに「問いのリスト」と「ここで凡庸化する罠」を付けています。紙とペン、もしくはメモアプリを開きながら読んでください。
ステップ1:過去の決断を棚卸しする
他社例からではなく、自分の歴史から始めます。理念の材料は、未来の理想ではなく、過去の決断の中にあります。すでに下した決断には、その人が本当に大事にしているものが、飾りなしで表れているからです。
次の問いに、思いつくまま答えてください。きれいな文章にする必要はありません。
- 創業のきっかけになった怒り、悔しさ、衝動は何だったか
- これまでで一番苦しかった岐路で、何を捨てて、何を守ったか
- 儲かるとわかっているのに、やらないと決めていることは何か
- 逆に、儲からないのに、やめられないことは何か
- 過去に断った仕事のうち、今でも「断ってよかった」と思うものはどれか。なぜか
「儲かるのにやらないこと」は特に強い問いです。やりたいことは建前でも語れますが、断ったものには本音が出ます。
ここで凡庸化する罠: いきなり「わが社の存在意義は」と考え始めることです。存在意義から考えると、頭は自動的に立派な言葉を探しにいきます。過去の具体的な決断、あの日あの場面から始めてください。
ステップ2:「うちらしい」と言われた行動を集める
次に、視点を外に移します。社員や顧客の口から出た「らしいね」という言葉を集めるステップです。
理念は社長の内側だけで完結しません。周りがすでに感じ取っている「この会社っぽさ」は、貴重な素材です。本人にとっては当たり前すぎて見えていないものが、外からはよく見えていることが多いのです。
- お客さんに褒められて、一番うれしかった言葉は何か
- 社員がいつのまにか、まねし始めた自分の口癖や行動は何か
- 「御社らしいですね」と言われたのは、どんな場面だったか
- 辞めた社員が、あとになって「あれは良かった」と言ったことは何か
- 同業者から「そこまでやるの」と驚かれた(あるいは呆れられた)ことは何か
社歴の長い社員に直接聞くのも有効です。「うちの会社っぽいなと思う場面、ある?」の一言で、自分では思いつかない素材が出てきます。
ここで凡庸化する罠: 「強み」を聞いてしまうことです。強みを聞くと「品質」「スピード」「対応力」といった一般名詞が返ってきます。聞くべきは強みではなく、場面です。いつ、誰が、何をしたときの話かを聞いてください。
ステップ3:譲れないものを一文に書き出す
ステップ1と2で集めた素材を眺めながら、「要するに、うちが譲れないものは何か」を一文で書きます。ここでのルールは一つだけ。きれいにしないこと。
身も蓋もない言葉のままでかまいません。むしろ、その方がいい。
- 「下請けだからって、頭は下げても仕事の質は下げない」
- 「社員の家族に、この会社で働いてるって胸を張って言わせたい」
- 「約束した納期は、赤字になっても守る」
こういう、そのまま外には出せないような一文を、5本でも10本でも書いてください。一発で決めようとしないことが大事です。いきなり完成形を書こうとすると、手が止まります。下手な一文をたくさん書く方が、先に進めます。
ここで凡庸化する罠: この段階で敬語や漢語に整えることです。「納期は赤字でも守る」を「顧客との約束を誠実に履行します」と書いた瞬間、言葉は死にます。整えるのは次のステップの仕事です。ここでは絶対に整えない。
ステップ4:削って磨く
書き出した複数の一文から、核になるものを選び、言葉を磨きます。ここが力学2と3の主戦場です。
まず、選ぶのは経営者です。合議で選んではいけません。複数案を役員会に諮って多数決を取ると、いちばん角のない案が残ります。順番はこうです。経営者が決めて、そのあと言葉を磨く段階で人の力を借りる。「どれにするか」は一人で決め、「どう言うか」はみんなで揉む。この分業なら、合議の良さ(言葉の精度が上がる)だけを取り込めます。
