共感採用とは?限界と「共鳴採用」への進化を第一人者が解説

共感採用とは?限界と「共鳴採用」への進化を第一人者が解説

共感採用とは、給与や条件ではなく、自社の理念やストーリーへの「共感」を軸に候補者を集める採用手法です。条件競争から抜け出す一歩として広まりましたが、共感は感情の一時的な一致にとどまるため、入社後に薄れやすいという弱点を抱えています。私はこの先にある「共鳴採用」への進化を提案しています。本記事では、両者の違いと移行の手順を、調査データとともに整理します。

この記事の目次

  1. 共感採用とは何か
  2. なぜ共感採用が広まったのか
  3. 共感採用と共鳴採用は何が違うのか
  4. 共感採用だけでは続かない3つの理由
  5. 「共感から共鳴へ」を裏づける調査データ
  6. 共感採用を共鳴採用へ引き上げる5ステップ
  7. 共感採用から共鳴採用へ移行した企業の変化
  8. よくある質問(FAQ)
  9. まとめ|共感は入口、共鳴はゴール

自社の採用が「共感どまり」になっていないか点検したい経営者・人事の方は、まず無料相談をご利用ください。1000社以上の支援実績から、共鳴へ進む最短の一手をお伝えします。

共感採用とは何か

共感採用とは、候補者が自社の理念・価値観・ストーリーに「共感」することを重視して人材を集める採用手法を指します。応募数の最大化を狙う母集団至上主義への反省から生まれた考え方です。

従来の採用は、給与・休日・福利厚生といった条件(スペック)を競う消耗戦でした。共感採用は、この土俵をずらし、「何を大切にしている会社か」に反応してくれる人と出会おうとします。求人票に創業ストーリーを載せる、社員の想いを動画で伝える、選考で価値観を問う。これらはすべて共感採用の実践です。方向としては正しく、私が2018年に体系化した採用ブランディングとも重なります。条件ではなく理念で選ばれる。この発想の転換自体は、採用が進むべき道です。

ただし、共感という言葉を「感情が動いた状態」で止めてしまうと、採用は途中で失速します。ここに、共感採用の本質的な限界があります。

なぜ共感採用が広まったのか

共感採用が急速に広まった背景には、採用市場の構造変化があります。数を集める採用が成立しなくなったのです。

人手不足倒産は2024年に342件と過去最多を更新し、中途採用比率も同年に46.8%まで上昇しました。採用の勝敗が、そのまま経営の生死を左右する水準に来ています。一方で、候補者、とくにZ世代の価値観は「応援したい」「推したい」という能動的な感情へ移行しています。条件を並べて比較される会社ではなく、想いに反応してもらえる会社になりたい。この経営者側の願いが、共感採用というキーワードを押し上げました。

問題は、共感を集めた「その先」の設計が抜け落ちやすいことです。多くの企業が、共感を得た時点でゴールにしてしまいます。

共感採用と共鳴採用は何が違うのか

共感と共鳴は、似た言葉ですが構造が違います。共感は「感情が一致した状態」、共鳴は「同じ未来に向かって想いが重なり、共に歩んでいる状態」です。

共感は、相手の物語に心が動く受け身の反応です。心を動かされた候補者は、その会社を「いい会社だ」と評価します。しかし評価する立場にとどまる限り、候補者はまだ「選ぶ側」であり、条件のよい他社が現れれば天秤にかけられます。共鳴は、そこから一歩進み、候補者自身が主体として同じ未来を目指す状態です。会社を応援するのではなく、会社と共に歩む。この違いが、内定承諾率と入社後の定着に決定的な差を生みます。

観点 共感採用 共鳴採用
候補者の状態 感情が動く(受け身) 未来を共にする(主体的)
会社との関係 応援する・評価する 同志として共に歩む
続き方 入社後に薄れやすい 入社後に深まっていく
競合が現れたとき 条件で天秤にかけられる 「この会社でなければ」に変わる
到達点 選ばれる会社 推される会社

共感は入口です。そこで止めず、共鳴という到達点まで設計しきることが、採用を条件競争から本当に解放します。共感と共鳴の見分け方は採用現場で起きている「共鳴現象」でさらに詳しく解説しています。

共感採用だけでは続かない3つの理由

共感採用が失速する理由は、共感という感情の性質そのものにあります。3つの構造を押さえておく必要があります。

第1に、共感は一過性です。採用の場で高まった感情は、入社後の日常業務のなかで薄れていきます。入口で「理念に共感した」はずの社員が、半年後には条件の話しかしなくなる。これは本人の問題ではなく、共感を共鳴へ育てる設計を会社が用意していないからです。

