採用ブランディングの新潮流「共鳴経済」|深澤了が提唱する次世代の採用戦略
採用ブランディングの新潮流「共鳴経済」|深澤了が提唱する次世代の採用戦略
採用ブランディングは、次のフェーズに入ります。私が2025年に日本マーケティング学会で発表し、2026年4月30日にサンクチュアリ出版から刊行する新著『共鳴経済 社員が"推す"会社が伸びる』で提示するのが「共鳴経済」の枠組みです。本記事では、従来の採用ブランディングの限界と、共鳴経済が採用をどう変えるかを整理します。
書籍『共鳴経済 社員が"推す"会社が伸びる』は2026年4月30日発売。詳細は書籍告知ページをご覧ください。
この記事の目次
- 共鳴経済とは何か
- 従来の採用ブランディングの限界
- 共鳴経済の5つの構成要素
- 共鳴経済で採用が変わる理由
- 共鳴経済を採用に実装する手順
- 共鳴経済を実践している企業の例
- 共鳴経済とファン経済の違い
- 書籍『共鳴経済』のご紹介
- よくある質問(FAQ)
- まとめ|採用は「同志」を見つける共鳴の入口
共鳴経済とは何か
共鳴経済とは、企業理念と個人の使命が共鳴し、有形無形の財(豊かさ)を最大化する経営のあり方です。企業と顧客、企業と従業員の関係を、売買や雇用という取引ではなく、同じ未来を共に歩む共鳴関係として捉え直すことで、採用・組織・商品ブランディングのすべてに一貫した軸が立ち上がります。
2025年、私は日本マーケティング学会で共鳴経済の概念化と構造モデルを発表し、統計的な裏付けを得ました。採用時の理念共感は現在の理念共感に因果関係があり(β=.762)、現在の理念共感は感動経験・仕事の貢献実感・実力発揮・組織貢献・人生の使命にまで影響します。共鳴は、抽象的な感情論ではなく、経営指標として測定可能な概念として立ち上がっています。
従来の採用ブランディングの限界
従来の採用ブランディングは、自社の強みを言語化し、求める人材に一貫した接点を設計することで「選ばれる会社」になる方法論でした。1000社の支援現場で私はこの方法論を体系化してきましたが、ここに来て次の限界が見えてきました。
第1に、候補者の情報環境がSNS・動画・AIでさらに飽和し、「伝える」だけでは記憶に残らなくなっています。第2に、Z世代を中心に、候補者側の価値観が「応援したい」「推したい」という能動的な感情に移行しています。第3に、人手不足倒産が2024年で342件と過去最多を更新するなか、採用の勝敗が経営の生死を直接左右する水準に来ています。従来の採用ブランディングは、ここに対して一歩進んだ枠組みが必要になっています。
その進化形が、共鳴経済型の採用ブランディングです。
共鳴経済の5つの構成要素
私の研究で、共鳴を生み出す要素は以下の5つに整理されました。
①歴史|企業や創業者の歩みに含まれる、他社が真似できない物語。
②理念|何のために事業を行うかの根本。採用ブランディングの核。
③デザイン|見た目の一貫性。ロゴ、採用サイト、空間、ユニフォームまで含む。
④品質|商品・サービス・顧客対応の質。ここが崩れると共鳴は保てない。
⑤体験価値|顧客や社員が接点を通じて得る体験の質。感動の源泉。
これら5つが連関することで、企業は顧客・従業員との共鳴を得て、有形無形の豊かさが循環します。採用ブランディングはこの5要素を、採用の接点全体に反映する活動として再定義できます。
共鳴経済で採用が変わる理由
共鳴経済の視点で採用を見直すと、「選ばれる会社」から「推される会社」へと軸が変わります。
候補者は、もはや条件と知名度で会社を評価するだけでなく、「この会社を応援したい」「同志として共に歩みたい」という感情で動いています。推し活市場が361万人規模、1人あたり年間約94,000円の消費を生んでいるデータは、候補者の感情構造がブランドの共鳴に深く反応するシグナルです。この構造を採用に応用すれば、条件競争を超えて、候補者自身が主体的に自社を選び続ける関係が作れます。
共鳴型の採用では、候補者は「選ばれる立場」から「共に歩む主体」に変わります。これが、深澤氏の哲学「採用は同志を探す旅」の現代的な表現です。
共鳴経済を採用に実装する手順
共鳴経済型の採用ブランディングは、従来の5ステップを拡張した形で進めます。
Step1|歴史と理念を掘り起こす。 創業の経緯、過去の困難、そこから生まれた理念を時系列で言語化します。候補者が「この会社の物語に自分の人生を重ねたい」と思える深さまで掘ります。
Step2|現在の社員の共鳴度を測る。 採用時の理念共感、現在の理念共感、仕事での貢献実感を定量調査で把握します。社員が共鳴していない会社は、候補者にも共鳴を求められません。
Step3|5要素(歴史/理念/デザイン/品質/体験価値)を点検する。 採用活動の全接点で、この5要素が揃っているかを棚卸しします。どこかが崩れている接点を特定します。
Step4|候補者の心理変容設計を更新する。 従来のMOSEALSモデルに、「推す」という主体的関与の段階を組み込み、候補者が自ら発信する状態まで設計します。
Step5|採用とインナーを接続する。 採用で共鳴した理念が、入社後の評価制度・日常業務・研修のすべてで続くように設計します。ここを切らないことが、共鳴型採用の最大の鍵です。
共鳴経済を実践している企業の例
共鳴経済型の経営に近い取り組みを行っている企業の例を紹介します。