磨くときの技術は、主に一つです。抽象名詞を、動詞や情景に開くこと。
- 「誠実」→ 誰に、何をするときの誠実か。「できないことは、できないと今日言う」なのか
- 「挑戦」→ 何に挑むのか。「去年と同じ提案を、恥だと思う」なのか
- 「貢献」→ 顔の浮かぶ誰かに置き換える。「うちの工事で、あの通りの店が明日も開けられる」なのか
現場でよく起きるのは、役員会や幹部会議を通すたびに言葉が丸くなっていく現象です。「この表現は強すぎませんか」という指摘が一周するごとに、動詞が名詞になり、名詞が四字熟語になります。対処法は、会議の冒頭で判定基準を宣言しておくことです。「この理念は、反対する人がいるくらいでちょうどいい。丸くする方向の修正は採用しない」。基準を先に言っておけば、善意の指摘で言葉が死ぬのをかなり防げます。
ここで凡庸化する罠: 「見せる相手」を先に想像しすぎることです。銀行が、取引先が、と考え始めると、言葉は防御的になります。磨く段階で見るべき相手は、明日の朝礼で自分の前に立つ社員です。
ステップ5:他社例と見比べて検証する
他社の理念例は、ここで初めて使います。同業他社や、規模の近い会社の理念を並べて、自社の案と見比べてください。
似ていたら、ステップ3に戻ります。表現だけでなく、構造が似ている場合も要注意です。「〜を通じて〜に貢献する」という骨格ごと同じなら、それは型の言葉に戻っている証拠です。
力学1で見たとおり、多くの解説記事はこれを最初のステップに置きます。この記事が最後に置くのには、理由があります。最初に見れば、他社例は「お手本」として働き、言葉を似せる方向に引っぱります。最後に見れば、同じ他社例が「検証装置」として働き、言葉を似せない方向に引っぱります。使うタイミングを変えるだけで、同じ材料が逆の仕事をしてくれるのです。
ここで凡庸化する罠: 見比べた結果、他社の方が立派に見えて、寄せたくなることです。立派に見えるのは当然です。他社の理念は磨き上げられた完成品で、こちらはまだ途中なのですから。比べるべきは立派さではなく、「その会社にしか言えない言葉になっているか」の一点です。
「うちらしいか」を試す3つのテスト
できあがった案を、3つのテストにかけます。作る前に決めた「完成の判定基準」がこれです。
テスト1:社名差し替えテスト
理念の中の自社名を、同業他社の名前に差し替えて読んでみてください。それでも文章が成立するなら、その理念はまだ誰の言葉でもありません。
「私たちは技術と誠意でお客様の信頼に応えます」。この文は、どこの会社の名前を入れても成立します。逆に、ステップ1で掘り起こした過去の決断が言葉に残っていれば、他社の名前を入れた瞬間に嘘になります。嘘になるなら合格です。
テスト2:反対する人がいるかテスト
この理念を掲げたとき、「うちには合わない」と離れていく人の顔が想像できるでしょうか。合わない社員、合わない顧客、合わない取引先。誰か一人でも想像できるなら、その理念には輪郭があります。
想像できないなら、危険信号です。繰り返しになりますが、誰も反対しない理念は、誰の心にも残りません。理念は「何を大事にするか」の宣言であると同時に、「何を大事にしないか」の宣言でもあります。切り捨てるものがない言葉は、選んだことにならないのです。
テスト3:毎日口にして嘘がないかテスト
明日の朝礼で、自分の口からこの理念を言ってみてください。声に出したとき、体温が乗るか。言いながら、少し照れるくらいの実感があるか。
口が滑るだけで心が動かないなら、それは自分の言葉ではありません。理念は額に入れて飾るものではなく、毎日口にするものです。毎日言って嘘にならない言葉が、理念として生き残ります。
3つとも通れば完成です。引っかかったら、言葉の問題ならステップ3か4へ。そもそも固有の素材が薄いと感じたら、ステップ1に戻ってください。戻るのは失敗ではなく、工程の一部です。
