【実験レポート】「Geminiに自分の仕事を分析させたら、無意識の『原則』が見えてきた」
「なぜチームで認識がズレるのか?」
チームで仕事をしていて、いつも感じていたモヤモヤがありました。
私が考えたいポイントと、一緒に働く仲間が考えるポイントが微妙にズレてしまう。どうしても「暗黙知」の部分を共有できていないことで、議論が少し滞ってしまったり、方向性がずれてしまったりすることが出てきていました。
ミーティングで話していけば解決はするのですが、最初からズレない方が効率的ですよね。「私が『違う』と言っている観点を、もっと理解してもらいたい」。そんな思いが強くなっていました。
さらに深刻だったのは、こんな課題です:
- 品質の属人化問題
仕事の品質がどうしても人に依存してしまう。クオリティを均一化したいのに、なかなかうまくいかない。
- 再現性の壁
ちょっとしたヒアリングやインタビューをお願いしても、「どこまで深掘りするのか」「どう分析するのか」という暗黙知を共有できていないと、メンバーによって深度や精度がバラついてしまう。
- 表現の深度が伝わらない
コンセプトを作った後、実際に表現していく段階で、私が求めているような深度で表現ができていない時がある。でも、その「求める深度」をうまく言語化して伝えられない。
そして根本的な悩みがありました。私は「なんとかメソッド」のような画一的な手法が好きではありません。ビジネスは状況によって変わるものなので、何かのメソッドに当てはめて判断するのは違和感があります。
でも、そんな中でも自分はどういう部分を大事にして分析・判断しているのか?それは「分かっているようで分かっていない」状態でした。
お客様への説明においても、思考プロセスを言語化できれば、もっと提示しやすくなるのではないか。そう考えて、「一体、私は何を基準に判断しているんだろう?」という疑問を解決するため、AI分析に取り組んでみることにしました。
1. 「過去のレポートを全部AIに放り込んでみた」
データ準備:機密情報への配慮も忘れずに
用意したのは、過去に私がやった仕事の分析結果や調査結果のレポートです。そこからどういうふうに戦略・戦術を組み立てていったのか、そのプロセスが分かる資料をすべてテキスト抽出して整理し、Geminiに渡しました。
ただし、これらはデリケートな機密情報を含むデータなので、ちゃんとセキュアな環境のものを使用して分析を行いました。この点は重要です。
プロンプトはシンプルだが要点を押さえて
Geminiへの質問は、そんなに難しいプロンプトは作っていません。基本的には:
- 役割設定
- どういう資料を今回付けたのかの説明
- 僕がどういうことを解き明かしたいと思っているのか
- 依頼するタスクの簡単な手順
- 期待するアウトプットの具体例
- 悪い例として、淡白なものは避けてね(これがポイント!)
※具体例として良い例と悪い例を提示すると精度が上がります。
- 制約ルール
こうして、私の分析基準・判断基準を要素分解してもらうようなイメージでスタートしました。
仕事の合間に2日間の深掘り対話
分析の進め方は、まず1段階目の回答を確認して、自分的に違和感があるかないかをチェック。そして「可能な限り粒度が高い要素まで」議論していきました。
最初に出てきた回答に違和感はなかったのですが、「もっとその出てきた分析結果は要素分解できるんじゃないか」と思ったので、より粒度の高い部分が出力できるように会話を続けていきました。
「ということは、私はこういう観点で分析している?判断しているということ?」
「それをもっと粒度の高い要素に分解して」
「じゃあそれに対してまた同じような仮説質問と確認を繰り返す」
このようなプロセスを繰り返し、ひたすら要素分解していく感じです。仕事の合間に約2日間かけて、対話を重ねました。
2. 「無意識の『原則』がここまで明確になるとは」
階層構造の発見:Tier1からTier3まで
最終的に導き出されたのは、私の判断基準の「3大原則」(Tier1)を軸とした階層構造でした。
Tier1:絶対に譲れない3大原則
- 課題ではなく、「現実」を直視する
- 正解ではなく、「一点」を探す
- 理性を超え、「本能」を肯定する
Tier2・Tier3:より詳細なブレイクダウン
これらの原則を支える心構えや技術的な細則まで。
せっかく作ったので、公開することにしました。内容はこちらになります。
-philosophy
最大の驚き:「課題を反転させる」思考
分析結果で最もびっくりしたのは、「課題を反転させ、価値を創造する」という考え方が、私にとって無意識の行動だったということです。
企業が抱える最大の弱み・コンプレックス・隠したいと思っている課題を、隠すのではなくむしろ主役に据える。「それがあるからこそ、この独自の価値が生まれる」という論理で新しい価値を創造していく。
言われてみれば「確かに!」なのですが、これが無意識にやっていたことには正直驚きました。
製造業思考の根深さ:やっぱりそうだった
一方で、製造業時代の影響がここまで体系的に残っていることについては、「やっぱり」という感覚でした。新卒から15年間製造業にいましたからね。
「現地現物現実」(三現主義)や「なぜなぜ分析」といった製造業の基本思考が、ブランディングの仕事にも色濃く反映されている。これは驚きというより、納得できる発見でした。
「本能を肯定する」のルーツ
「本能を肯定する」という考え方は、製造業的思考とは対照的に見えるかもしれませんが、実はこれも自然な流れでした。
