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レポート

2025.10.23

推し活の構造を企業経営に応用する「共鳴経済」

共鳴経済

人は誰かや何かを心から応援したいと思うとき、自然に行動や消費を起こします。この推される仕組みを、顧客だけでなく従業員や求職者との関係にも設計することが、これからの企業競争で大きな差になります。

本記事では「共鳴経済」という新しい視点から、企業・従業員・顧客が同時に豊かになる仕組みを具体的に解説します。

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推し活の本質:人は何に惹かれるのか

人が「推す」理由は一つではありません。外見や品質だけでなく、その対象の歴史や背景、価値観、体験価値など複数の要素が重なったときに、強い共感が生まれます。

実際、アンケートでも「デザイン」「品質」「理念」「感動体験」「歴史や物語」など、さまざまな要因がファン化のきっかけとなっています。

5つの推される要素

顧客や従業員が会社を推す理由は、主に「歴史」「理念(考え方・価値観)」「デザイン(見た目)」「品質」「体験価値(感動や気分の高まり)」の5つです。どれか一つだけでは弱く、複数が重なることでファン化が起こりやすくなります。

たとえば「ブランドの世界観に共感し、体験にも満足し、見た目にも惹かれる」など、多面的なアプローチが必要です。

採用・組織・顧客で推しは繋がる

これらの要素は、顧客だけでなく、採用や組織運営にも応用できます。たとえば、採用時に

  • 理念への共感を伝える
  • 組織内で歴史や価値観を共有する
  • 従業員が推される体験を積む

ことで、会社全体の推進力が生まれます。

つまり、「推し活」の仕組みを採用から組織運営、顧客づくりまで一貫して設計することが成果につながります。

「共鳴経済」モデルの全体像

「共鳴経済」モデルの全体像

「共鳴経済」は、企業・従業員・顧客がそれぞれ意味ややりがい・信頼・成果を同時に得られる構造です。資本主義が効率と競争だけを重視してきた時代から、共創や共感を軸にした企業経営へと転換しつつあります。

企業・従業員・顧客の三者モデル

共鳴経済では、「企業(A):物語・理念・歴史」「従業員(B):Aを体現し顧客と接点を持つ」「顧客(C):AとBが生む価値の受け手」という三者が互いに推し合う関係を築きます。

従業員は単なる労働力でなく、企業の価値を媒介し、顧客と共感の輪を広げる中心的な役割を担います。

5つの要素を全方位で強化する

三者モデルを強くするためには、「歴史・理念・デザイン・品質・体験価値」の5要素をすべての接点で高めていくことが重要です。

たとえば採用・入社時には理念や価値観を体験として伝え、日々の仕事やサービスでも品質・体験価値を意識した設計を行います。どれか一つが弱いと、共感や推される力が減少します。

採用現場から始まる推される会社

採用は「共鳴経済」実現の第一歩です。理念に共感して入社した人が活躍人材となり、働きがいや使命感、成果の連鎖を生み出します。

データでも採用時の理念共感が入社後の活躍ややりがいの土台になることが確認されています。

理念を募集要項や面接で伝える

求人票や募集要項には、必ず自社の理念や歴史、譲れない価値観を一文でも入れるようにします。面接時には「なぜこの理念に惹かれたか」を言語化してもらう質問を設けると、共感の強さや推される素地を見極めやすくなります。

理念の体現度が高い現場社員が採用活動に関わることも効果的です。

入社後の体験を「理念×仕事」で設計

オンボーディングや初期研修では、理念が実際の仕事の中でどう活きているかを体験できるようにします。

たとえば、現場リーダーが自分のエピソードを語ったり、創業ストーリーを共有したりすることで、社員一人ひとりが推される会社を実感できます。月1回の感動共有会や、こだわり辞典の公開など、小さな仕掛けの積み重ねも有効です。

推される仕組みを組織と顧客接点にも広げる

採用だけでなく、従業員・顧客にも推される体験を意識して設計することで、会社のブランドや成果が大きく変わります。

従業員が推しを実感できる組織文化

従業員が自社や上司、仲間に「推されている」と感じる環境は、主体性やチャレンジ精神を引き出します。

たとえば、感動体験や成長の瞬間を月次で共有する、こだわりポイントを全社で見直す、努力のプロセスをオープンにするなどが、やりがいや誇りを高めます。上司や経営陣が推しポイントを率直に伝えることも効果的です。

顧客が「推したくなる」設計

商品・サービスの見た目や品質を高めるだけでなく、体験やコミュニケーションも重視します。プロセスを見せる透明性や、短いデモ体験、スタッフの熱意を感じられる場面が、顧客の「推したい」気持ちを後押しします。

SNSやレビューで顧客の声を紹介するなど、顧客自身が“共創者”になる設計も有効です。

企業・従業員・顧客の「推される構造」が会社を伸ばす

人は意味や美しさ、体験に惹かれて推しになります。

その惹かれ方を「採用→組織→顧客」と一貫して設計し、企業・従業員・顧客の三者が有形(売上・利益)と無形(やりがい・信頼・共感)を同時に得る仕組みが、今後の企業成長の条件です。

「最初に惚れて入る」ことが、働きがいや成果の連鎖の起点になる。これが新しい「共鳴経済」の実践法です。

弊社のインナーブランディング事例はこちらをご確認ください。】

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深澤 了 Ryo Fukasawa
むすび株式会社 代表取締役
ブランディング・ディレクター/クリエイティブ・ディレクター

2002年早稲田大学商学部卒業後、山梨日日新聞社・山梨放送グループ入社。広告代理店アドブレーン社制作局配属。CMプランナー/コピーライターとしてテレビ・ラジオのCM制作を年間数百本行う。2006年パラドックス・クリエイティブ(現パラドックス)へ転職。企業、商品、採用領域のブランドの基礎固めから、VI、ネーミング、スローガン開発や広告制作まで一気通貫して行う。採用領域だけでこれまで1000社以上に関わる。2015年早稲田大学ビジネススクール修了(MBA)。同年むすび設立。地域ブランディングプロジェクト「まちいく事業」を立ち上げ、山梨県富士川町で開発した「甲州富士川・本菱・純米大吟醸」はロンドン、フランス、ミラノで6度金賞受賞。制作者としての実績はFCC(福岡コピーライターズクラブ)賞、日本BtoB広告賞金賞、山梨広告賞協会賞など。雑誌・書籍掲載、連載多数。著書は「無名✕中小企業でもほしい人材を獲得できる採用ブランディング」(幻冬舎)、「知名度が低くても“光る人材“が集まる 採用ブランディング完全版」(WAVE出版)。「どんな会社でもできるインナーブランディング」(セルバ出版)。「人が集まる中小企業の経営者が実践しているすごい戦略 採用ブランディング」(WAVE出版)

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