例文・テンプレートの正しい使い方——真似ると失敗する理由
「経営理念 テンプレート」で検索すると、穴埋め式のフォーマットや例文集がたくさん出てきます。使い方を間違えなければ、役に立ちます。間違えると、力学1がそのまま再現されます。
テンプレートの正しい使い方は、書き始める前ではなく、書き終わったあとの整理に使うことです。素材を出す前にテンプレートを見ると、穴を埋めるための言葉探しが始まり、型の言葉に吸い寄せられます。素材が出そろったあとなら、テンプレートは「言い忘れがないかの点検表」として安全に使えます。
例文がなぜそのまま使えないのか、添削の実演で見てみます。架空の会社で考えましょう。地方都市で50年続く、社員30名の建設会社です。
NG例:「私たちは誠実と挑戦を大切にし、地域社会の発展に貢献します」
一見、問題のない理念です。しかし社名差し替えテストにかけると一発でわかります。この文は、日本中のどの建設会社の名前を入れても成立します。誠実の中身も、挑戦の相手も、貢献の受け取り手も、何も書かれていないからです。
添削の方向はこうです。この会社の社長にステップ1の問いを投げたら、「親父の代から、手抜き工事の噂が一度も立ったことがないのが誇りだ」「30年前に建てた家の施主から、子どもの代のリフォームを頼まれるのが一番うれしい」という話が出てきたとします。なら、理念はこの方向に開けます。
OK方向の例:「30年後の施主に、また頼まれる仕事をする」
抽象名詞が消え、顔の浮かぶ誰か(30年後の施主)と、具体的な動詞(また頼まれる)が入りました。この一文なら、隣町の競合の社名を入れた瞬間に嘘になります。手抜きを疑われるような安値受注は「うちらしくない」と、現場の判断基準としても機能します。
なお、実在企業の理念を持ってきて添削するのはやめておきましょう。他社の理念は、その会社の歴史の中でしか評価できないからです。例文集は「構造を学ぶ教材」であって、「言葉を借りる在庫」ではありません。
後継社長の場合——先代の理念は「変えるか残すか」の二択ではない
会社を継いだ社長には、独特の悩みがあります。先代の作った理念が、すでにあるのです。変えれば古参社員の反発が怖い。残せば自分の言葉にならない。
この悩みは、「変えるか残すか」の二択で考えるから苦しくなります。実際にやるべきは、仕分けです。
先代の理念を、中身と表現に分解してください。中身とは、その言葉が守ろうとしていたもの。表現とは、それを包んでいる言葉づかいです。中身は受け継ぎ、表現は自分の言葉に言い換える。
この仕分けをすると、たいていの理念は「捨てるもの」がほとんどないことに気づきます。先代が守ってきたものは、多くの場合、今も守る価値があるからです。変えるべきは、時代に合わなくなった言い回しの方です。
そして、この仕分けの作業自体が、最良の理念教育になります。先代の言葉を一つひとつ「これは何を守ろうとした言葉か」と問い直す過程で、後継社長は会社の歴史を自分の言葉で語れるようになります。古参社員に「先代はなぜこう言ったんですかね」と聞いて回るのも、仕分けの一部であり、同時に世代をつなぐ対話になります。
一人で作るか、誰かと作るか
最後に、体制の話です。理念づくりでつまずく人の多くは、能力ではなく構造でつまずいています。
構造とはこうです。経営者の想いは、本人にとって当たり前すぎる。空気のように吸ってきたものは、自分ではなかなか言葉にできません。「なぜ納期を絶対に守るんですか」と聞かれて初めて、「守らなかったら、あのとき世話になった人を裏切ることになるから」という物語が口から出てくる。問いを重ねる相手がいて、初めて言語化されるものが多いのです。
だから、「一人で作るか、誰かと作るか」の本当の論点は、「問い手を誰にするか」です。