第2に、共感は受け身の反応です。候補者は会社の物語に心を動かされますが、その物語の主人公は会社のままです。自分がその未来にどう関わるかが描けていないため、当事者になりきれません。応援と参加は違います。

第3に、共感は条件競争に戻りやすいという弱点を持ちます。感情が動いただけの状態では、より条件のよい会社が現れると比較の土俵に戻されます。共感採用に力を入れたはずなのに、最後は年収で辞退される。この矛盾は、共感で止めた採用に共通して起こります。

「共感から共鳴へ」を裏づける調査データ

共感を共鳴まで育てるべき理由は、感覚論ではありません。私たちの複数の全国調査が、採用時点の理念への想いが入社後の共鳴を強く規定することを示しています。

私たちの調査では、採用時(入社時)の理念共感が、その後の理念共感・理念共鳴を規定する因果関係が繰り返し確認されています。2020年のビジネスパーソン540名調査でβ=.510、2025年の300名調査でβ=.762、2026年の302名調査では入社時の理念共感が勤務先への理念共鳴を規定してβ=.734。異なる年・異なる対象で同じ因果が再現されました。入口の想いは、入社後に自然消滅するのではなく、その後の共鳴の土台になるのです。

さらに、その理念共鳴は次の指標へ波及します。現在の理念共感は、感動経験・仕事の貢献実感・実力発揮を経て、人生の使命の有無にまで影響し(β=.411)、仕事を通してのウェルビーイングにも影響していました(現在の理念共鳴 β=.613)。一方で、私たちの調査では、年収と社員の共鳴度・ウェルビーイングの間に正の相関は見られていません。条件を積み増しても共鳴は買えない。この事実が、共感採用を共鳴採用へ引き上げるべき最大の根拠です。

くわえて、全国就業者502名を対象にした分析では、理念への共鳴を高める取り組み(掛け算)と待遇を整える取り組み(足し算)は、両立して初めて高いウェルビーイングに達することが示されました。共感採用は足し算と掛け算のうち掛け算の入口にすぎず、そこを共鳴まで伸ばして初めて成果が立ち上がります。

共感採用を共鳴採用へ引き上げる5ステップ

共感で止まっている採用を、共鳴まで育てるには順番があります。私たちが支援現場で使っている5つのステップを示します。

Step1|歴史と理念を物語まで掘り下げる。 「共感してもらえそうな話」ではなく、創業の経緯・乗り越えた困難・そこから生まれた判断基準を時系列で言語化します。候補者が自分の人生を重ねられる深さまで掘ることが条件です。

Step2|現在の社員の共鳴度を測る。 採用時の理念共感、現在の理念共鳴、仕事での貢献実感を定量調査で把握します。私たちは全国のビジネスパーソン502名を基準とした「共鳴偏差値」で、自社の水準を平均50に対して可視化しています。社員が共鳴していない会社は、候補者にも共鳴を求められません。

Step3|候補者を物語の主人公に置き換える。 会社の物語を語って終わりにせず、「あなたがこの未来のどこを担うのか」を選考のなかで一緒に描きます。共感を参加へ、応援を主体へ転換する工程です。

Step4|全接点で5要素の一貫性を通す。 共鳴の源泉は、歴史・理念・デザイン・品質・体験価値の5要素です。求人票、面接、内定者フォロー、入社後の初日まで、この5つが揃っているかを棚卸しします。1つでも欠けると共鳴は保てません。

Step5|採用とインナーブランディングを接続する。 採用で灯した共鳴が、評価制度・日常業務・研修のすべてで続くように設計します。ここを切らないことが、共感を一過性で終わらせないための最大の鍵です。

どのステップでつまずいているかを整理したい方は、共鳴経済時代の採用ブランディングもあわせてご覧ください。

共感採用から共鳴採用へ移行した企業の変化

共感どまりだった採用を共鳴まで伸ばすと、数字の現れ方が変わります。私たちが見てきた変化を、業種を変えて紹介します。

製造業(鉄骨製造・施工)。 求人票に想いを載せて共感は得ていたものの、内定辞退が続いていた会社が、社員の共鳴度を測り、物語の主人公を候補者側に置き換えた結果、実行から半年で15名を採用しました。年収400万円・フィー35%換算で2100万円相当だった人材紹介費が0円に転じています。

医療・介護。 条件訴求を一切やめ、入職後の体験と使命を伝える設計に切り替えた法人では、半年で15名を採用し、7割がハローワークなど公的機関経由でした。共感を集める段階から、入職後の共鳴まで一本の線でつないだことが転機です。

サービス業(ホテルチェーン)。 「地元に戻ることが、海外への近道になる」というペルソナ転換で、共感を主体的な選択へ引き上げ、常時30名を採用できる体制に変わりました。共感採用の限界だった「条件で辞退される」状態を抜け出した事例です。