ベッセルホテル|地域との関係性を含めて、社員と顧客、経営者が共鳴する仕組みを作り込んでいます。接点での体験価値が高く、顧客がファンを超えて推す行動を取ります。
王慈福祉会|介護という難しい業界で、理念共感を採用の核に据えることで、定着率と現場の質を高水準に維持しています。
ギフトHD(町田商店)|創業者の物語と経営理念が、社員の日々の行動と深く結びついており、採用段階からその共鳴が機能しています。
スノーピーク|社長自身がキャンプで年間200日を過ごすという極端な理念体現により、顧客と社員の両方から強い共鳴を得ています。
これら4社に共通するのは、経営者自身が共鳴の起点になっていることです。
共鳴経済とファン経済の違い
共鳴経済はファン経済の延長線ではなく、構造が異なります。
ファン経済は、企業(主体)と顧客(客体)の一方向の関係を前提にします。ファンが企業を応援する構造です。共鳴経済は、企業・従業員・顧客の三者が、それぞれ主体として互いに響き合う双方向の構造です。従業員が主役(中心)となり、顧客接点で働きがいを得て、さらに顧客との共鳴を生む。この違いは採用設計に直結します。従業員を「駒」として配置する採用と、「主役」として迎える採用では、設計の思想が根本的に異なります。
詳細は共鳴経済とファン経済は何が違うのかで解説しています。
書籍『共鳴経済』のご紹介
2026年4月30日、サンクチュアリ出版より新著『共鳴経済 社員が"推す"会社が伸びる』を刊行します。
本書は、10年以上のブランディング研究と、富山大学との共同研究「幸福を超える共鳴」、日本マーケティング学会での発表内容を統合し、中小企業から大手企業まで実装可能な共鳴経済の設計手順を提示します。採用担当者、経営者、ブランディング担当者、組織開発担当者に活用いただける1冊です。
予約・購入は書籍告知ページからどうぞ。
よくある質問(FAQ)
Q1. 共鳴経済は大企業向けの理論ですか。
いいえ、むしろ中小企業のほうが実装しやすい枠組みです。経営者の物語と現場社員の声がダイレクトに候補者に届くため、5要素の一貫性を取りやすくなります。
Q2. 従来の採用ブランディングとどう使い分けますか。
従来の採用ブランディング(強み抽出、コンセプト設計、接点一貫性)は基礎です。共鳴経済は、その基礎の上に「従業員が主役」「顧客と三位一体」の視点を重ねる発展形と捉えてください。
Q3. 共鳴度はどう測定しますか。
理念共感度、感動経験、仕事での貢献実感、人生の使命の有無を5段階スケールで定点観測します。書籍『共鳴経済』で具体的な設問を公開しています。
Q4. 共鳴経済への移行にどれくらい時間がかかりますか。
既に採用ブランディングの基礎が整っている企業で6ヶ月〜1年、これから着手する企業で1〜2年が目安です。段階的に進めるのが現実的です。
Q5. この理論を採用に応用するとき、最初にやるべきことは何ですか。
既存社員の共鳴度(理念共感度)を測ることです。ここの現状値が、候補者側の共鳴を設計する出発点になります。
まとめ|採用は「同志」を見つける共鳴の入口
採用ブランディングは、選ばれる会社を作る活動から、共鳴する同志と出会う活動へと進化します。共鳴経済の枠組みは、その進化の理論的基盤を与えるものです。書籍『共鳴経済』と合わせて、御社の採用を次のフェーズへ進めてください。
共鳴経済型の採用ブランディングを自社でも実装したい方は、無料相談からご連絡ください。書籍著者の深澤了をはじめとする専門チームが伴走します。
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著者プロフィール
深澤 了 Ryo Fukasawa
むすび株式会社 代表取締役
ブランディング・ディレクター/クリエイティブ・ディレクター
早稲田大学商学部卒業後、山梨日日新聞社・山梨放送グループ入社。広告代理店アドブレーン社制作局配属。CMプランナー/コピーライターとしてテレビ・ラジオのCM制作を年間数百本行う。2006年パラドックス・クリエイティブ(現パラドックス)へ転職。企業、商品、採用領域のブランドの基礎固めから、VI、ネーミング、スローガン開発や広告制作まで一気通貫して行う。採用領域だけでこれまで1000社以上に関わる。早稲田大学ビジネススクール修了(MBA)。同年むすび設立。地域ブランディングプロジェクト「まちいく事業」を立ち上げ、山梨県富士川町で開発した「甲州富士川・本菱・純米大吟醸」はロンドン、フランス、ミラノで6度金賞受賞。制作者としての実績はFCC(福岡コピーライターズクラブ)賞、日本BtoB広告賞金賞、山梨広告賞協会賞など。学術論文7編(査読付き)。雑誌・書籍掲載、連載多数。著書は「無名✕中小企業でもほしい人材を獲得できる採用ブランディング」(幻冬舎)、「知名度が低くても"光る人材"が集まる 採用ブランディング完全版」(WAVE出版)。「どんな会社でもできるインナーブランディング」(セルバ出版)。「人が集まる中小企業の経営者が実践しているすごい戦略 採用ブランディング」(WAVE出版)。国立大学法人富山大学とウェルビーイングに関する共同研究「幸福を超える共鳴」。2025年、新理論「共鳴経済」を日本マーケティング学会にて発表。2026年「共鳴経済 社員が"推す"会社が伸びる」(サンクチュアリ出版)を刊行。