社内で問い手を立てるなら、幹部や古参社員に頼み、ステップ1の問いをそのまま渡して、聞き役になってもらう方法があります。コツは、聞き役に「良い悪いを言わない」ことを約束してもらうことです。評価が入ると、話す側は立派な答えを探し始めます。
外部の問い手を使う方法もあります。形態としては、社員参加のワークショップ型、経営者の原体験を問いで引き出すインタビュー型、経営陣で集中的に討議する合宿型、策定から浸透まで数か月伴走する型などが一般的です。外部の利点は、社内の遠慮がないことと、「当たり前でしょ」で流される話を「それ、当たり前じゃないですよ」と止められることにあります。
どちらが正解ということはありません。費用の相場や外部パートナーの選び方は論点が多いので、別の記事で扱う予定です。ここで押さえてほしいのは一点だけです。理念は、想いの量ではなく、問いの量で言葉になります。
作ったあとに待っている壁——浸透
理念づくりには続きがあります。作った理念を、社員の日々の判断に届ける「浸透」の仕事です。
先に一つだけ言っておくと、浸透しない理念の多くは、浸透のさせ方ではなく、作り方の段階でつまずいています。他社例から出発して似てしまった理念、合議で角が取れた理念、立派で否定されにくい方向に磨かれた理念。この記事の冒頭で見た3つの力学に飲まれた言葉は、ポスターにしても唱和しても、社員の心に引っかかる場所がありません。
逆に言えば、この記事の5ステップと3つのテストを通った理念は、浸透の仕事のいちばん難しい部分をすでに終えています。残り——朝礼や評価や日々の意思決定にどう織り込むか——は、理念浸透の方法と施策一覧|浸透しない原因は理念の側にあるでくわしく扱っています。社内への浸透全体の設計はインナーブランディング完全ガイドも参考になります。
まとめ・よくある質問
経営理念の作り方を、あらためて一枚にまとめます。
- 過去の決断を棚卸しする——他社例ではなく自分の歴史から始める
- 「うちらしい」と言われた行動を集める——強みではなく場面を聞く
- 譲れないものを一文に書き出す——きれいにしない。下手な一文をたくさん書く
- 削って磨く——選ぶのは経営者一人。磨く段階だけ人の力を借りる
- 他社例と見比べて検証する——他社例はお手本ではなく検証装置として最後に使う
そして完成の判定は、社名差し替えテスト・反対する人がいるかテスト・毎日口にして嘘がないかテストの3つで行います。立派かどうかは、判定基準に入れないでください。
Q1. 経営理念は何文字くらいがいいですか?
正解の文字数はありません。目安を挙げるなら、「毎日口にできる長さ」です。参考までに、一文から数十字程度に収める会社が多いです。朝礼で言いよどむ長さなら、まだ削れます。短い理念が良いとされるのは、短さそのものに価値があるからではなく、短くする過程で「何を捨てるか」の決断を重ねた跡が残るからです。
Q2. どれくらいの期間で作るものですか?
会社の規模や体制にもよりますが、数か月かける会社が多いようです(半年から1年かける例もあります)。急ぐ必要はありません。ステップ3と4のあいだで寝かせる時間、ステップ5から戻ってやり直す時間が、言葉を自分のものにします。1日で決めた言葉は、1日で忘れられがちです。
Q3. 社員はいつ巻き込めばいいですか?
核になる言葉を出す段階(ステップ1〜3)は、経営者が主役です。ここで巻き込みすぎると、合議の力学で言葉が丸くなります。社員の力を借りるのは、ステップ2の素材集め、ステップ4の磨き、そして完成後に理念を現場の言葉に翻訳していく段階です。「核は経営者、磨きと翻訳は社員と」と覚えておいてください。
まずは、最初の問いから
理念づくりは、立派な言葉を探す仕事ではありません。すでに自分の中にある「譲れないもの」を、逃げ場のない一文にする仕事です。まずは今日、ステップ1の最初の問いから始めてみてください。創業のきっかけになった怒りや衝動は、何でしたか。