共通していたのは、共感を得た時点で満足せず、社員と候補者の双方の共鳴を測り、育てきったことでした。事例の全体像は採用ブランディングの新潮流「共鳴経済」で整理しています。

自社の採用が共感で止まっているのか、共鳴まで届いているのか。まずは現状を診断したい方は、無料相談で共鳴度の測り方からお伝えします。

よくある質問(FAQ)

Q1. 共感採用と共鳴採用は、まったく別の手法ですか。
別物ではありません。共感採用は共鳴採用の入口です。候補者の感情が動く「共感」を、同じ未来を共に歩む「共鳴」まで育てきったものが共鳴採用だと捉えてください。共感を否定する必要はなく、そこで止めないことが重要です。

Q2. 共感採用のデメリットは何ですか。
最大のデメリットは、共感が一過性で受け身な感情のため、入社後に薄れ、条件競争に戻りやすいことです。採用の場で理念に共感した社員が、半年後には条件の話しかしなくなる。これは共感を共鳴へ育てる設計が欠けているサインです。

Q3. 中小企業でも共鳴採用は実装できますか。
むしろ中小企業のほうが実装しやすい手法です。経営者の物語と現場社員の声がダイレクトに候補者へ届くため、歴史・理念・デザイン・品質・体験価値の一貫性を取りやすくなります。詳細は採用ブランディングとはをご覧ください。

Q4. 共鳴しているかどうかは、どう測りますか。
採用時の理念共感、現在の理念共鳴、仕事での貢献実感、人生の使命の有無を定点観測します。私たちは全国502名を基準とした共鳴偏差値で、自社の水準を平均50に対して可視化しています。感覚ではなく数値で追うことが、施策の改善につながります。

Q5. 共感採用から共鳴採用への移行には、どれくらい時間がかかりますか。
すでに理念で採用する基礎がある企業で6ヶ月から1年、これから着手する企業で1年から2年が目安です。まず既存社員の共鳴度を測ることから始めると、着手点が明確になります。

まとめ|共感は入口、共鳴はゴール

共感採用は、条件競争から抜け出す正しい一歩です。しかし共感は感情の一時的な一致であり、入口にすぎません。そこで止めれば、想いは入社後に薄れ、最後は条件で天秤にかけられます。採用時の理念への想いが入社後の共鳴を規定するという因果が、複数の調査で再現されている以上、共感を共鳴まで育てきる設計こそが、採用を母数競争から本当に解放します。

採用は、候補者を選別する作業ではなく、同じ未来を共に歩む同志を見つける旅です。共感で終わらせず、共鳴まで設計したい方は、無料相談からお気軽にご連絡ください。書籍著者の深澤了をはじめとする専門チームが、御社の採用を共鳴のフェーズへ引き上げます。

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著者プロフィール

深澤 了 Ryo Fukasawa
むすび株式会社 代表取締役
ブランディング・ディレクター/クリエイティブ・ディレクター
早稲田大学商学部卒業後、山梨日日新聞社・山梨放送グループ入社。広告代理店アドブレーン社制作局配属。CMプランナー/コピーライターとしてテレビ・ラジオのCM制作を年間数百本行う。2006年パラドックス・クリエイティブ(現パラドックス)へ転職。企業、商品、採用領域のブランドの基礎固めから、VI、ネーミング、スローガン開発や広告制作まで一気通貫して行う。採用領域だけでこれまで1000社以上に関わる。早稲田大学ビジネススクール修了(MBA)。同年むすび設立。地域ブランディングプロジェクト「まちいく事業」を立ち上げ、山梨県富士川町で開発した「甲州富士川・本菱・純米大吟醸」はロンドン、フランス、ミラノで6度金賞受賞。制作者としての実績はFCC(福岡コピーライターズクラブ)賞、日本BtoB広告賞金賞、山梨広告賞協会賞など。学術論文7編(査読付き)。雑誌・書籍掲載、連載多数。著書は「無名✕中小企業でもほしい人材を獲得できる採用ブランディング」(幻冬舎)、「知名度が低くても"光る人材"が集まる 採用ブランディング完全版」(WAVE出版)。「どんな会社でもできるインナーブランディング」(セルバ出版)。「人が集まる中小企業の経営者が実践しているすごい戦略 採用ブランディング」(WAVE出版)。国立大学法人富山大学とウェルビーイングに関する共同研究「幸福を超える共鳴」。2025年、新理論「共鳴経済」を日本マーケティング学会にて発表。2026年「共鳴経済 社員が"推す"会社が伸びる」(サンクチュアリ出版)を刊行。