
採用に多額のコストをかけているにも関わらず、人が採れない。これは多くの企業が抱えている課題です。
特に成長企業ほど、売上は伸びているのに人材が足りず、事業拡大が止まってしまうケースが見られます。
本記事では、実際に採用ブランディングに取り組み、状況を大きく改善した企業の事例をもとに、「なぜその企業は採用に成功したのか」をお伝えします。
ポイントは、採用手法ではなく「どこから着手したか」にあります。
採用に年間数千万円かけても採れない状態からのスタート
弊社が手掛けたある企業では、年商約10億円規模にも関わらず、年間で数千万円単位の採用費を投じていました。それを複数年継続しても、十分な採用成果は出ていない状態。
売上は順調に伸びており、店舗の業績も好調。しかし、人がいないために新規出店ができず、事業の成長が止まりかけていました。
つまり、採用は単なる人事の問題ではなく、明確な経営課題になっていたのです。
「採れない状態」が事業成長を止めた原因
見出しああこの企業では、「人が育ってから出店する」という方針が徹底されていました。そのため、採用と育成が追いつかなければ、どれだけ需要があっても事業は拡大できません。
売上が伸びているのに店舗を増やせない。これは、採用がボトルネックになっている典型的な状態です。
採用ではなく「企業」から見直した判断
通常であれば、これだけの採用コストをかけて結果が出ていない場合、「採用手法を変える」「媒体を見直す」といった対応が取られます。
しかし、この企業は違いました。この企業が選択したのは、「採用から改善する」のではなく「企業そのものを見直す」というアプローチでした。
上場も視野に入れていたことから、短期的な採用改善ではなく、企業としての土台づくりを優先したのです。採用は結果であり、原因は企業側にある。この前提に立った判断が、大きな分岐点となりました。
王道を選択したことが結果につながった
採用に困っている企業ほど、短期的な施策に走りがちです。しかしこの企業は、あえて時間のかかる王道のアプローチを選びました。
・理念の整理
・強みの言語化
・組織としての一貫性の構築
こうした本質的な部分から取り組んだことが、その後の採用成果につながっていきます。
強み発見のプロセスで起きたこと

企業の土台を見直す中で行われたのが、強みの言語化です。しかし、このプロセスは決してスムーズではありませんでした。
ワークショップ形式で強みを出していく中で、最初はほとんど付箋が出てこない状態。社員の多くは現場出身で、いわゆるたたき上げ。自分たちの強みを言語化することに慣れておらず、「何を書けばいいのか分からない」という状態だったのです。
時間をかけて言語化したからこそ意味がある
ワークは1日がかりで実施されました。現場業務と並行しながら、朝から夕方まで時間をかけて議論を重ねていきます。
進行も決してスムーズではなく
「この内容はこっちではないか」
「これは本当に強みと言えるのか」
といったやり取りが何度も繰り返されました。しかし、このプロセスこそが重要だったのです。時間をかけて、全員で考え、すり合わせることで、自分たちの言葉として強みが整理されていったのです。
採用ブランディングが機能した理由
結果として、この企業は採用状況を改善していきます。その要因は、施策の巧さではなく、取り組みの順序にありました。
採用がうまくいかない原因を、採用活動そのものに求めなかったこと。これが最大のポイントです。
企業の理念や強みが整理されていない状態では、どれだけ発信しても伝わりません。逆に、企業の軸が明確になれば、採用の発信や接点は自然と変わります。
社員が関わることで力が宿る
強みの言語化を一部の担当者だけで行わず、現場を巻き込んだことも大きな要因です。自分たちで考え、言語化した内容だからこそ、社員自身がその言葉を使い、語れるようになります。
この状態が、採用における「共鳴」を生み出します。
採用ブランディングは順序で結果が変わる
この事例から分かるのは、採用ブランディングは「何をやるか」以上に「どこからやるか」が重要だということです。
・採用手法を変える
・媒体を変える
・発信を増やす
こうした施策は、土台が整っていなければ機能しません。企業の理念や強みを整理し、それを組織全体で共有し、語れる状態にする。その上で採用活動を設計することで、はじめて採用ブランディングは機能します。
採用に困っている企業ほど、採用から離れて考える。この視点が、結果を大きく変えるポイントになります。

深澤 了 Ryo Fukasawa
むすび株式会社 代表取締役
ブランディング・ディレクター/クリエイティブ・ディレクター
早稲田大学商学部卒業後、山梨日日新聞社・山梨放送グループ入社。広告代理店アドブレーン社制作局配属。CMプランナー/コピーライターとしてテレビ・ラジオのCM制作を年間数百本行う。2006年パラドックス・クリエイティブ(現パラドックス)へ転職。企業、商品、採用領域のブランドの基礎固めから、VI、ネーミング、スローガン開発や広告制作まで一気通貫して行う。採用領域だけでこれまで1000社以上に関わる。早稲田大学ビジネススクール修了(MBA)。同年むすび設立。地域ブランディングプロジェクト「まちいく事業」を立ち上げ、山梨県富士川町で開発した「甲州富士川・本菱・純米大吟醸」はロンドン、フランス、ミラノで6度金賞受賞。制作者としての実績はFCC(福岡コピーライターズクラブ)賞、日本BtoB広告賞金賞、山梨広告賞協会賞など。学術論文7編(査読付き)。雑誌・書籍掲載、連載多数。著書は「無名✕中小企業でもほしい人材を獲得できる採用ブランディング」(幻冬舎)、「知名度が低くても“光る人材“が集まる 採用ブランディング完全版」(WAVE出版)。「どんな会社でもできるインナーブランディング」(セルバ出版)。「人が集まる中小企業の経営者が実践しているすごい戦略 採用ブランディング」(WAVE出版)。国立大学法人富山大学とウェルビーイングに関する共同研究「幸福を超える共鳴」。2025年、新理論「共鳴経済」を日本マーケティング学会にて発表。