私は基本的に、人間はそんなに論理的に物事を判断していないと思っています。割と無意識で判断することってすごく多い。これは製造業とか関係なく、人間の本質だと考えています。
加えて、自分自身が「自分の欲求や本能に素直に従って生きていこう」とするタイプなので、それが分析に反映されたのかなと思います。
3. 「チームの反応と3つのモードへの集約」
チームメンバーの反応:納得と刺激
この詳細な分析結果をチームメンバーに見せた時の反応は印象的でした。
「そうですよね」という納得感と、「非常に勉強になる」という刺激。特に「分かっていたようで分かっていなかったことがしっかりと言語化された」ことへの感激の声が多かったです。
ただし、現実的な意見もありました。「これを全部できるようになってねって言われたら、すごく難しいんじゃないか」。
実用的な「3つの思考モード」の誕生
そこで、この複雑な体系を「必要最低限のものの見方・考え方」として整理し直しました。「こういう観点で思考していこう」という実用的な形に集約したのが、「3つの思考モード」です。
発見モード:現実を直視する
「ここにある、本当の『現実』は何か?」
構築モード:一点を探す
「この現実から、どんな『独自の価値』を築けるか?」
解放モード:本能を肯定する
「この価値で、どうやって『人の心』を動かし、解放するか?」
これは判断基準というより、「一緒にプロジェクトをやっていく中で絶対に大事にしてほしい」「基本的に譲れないポイント」として位置づけています。
4. 「AI分析の効果と、意外な精度の高さ」
実践での効果:確実に変化が起きている
実際にチームで使ってみた効果はどうでしょうか。
すぐに劇的な変化があるわけではありませんが、物事に取り組むときに確実に意識してくれているので、少しずつ変わってきていると感じます。
特に大きいのは、議論の基準ができたことです。プロジェクトを進めていく上での議論が、一つの基準ができ上がったことによって、明らかにしやすくなりました。
暗黙知のズレ解消や品質の均一化については、どうしても個人の能力による部分も出てきてしまうので、まだ改善の余地はあります。でも、確実に前進しています。
AIの精度への驚き:ほぼ完璧に捉えきった
約2日間の対話を通じて、AIが私の思考パターンをほぼ完璧に捉えきったことには驚きました。途中途中の会話も含めて分析してくれているからか、「捉えきれなかった部分」はほとんどありませんでした。
特に印象的だったのは、弱点や懸念点まで的確に指摘してくれたことです。「過度な感情移入のリスク」「完璧主義とスピードのトレードオフ」など、私自身も認識していた課題をAIが理解していることに、正直驚きました。
5. 「あなたも暗黙知を形式知化してみませんか?」
すべての社会人に共通する価値
この体験を通じて強く感じるのは、暗黙知の形式知化の価値は、すべての社会人に共通するということです。
上司とか部下とか、いろんな人とミーティングをする機会は、社会人だったらみんなありますよね。その時の判断基準—なぜその上司はそう言うのか、なぜ自分はこう考えるのか—を言語化することで、建設的な会話がしやすくなります。
組織単位での活用も可能
これは個人だけでなく、組織単位でも有効です。組織なりの判断基準や物事の考え方を要素分解することで、チームとして成果を上げていくという観点で、非常に有効なデータを整理できるはずです。
こんな悩みがある人におすすめ
- 「自分が思っていることと、部下がやることがなんかズレるんだよな」
- 「部署ごとでいろんな観点があって、チームとしてやっていくのが難しい」
- 「なぜその判断をするのか、根拠を明確にしたい」
こういった悩みがある場合、AI分析による暗黙知の可視化は、いろんな観点で活用できると思います。
具体的な始め方
- 過去の仕事の記録を整理:レポート、提案書、議事録など
- セキュアな環境の確保:機密情報の取り扱いに注意
- シンプルなプロンプトから開始:「私の判断基準を分析して」
- 2〜3日かけて対話を重ねる:粒度を上げる反復質問
- チームで共有・検証:実際に使えるレベルまで調整
「客観視の力と、変化を楽しむ姿勢」
今回の実験で改めて感じたのは、客観視の力です。自分では「分かっている」と思っていた判断基準が、実際に言語化してみると新たな発見に満ちていました。
特に「無意識にやっていた高度な思考法」を発見できたことは、大きな収穫でした。これにより、その思考法を意識的に活用し、チームにも共有できるようになります。
もちろん、AIが全てを解決してくれるわけではありません。最終的には人間の実践力が問われます。でも、思考の見える化によって、確実に仕事の質と効率は向上します。
「AI活用は難しそう」と思っている方も多いでしょう。でも実際にやってみると、思っているより簡単で、思っているより効果的なんです。
変化を恐れるのではなく、変化を楽しんでほしい。好奇心を持って取り組めば、きっと「未来が見える」ような感覚を味わえるはずです。
明日からのチームワークが、もっと効率的で建設的なものになりますよ!
今回使用したツール
- Gemini:Googleの高性能AI、セキュアな環境で利用
- 過去のレポート・提案書:テキスト抽出して分析データとして活用
分析のポイント
- 完璧を求めず、まずは粒度の高い分析から
- セキュリティ対策は必須
- チームでの検証・調整を忘れずに
- 「思いついたらまず試してみる」姿勢が重要