
インナーブランディングや共鳴経済の文脈で、よく誤解されるのが「デザイン=見た目を整えること」という理解です。見た目を良くすること自体が悪いわけではありませんが、それを目的にしてしまうと、ブランディングは一気に薄くなります。
本当に問われているのは、企業の内側にある歴史や考え方、体験の価値を、どう外に出すかという点です。この記事では、なぜ見た目やデザインが重要なのかを、共鳴経済とインナーブランディングの視点から整理します。
デザインは見た目ではなくアウトプットである
デザインという言葉を、狭い意味での装飾やビジュアルだと捉えると、本質を見失います。ホームページ、パンフレット、動画、SNS、PR。世の中に出しているものすべてがデザインです。採用であれば説明会の雰囲気や身なり、話し方も含まれます。
デザインとは、内側にあるものを外に出す行為そのものです。
内側にあるものを出さなければ共鳴は起きない
企業には必ず、その会社なりの歴史や判断基準、積み重ねてきた体験があります。それらを外に出さなければ、共鳴は生まれません。
いくら良い商品やサービスがあっても、その背景にある考え方が伝わらなければ、単なる機能比較で終わってしまいます。
共鳴経済においてデザインが重要なのは、共感や納得の材料を可視化する役割を担っているからです。
がわを飾るデザインでは意味がない
デザインというと、どうしてもかっこよく見せることに意識が向きがちです。しかし、がわだけを整えても、共鳴は起きません。
分かりやすい例として、大谷翔平の存在があります。彼の見た目は、いわゆるアイドル的なかっこよさではありません。それでも多くの人に支持されているのは、圧倒的な活躍と、人間性を磨き続けている姿勢があるからです。
もし活躍していなければ、今の人気は生まれていないでしょう。発言やエピソードに説得力があるのも、結果と行動が伴っているからです。内面が外に滲み出ている状態こそが、かっこよさをつくっています。
企業も生き方が表に出なければならない
企業に置き換えると、見た目だけ整えても意味がないことが分かります。企業の生き方や考え方、何を大切にしているのかが、アウトプットとして表に出て初めて、人は共鳴します。
ロゴや色を変えることがブランディングではなく、その会社の判断や行動が、自然と見た目や言葉に現れている状態が理想です。
身なりや話し方に正解はない
インナーブランディングの現場でよく聞かれるのが、業種ごとの正解を求める声です。製造業ならこう、外食ならこう、という型を探したくなりますが、実際にはそんな共通解は存在しません。
アウトプットは会社ごとに変わって当たり前
なぜ正解がないのかというと、その手前にある要素が会社ごとに違うからです。歴史、考え方、体験の価値、積み重ねてきた行動。これらが異なれば、自然とアウトプットも変わります。
だからこそ、身なりや話し方、表現の仕方も、会社ごとに違っていい。むしろ違っていなければ、その会社らしさは伝わりません。
思想が貫かれたデザインの好例
過去の事例で分かりやすいのが、アップルのシンクディファレントです。シンクディファレントという思想は、単なるコピーでは終わりませんでした。その考え方がアイマックに表れ、アイマックがアイポッドになり、アイポッドがアイフォンへとつながっていきました。
デザインの見た目が統一されていたというより、思想が一貫してアウトプットされ続けた結果です。あの連なりこそ、デザインの本質を示しています。
身なりや話し方を整えるための場
企業はどうやって自分たちのアウトプットを整えていけばいいのか。その一つの手段が、座談会のような場です。座談会の目的は、見た目をどうするかを決めることではありません。
社員同士で考え方や経験を共有し、何を大事にしているのかを言葉にすることです。内側の認識が揃って初めて、身なりや話し方、表現の方向性が見えてきます。
インナーブランディングにおけるデザインとは、こうした内側の対話の延長線上にあります。
デザインとはブランドをにじませるアウトプット
インナーブランディングと共鳴経済において、デザインが重要なのは、見た目を良くするためではありません。企業の歴史や考え方、体験の価値を、世の中にきちんとアウトプットするためです。
がわを飾るのではなく、生き方が滲み出る状態をつくる。その積み重ねが、共鳴を生み、選ばれる企業につながっていきます。

深澤 了 Ryo Fukasawa
むすび株式会社 代表取締役
ブランディング・ディレクター/クリエイティブ・ディレクター
2002年早稲田大学商学部卒業後、山梨日日新聞社・山梨放送グループ入社。広告代理店アドブレーン社制作局配属。CMプランナー/コピーライターとしてテレビ・ラジオのCM制作を年間数百本行う。2006年パラドックス・クリエイティブ(現パラドックス)へ転職。企業、商品、採用領域のブランドの基礎固めから、VI、ネーミング、スローガン開発や広告制作まで一気通貫して行う。採用領域だけでこれまで1000社以上に関わる。2015年早稲田大学ビジネススクール修了(MBA)。同年むすび設立。地域ブランディングプロジェクト「まちいく事業」を立ち上げ、山梨県富士川町で開発した「甲州富士川・本菱・純米大吟醸」はロンドン、フランス、ミラノで6度金賞受賞。制作者としての実績はFCC(福岡コピーライターズクラブ)賞、日本BtoB広告賞金賞、山梨広告賞協会賞など。雑誌・書籍掲載、連載多数。著書は「無名✕中小企業でもほしい人材を獲得できる採用ブランディング」(幻冬舎)、「知名度が低くても“光る人材“が集まる 採用ブランディング完全版」(WAVE出版)。「どんな会社でもできるインナーブランディング」(セルバ出版)。「人が集まる中小企業の経営者が実践しているすごい戦略 採用ブランディング」(WAVE出版)

