
採用に成功している企業には、共通点があります。
採用手法が優れていることではなく「企業として何を大切にしているか」が明確であり、それが現場で実行されていることです。
本記事では、採用ブランディングに成功した飲食店の事例をもとに、なぜこの企業が採用でも成果を出せたのかを解説します。
ポイントは、商品ではなく体験に価値を置いていたこと、そしてその考え方を組織全体で貫いていたことにあります。
成長している飲食店が持っていた独自の前提
この企業の特徴的な考え方は、「商品の良し悪しは提供前にほとんど決まっている」という点にありました。一般的には、料理の味や品質が評価の中心になります。
しかしこの企業は、それとは逆の発想を持っていたのです。
体験価値で満足度は決まるという考え方
この企業では、料理が提供されるまでの時間に価値の大半があると捉えていました。
・店内の活気
・注文時の対応
・接客の丁寧さ
・スタッフの真剣な姿勢
これらによって期待値を最大まで高めることで、体験全体の満足度が決まると考えていたのです。つまり、商品そのものではなく、「提供されるまでの体験」を重視していました。
世の中とは逆の発想を徹底
多くの飲食店は、まず味の追求から始めます。しかしこの企業は、体験の設計を優先しました。
この発想の違いが、他社との差別化につながってたのです。結果として、記憶に残る店づくりが実現されました。
再現性を重視した仕組みづくり
この企業がもう一つ徹底していたのは、品質の再現性です。
通常、飲食業は職人の技術に依存する部分が大きい業界です。しかしこの企業は、その構造を変えました。
自社で製造機能を持ち、品質を標準化。個人の感覚に依存せず、安定して高い品質を提供できる仕組みを構築していたのです。
仕組みと体験の両立が強みに
味の再現性と、接客の体験価値。この両方を高いレベルで実現したことが、企業としての強みになっていました。
どの店舗でも同じ品質と体験が提供されるため、ブランドとしての一貫性が保たれます。これが結果として、顧客の信頼とリピートにつながっていました。
記憶に残る体験設計がブランドへ昇華

この企業が目指していたのは、「また来たい」と思われる店ではなく、「記憶に残る店」でした。
その結果どうなったのか?どのようなことに取り組んでいたのか?について、紹介します。
圧倒的な活気を意図的に設計
店内の雰囲気は非常に活気があり、スタッフの対応も印象的です。ただし、単に声を大きくするだけではありません。
・声の強弱
・距離感の取り方
・丁寧さとのバランス
これらを意識し、不快にならない範囲で活気を演出していました。
接客そのものがファンを生んでいた
例えば、目線を合わせて接客することで、顧客との関係性が生まれます。こうした細かな積み重ねが、ファン化につながっていました。
また、退店時の対応も徹底されており、店の外まで見送るなど、最後の印象まで設計されていました。
数字に表れていた一貫した取り組みの成果
この会社は創業以来、一度も前年の売上を下回っていません。この事実は、単発の成功ではなく、仕組みとして機能していることを示しています。
さらに、この企業では、売上を単なる数字ではなく、「お客様からの評価」と捉えていました。体験価値を高めることで、顧客に元気を提供する。その結果が売上として返ってくるという考え方です。
この発想が、現場の行動と直結していたのです。
採用ブランディングの成功につながったポイント
この企業が採用においても成果を出せた理由は、特別な採用手法にあったわけではありません。以下では、成功のポイントを整理していきます。
トップの考えが明確である
社長自身が、何を大切にしているのかを明確に持っていました。
・体験を重視する考え方
・元気な店づくり
・顧客に価値を届ける姿勢
これらが言語化され、ブレずに貫かれていたことが、結果的に採用にもつながったのでしょう。
現場と価値観が共有されていた
重要なのは、社長の考えが現場まで浸透していたことです。単なる理念ではなく、日々の行動として実行されていました。
現場で働く人たちが、その価値観を理解し、自分の言葉で語れる状態になっていたことが、採用にも大きく影響しています。
成功の本質は「やり方」ではなく「あり方」
この企業は、採用のために何か特別な施策を行ったわけではありません。
自社の強みを理解し、価値観を共有し、それを徹底して実行する。
この積み重ねが、結果として採用にもつながったのです。
採用ブランディングとは、発信のテクニックではなく、企業のあり方そのものです。この企業は、その原点を実行していたからこそ、採用でも成果を出すことができたのだと考えられます。

深澤 了 Ryo Fukasawa
むすび株式会社 代表取締役
ブランディング・ディレクター/クリエイティブ・ディレクター
早稲田大学商学部卒業後、山梨日日新聞社・山梨放送グループ入社。広告代理店アドブレーン社制作局配属。CMプランナー/コピーライターとしてテレビ・ラジオのCM制作を年間数百本行う。2006年パラドックス・クリエイティブ(現パラドックス)へ転職。企業、商品、採用領域のブランドの基礎固めから、VI、ネーミング、スローガン開発や広告制作まで一気通貫して行う。採用領域だけでこれまで1000社以上に関わる。早稲田大学ビジネススクール修了(MBA)。同年むすび設立。地域ブランディングプロジェクト「まちいく事業」を立ち上げ、山梨県富士川町で開発した「甲州富士川・本菱・純米大吟醸」はロンドン、フランス、ミラノで6度金賞受賞。制作者としての実績はFCC(福岡コピーライターズクラブ)賞、日本BtoB広告賞金賞、山梨広告賞協会賞など。学術論文7編(査読付き)。雑誌・書籍掲載、連載多数。著書は「無名✕中小企業でもほしい人材を獲得できる採用ブランディング」(幻冬舎)、「知名度が低くても“光る人材“が集まる 採用ブランディング完全版」(WAVE出版)。「どんな会社でもできるインナーブランディング」(セルバ出版)。「人が集まる中小企業の経営者が実践しているすごい戦略 採用ブランディング」(WAVE出版)。国立大学法人富山大学とウェルビーイングに関する共同研究「幸福を超える共鳴」。2025年、新理論「共鳴経済」を日本マーケティング学会にて発表。2026年「共鳴経済 社員が”推す”会社が伸びる」(サンクチュアリ出版)を刊行。

